タイの田舎に出没する謎のクルマ「ロット・イーテーン」とは?

タイのブリーラムにあるチャーンインターナショナルサーキットで開催されたMoto GPタイラウンド。このサーキットでは謎のトラックが場内のシャトルバスとして活躍していました。

タイと言えばピックアップトラックの荷台にたくさんの人が乗っている光景がおなじみですが、このシャトルはちょっとそれとは違います。

じつはこのトラックには以前にも出会ったことがあります。それはアジアクロスカントリーラリーの取材で、タイの田舎町を訪れていたときのことです。遠くのほうからゆっくりとゆっくりとそれはやって来ました。荷台に山のように農作物を積んで走る姿は、トラックというよりも農耕機具という雰囲気でした。

 

そのときは「なんじゃこりゃ?」で終わったのですが、今回はタイの人にこのクルマの名前を聞くことができました。

このクルマはロット・イーテーンと呼ばれるものです。ロット・イーテーンはさまざまな部品を組み合わせ、または自作し、製造されているクルマです。最大の特徴はフロントに積まれた汎用のエンジン(今回1台だけ自動車用エンジンを積んでいるロット・イーテーンがありました)で、これを使いプロペラシャフトを介してリヤタイヤを駆動しています。

前後のサスペンションはリジッドで、ほぼ機能していない感じです。多くの部品はいろいろなものの流用です。たとえばステアリングもなにかの中古部品を使っています。フロントウインドウはなく、当然ワイパーもないのですが、ウインカーレバーは付いていたりします。私が助手席に乗らせてもらったクルマは、ウインカーレバーはコップ掛けとなっていました。

普段はフラットなのですが、今回はお客様を乗せて移動するシャトルとして使うからでしょうか、きちんと特製のシートが作られていました。シートは枯草を固めて作ったものでしたがビックリするくらいに乗り心地のいいものでした。

このロット・イーテーンはエンジンの出力が低いので、坂道で途中で止まると登り切ることができません。出発場所となっていたパドックは1段低い位置にあり、坂道を登ってからでないと外周路に入ることができません。そのアクセス用坂道では、ロット・イーテーンが登っている間はほかのクルマはおとなしく坂の上で待っているのです。

そういえば、日本でも昔はすれ違いのできないトンネルや、急な坂道などでそうやって道を譲り合ったものでした。今の日本で忘れ去られたいろいろなことが思い出され、そして体験できるのもタイのいいところですね。

《撮影 諸星陽一》

この記事の著者

諸星陽一

諸星陽一 近影
1963年東京生まれ。23歳で自動車雑誌の編集部員となるが、その後すぐにフリーランスに転身。29歳より7年間、自費で富士フレッシュマンレース(サバンナRX-7・FC3Sクラス)に参戦。乗って、感じて、撮って、書くことを基本に自分の意見や理想も大事にするが、読者の立場も十分に考慮した評価を行うことをモットーとする。理想のクルマ生活は、2柱リフトのあるガレージに、ロータス時代のスーパー7かサバンナRX-7(FC3S)とPHV、シティコミューター的EVの3台を持つことだが…。