匠の手作業で仕上げられる新型センチュリーの「几帳面」【トヨタ・センチュリー工場に潜入③〜プレス工程】

トヨタ自動車東日本の東富士工場で生産されてきたセンチュリー。2020年12月末をもって同工場は閉鎖が予定されていますが、噂されている愛知県に移管してもモノづくりの姿勢は不変であるはず。

新型センチュリーの開発キーワードは「継承と進化」で、モノづくり文化の継承として「匠の技の伝承」「超高品質」「手造り」、そして「おもてなしの心」を掲げています。進化は「デザインの新しさ」「環境対応」「先進安全装備」「静粛性、乗り心地向上」としています。

工場(工程)見学は、新型センチュリー開発主査である田部正人氏を中心に、各工程の担当者(責任者)の方が解説しながらセンチュリーの主な工程を見て回りました。

まず、プレス工程では、新型センチュリーを横、斜め横から眺めると、ドアが美しいカーブが描いていることが分かります。新型センチュリーのドア断面は、映り込む景色まで計算されています。

特徴的なのが「几帳面」と呼ばれる断面で、センチュリーの折り目正しく、格式高い雰囲気に貢献しています。こちらのコーナー部はわずか3Rという曲率になっていて、プレス機だけではこうしたラインは出せないそう。

匠(クラフトマン)が手作業で工具を使って微調整をしていきます。実際に用意されたリヤフェンダーには、わずかな歪みがあるそうで(指を指している部分。素人には、まったく視認できないレベルです)、道具を使って叩いたり、削ったりしながら仕上げていきます。

この歪みも計測して分かるのではなく、長年の経験で察知できるそうで、当日手作業を披露してくれた方は初代センチュリーから担当されているそう。

使用される道具は既製品ではなく、クラフトマンが使いやすい道具を工夫しているそうです。さらに、サンダーで研磨されてボデー工程に送られます。ここでの仕上がりが塗装後の仕上がりも左右とのこと。

最近のプレス機の精度は高いといわれていますが、手直しでクラフトマンが仕上げていく様子を拝見していると、この工程だけでも確かに大量生産は無理……というのがよく分かります。

(文/塚田勝弘 写真/水野孔男、塚田勝弘)

この記事の著者

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塚田勝弘

1997年3月 ステーションワゴン誌『アクティブビークル』、ミニバン専門誌『ミニバンFREX』の各編集部で編集に携わる。主にワゴン、ミニバン、SUVなどの新車記事を担当。2003年1月『ゲットナビ』編集部の乗り物記事担当。
車、カー用品、自転車などを担当。2005年4月独立し、フリーライター、エディターとして活動中。一般誌、自動車誌、WEB媒体などでミニバン、SUVの新車記事、ミニバンやSUVを使った「楽しみ方の提案」などの取材、執筆、編集を行っている。
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