【VWアップGTI試乗】これぞup!の正しい姿。そしてホンモノの「ホットハッチ」だ

フォルクスワーゲンのミニマムモデルである、up!(アップ)に、スポーティなGTIが追加されました。GTIのネーミングはゴルフから始まったもので、エンジンや足まわりなどをスポーティ仕様にしたモデルに採用されています。

up! GTIは116馬力/200Nmの3気筒1リットルターボエンジンを搭載。組み合わされるミッションは6速のマニュアルミッションとなります。

ふつうのマニュアルミッションなので当然、クラッチペダルが装着された3ペダル仕様。オートマチック限定免許では運転できないモデルです。

   

標準タイプのアップはセミATというミッションを採用していました。これはMTをベースに自動変速するようにしたものなのですが、あまりに変速が上手ではなく、それだけでクルマの魅力が半分以下にまで落ちていました。up!について高い評価を下している人も多くいましたが、私はあのミッションだけで致命的だという判断でした。

クルマ自体はよかっただけに残念なミッションだったのですが、GTIではミッションが普通のMTになったことでその問題は一気に解決され、up! GTIは非常に魅力的なクルマになっています。

標準で75馬力のエンジンを116馬力までパワーアップしたことで、走りの機敏さは一気に向上しています。車重はジャスト1トンです。初代ゴルフGTIが800kgを切っていましたから昔の感覚で言えばコンパクトカーで1トンは重いのですが、今の時代で考えれば軽いクルマと言えるでしょう。

ワインディングにアップGTIを持ち込むとそれはそれは楽しい走りができます。まるで時代が戻った感覚です。ホンモノのホットハッチの走りがそこにあります。

コーナーに向かって突っ込み、ブレーキングし、ステアリングを切って曲がっていくこと自体を楽しめる仕様のクルマは、今の時代にもたくさんありますが、小さなボディに3ペダルのMTはやっぱり走りが違います。ゴルフGTI時代に比べれば、クルマが重くなっているのにその感覚が同じように感じるのは素晴らしい技術です。

なにしろ物理の法則は今も同じなのです、それを進化したエンジン、サスペンション、タイヤで甦らせる(多分に思い込みもあるのでしょうが)は、心を刺激します。

ノーマルのup!は個人的におススメしませんが、このup! GTIならおすすめして間違いのないクルマだと言えます。

ただし現状は限定車です。今、原稿を書いている時点でVWのホームページにSOLD-OUTの文字は見当たりませんでしたが、興味のある方は、とにかく急げ……です。

(諸星陽一)

この記事の著者

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諸星陽一

1963年東京生まれ。23歳で自動車雑誌の編集部員となるが、その後すぐにフリーランスに転身。29歳より7年間、自費で富士フレッシュマンレース(サバンナRX-7・FC3Sクラス)に参戦。
乗って、感じて、撮って、書くことを基本に自分の意見や理想も大事にするが、読者の立場も十分に考慮した評価を行うことをモットーとする。理想の車生活は、2柱リフトのあるガレージに、ロータス時代のスーパー7かサバンナRX-7(FC3S)とPHV、シティコミューター的EVの3台を持つことだが…。
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