【SUPER GT2018 第6戦・SUGO】3位との差は0.057秒! 劇的なフィニッシュでModulo KENWOOD NSX GT3今期最高位の4位!!

9月16日にスポーツランドSUGOで決勝レースが開催されたSUPER GT第6戦「2018 AUTOBACS SUPER GT Round 6 SUGO GT 300km RACE」。34号車Modulo KENWOOD NSX GT3は前日の予選で11番グリッドからスタートです。

スタートドライバーは道上龍選手。

8月後半に開催されたSUZUKA 10HOURSに出場し完走を果たしているとはいえ、新生Modulo KENWOOD NSX GT3にとっては初めてのSUPER GTとなり、その戦いぶりには注目が集まります。

■決勝グリッドで最後のサスペンション変更

しかしSUZUKA 10HOURSで10時間の決勝レースを走りきったことにより少なからず得ることが出来たデータに加え、前日のフリー走行や予選、そしてグリッドに並ぶ直前のたった20分間のウォームアップ走行のなかでもデータを蓄積し、そのデータをもとに決勝グリッドで最後の調整が行われます。決勝グリッドで道上選手、大津弘樹選手のこの写真を撮影している筆者の背後では、その最後の調整としてサスペンションが変更されていたのです。

魔物が出るといわれるこのSUGO。その魔物の要因ともいえるのが狭いコース幅に加えレコードラインを外すとタイヤカスの嵐。つまり抜きにくさは他のサーキットとは比べ物になりません。その上、Modulo KENWOOD NSX GT3の参戦するGT300クラスはGT500クラスが背後から迫れば道を譲らなくてはならず、その際はラインを外さなくてはいけないというリスクが伴います。

そんな状態で道上選手はレース序盤、スタートからのマシン同士が間の詰まった状態では徹底的に我慢を強いられることになります。

しかしGT500クラスが一通りGT300クラスを抜き去った17周を過ぎたあたりから徐々に順位を上げていき、31周目でのドライバーチェンジを伴うピットインでは7位に浮上。大津選手にマシンを預けます。

これまでModulo KENWOOD NSX GT3はライバルに比べて給油に時間がかかるなどの要因から義務ピット1回の場合はタイヤ交換を無交換もしくはリア二輪交換などでピット作業時間を短縮する作戦をとっていましたが、今回はタイヤが厳しいと判断して四輪全てを交換。無交換や二輪交換を敢行するライバルに比べてはやはり作業時間が長くなり、ピットアウトした時点で19位まで順位が下がってしまいます。

ただし81周のレースでは早目ともいえる31周でのピットインなので、これからピットインするライバルたちを考えればポジションを予選順位まで戻すことは可能です。しかしその先の順位となると、かなりペースを上げなくてはいけないかもしれません。

大津選手は四本交換のおかげでタイヤへの不安を持つことなしに積極的に攻め込んでいきます。ライバルのピットタイミングなどもあって10位までポジションを戻しますが、GT500クラスに絡まれて若干コースアウトしてしまう場面から14位まで後退。しかし65周目あたりでは11位までポジションを戻してきたのです。

魔物は全ての人を不幸のどん底に陥れるわけではありません。その魔物のおかげで上位に食い込めることもあります。Modulo KENWOOD NSX GT3はまさに魔物が味方した好例。

■SC(セーフティカー)の影響がドラマを産んだ

GT500クラスでの67周目、GT300クラスでの61周目にSPコーナーでGT300クラスのライバルがクラッシュしセイフティーカー(SC)が導入されます。SUPER GTでのSC導入はそれまでの順位に影響が出ないように各クラスを整列させてからの再スタートとなります。ある程度マージンを築いてきたトップにはそのマージンが帳消しになるという不利はありますが、後続には再スタートで前に出られるかもしれないという期待も生まれます。

そして70周目にレースが再開されると大津選手の大活躍が始まります。

「ライバルたちはタイヤが厳しそうだった」と語る大津選手。SUGOではライバルたちはタイヤ無交換か二輪交換なので、たしかに終盤にはタイヤがきつくなっています。その上SCでタイム差がほぼなくなった状態から四輪交換をしたModulo KENWOOD NSX GT3が襲い掛かってくるのですから抗えるわけがありません。「ストレートスピードは速いので、最終コーナーの立ち上がりに集中して抜いていきました」と大津選手は語ります。

そして迎えたファイナルラップ。大津選手は3番手の0号車グッドスマイル 初音ミク AMGと88号車マネパ ランボルギーニ GT3の背後からスリップストリームを使いストレートで一気に刺そうと身構えます。

ダンロップブリッジから抜きにかかった大津選手と前走の2台が絡んでフィニッシュラインはスリーワイド!

マネパ ランボルギーニ GT3を0.008秒差で抜ききったものの、グッドスマイル 初音ミク AMGには0.057秒及ばず4位でチェッカーを受けます。表彰台を逃してはしまいましたが、それでも今期最上位の4位!

Modulo KENWOOD NSX GT3がチェッカーをくぐった瞬間のピットは大興奮。

道上選手も鄭監督も安堵の笑顔をこぼしています。

レース後の記者会見で大津選手は「正直言ってよくわからないけど速かった」といいながらも「ニュータイヤで余裕があったので安心して攻めていけた」と語っています。

グリッドでの時間ギリギリまでのセッティングや四本タイヤ交換などの作戦とSC導入の運が見事にかみ合った結果の今期最上位。不運からの新車導入により、よい方向に流れが大きく変わってきたModulo KENWOOD NSX GT3。

次戦オートポリス、そして最終戦のツインリンクもてぎと、Modulo KENWOOD NSX GT3の活躍への期待が膨らみ、まったく目が離せません。

(写真:松永和浩、高橋秀彰 文:松永和浩)

 

この記事の著者

松永 和浩 近影

松永 和浩

1966年丙午生まれ。東京都出身。大学では教育学部なのに電機関連会社で電気工事の現場監督や電気自動車用充電インフラの開発などを担当する会社員から紆余曲折を経て、自動車メディアでライターやフォトグラファーとして活動することになって現在に至ります。
3年に2台のペースで中古車を買い替える中古車マニア。中古車をいかに安く手に入れ、手間をかけずに長く乗るかということばかり考えています。
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