旧車のエンジンに永遠の命を与える! 井上ボーリングの技術とバイク愛がスゴイ【モーターサイクルショー注目TOPICS】

■2ストロークエンジンの弱点を解消するオイルシールを新開発

モーターサイクルショーにはじつにさまざまなブースが出展していますが、井上ボーリングはそのなかでも異彩を放っていました。

同社はその名前からも分かるとおり、内燃機の加工を得意とする企業。年を追うごとに環境規制は厳しくなり、車やバイクの動力が内燃機から電気モーターに変わるのも時間の問題……そんな時勢にあって、井上ボーリングが注力するのが旧車のエンジンなのです。

・ICBM(Inoue boring Cylinder Bore finishing Method)

カワサキZ1/Z2やH1/H2など、今やバイク業界の遺産ともいえる旧車・名車の多くに採用されているのが鋳鉄製シリンダーです。走行距離を重ねるごとに徐々にすり減っていくこのシリンダースリーブを、アルミメッキシリンダーに変えるのが「ICBM」。まさに「減らないシリンダー」といえるでしょう。

旧車ユーザーが気になるのが、「自分の愛車はいつまで乗れるのだろうか?」「パーツは共通されるのだろうか?」ということ。もちろん、ICBMがそういった悩みの全てを解決するわけではありません。しかし、エンジンに関する最も重要なポイントを解決してくれるのは間違いないでしょう。

加工対象となるシリンダーはφ50~φ91まで。4ストロークはもちろん、2ストロークも加工可能です。シリンダーから鋳鉄スリーブを取り出し、アルミスリーブを製作してメッキシリンダーを作ります。また、もともとアルミメッキが施されてあるシリンダーのメッキも可能だそうです。さらに純正サイズだけでなく、ボアアップにも対応……と、つまり内径さえ上記規定内であれば、どんなシリンダーにも加工ができるのです。旧車ユーザーならずとも、気になるのではないでしょうか?

アルミメッキシリンダー化だけでも素晴らしい加工技術なのですが、とくに注目してほしいのはカワサキH1やH2に特化した「H1/H2-ICBM」。これは2ストロークエンジン特有のポートに「柱」を立てるというもの。これによって、H1/H2の弱点のひとつであるポートの異常磨耗を防ぎ、純正では考えられないような高い耐久性を実現しているのです。

もちろん、ひとことで「柱を立てる」といっても、そんなに簡単なことではありません。加工工数が通常よりも増えますし、柱が熱膨張をおこなさないように特殊技術「柱の逃し」を設けたりと、その開発には苦労の連続があったようです。

しかし、その甲斐あって、「H1/H2-ICBM」は大好評。井上ボーリングの技術力の高さの証明として、高い評価を受けています。

・iB ラビリンスシール「LABYRI」

最近、新たに同社のラインナップに加わったのが、「ラビリンスシール」です。

これは2ストロークエンジンの気筒間に使われているゴム製のオイルシールに変わって装着する金属製の非接触シールで……
・非接触であるために磨耗しない
・非接触であるためにエネルギーロスがゼロ
というもの。ながらく2ストロークエンジンは耐久性が低いと言われていましたが、その要因のひとつが、このゴム製オイルシール。その欠点をなくすことで、高い耐久性を実現しています。

NSR250Rなど、レーサーレプリカオーナーは要注目のアイテムといえるでしょう。

ブースには他に、H2用のアルミ削り出しシリンダーを展示。同社の高い技術力をアピールしていました。

(文:佐賀山敏行/写真:星野耕作)