■ドライバーは操作なし! 自動運転、まずは商用から普及する!?
【一般公道より自由度のある商用区間だからできること】
2018年12月12日(水)、UDトラックスは2030年までの次世代技術のお披露目会を開催。埼玉県上尾市にある本社には海外からも詰めかけた多くの報道陣が見守る中、レベル4と呼ばれる実用実験車両の「風神」が披露されました。
プロトタイプはクオンの海上コンテナ運搬用トラックをモデルに開発されたもので、外観上は一見、普通のトラックと全く変わりはありません。しかしデモンストレーションランで、運転席に座る乗員はハンドルやペダルに一切触れることなく、指定された走行や車庫入れ、停車等を全自動でこなして見せたのです。
乗員はセーフティドライバーと呼ばれ、基本的に運転操作は必要ありません。ちゃんと自動運転されているかどうかを管理する役割を担い、何かトラブルがあった場合は、運転を替わって手動操作に備えているだけ。
今回はテストコースの一部を使ってのデモンストレーションでしたが、事前にどのような走りをするのかを記録させると、同じ走りを繰り返してくれる仕組みです。テープレコーダー(古い!)で録音し、再生ボタンで何度も同じ音を聞けるのと同様に、同じ運行を何度でも自動で繰り返すことができます。高精度のGPS が搭載されていて、車両の軌跡位置は、プラスマイナス5cm の誤差しか生じないそうです。何か障害物があらわれた時はレーダー等、車両前方や周辺センサーでそれを察知して衝突を避けてくれます。これらの技術は既に特別斬新ではありません。
ただ、明確に実用化がそう遠くないと思わせてくれたのはそれが商業用途だからです。限られた敷地内での運行はパターンがあります。またそれを邪魔する要素も少ない。仮に事故が起きたとしても、外界とは無縁の状況下での事で済みます。
例えば港湾コンテナ基地。一般道路をドライバーが運転してきたトラックで、基地ゲートを通過すると共に自動運転に切り替える。荷役作業や複数のトラックの制御管理が一元化でき、運転手には自動運転中に車内でコーヒーブレイクしてもらうことも可能になるでしょう。荷役待ちの渋滞運転から開放されるだけでも、ドライバーへの負担や時間的ロスは大きく軽減されます。
実際、ボルボはノルウェイの採石現場で、すでに自動運行の実証試験を実施しています。坑内の採石現場から積み出し船が停泊する港までを重ダンプトラックが自動運行されています。つまり、一般公道でない限定した場所で、活動できる舞台がある商用車の方が、早期実用化が図られるというわけです。
ボルボやUDトラックスの取り組みで興味深いのは、自動運転車両を造るトラックメーカーから、物流事業そのものを一手に引き受ける新たな事業展開を目指している点。
既に実用化されているコネクティビティによる運行管理だけでなく、自動運転の導入を機に、生産性や効率性のより高い物流事業への移行参入も視野にいれた展開を模索中。自動運転の実用化と共に変わりつつある社会の将来を見据え、変わり発展躍進しようとする企業姿勢を披露してくれたのです。
(近田 茂)