タイのサプライヤ「YACHIYODA」への工場見学でアルミホイール製造とグローバル展開の現状を確認

タイはバンコクの郊外に工場があるホイールメーカーYACHIYODA。YACHIYODAは日本の八千代田工業からネームライセンスと技術移転を行い1983年からタイで操業を始めたホイールメーカーです。

我々がYACHIYODAの工場へ到着すると、タイの民俗音楽によるタイ舞踊で歓迎を受けます。

タイといえば実は自動車の一大生産拠点としてホンダをはじめ日本の自動車メーカーや欧州、アメリカなど様々な自動車メーカーが製造工場を構えます。それはタイ国内の自動車需要もさることながら、タイという国が独自にアジアや中東など様々な国々と工業製品の関税撤廃に向けた条約を交わしているため、タイで製造した自動車をそれらの国々に輸出する際に関税がかからないという理由によるものなのです。そんな事情により多くの自動車会社がタイに生産工場を持つのですが、そのために多くのサプライヤーもタイに工場を持つようになります。また、タイ資本によるサプライヤーも数多く、YACHIYODAはそんなタイ資本のサプライヤーということになります。

YACHIYODAは自動車メーカーやメーカー系アフターパーツメーカーなどからの生産委託がメイン事業ですがオリジナルホイールも手がけ、同社のYACHIYODA SPORT WHEELSブランドでもアジア、欧州で展開しているとのこと。

YACHIYODAではホンダの純正ホイールやホンダアクセスのブランドのホイールをはじめ大手メーカーの鋳造ホイールを委託生産していますが、企画や仕様、デザインをそれらメーカーが決定すると設計や試作、製造を一貫して行う技術力を有しています。

委託生産のホイールメーカーでは多くの場合、金型は別の企業に外注とする場合が多いのですが、YACHIYODAでは金型も車内で製造します。そのため設計から生産までの時間を大幅に短縮でき、設計変更などにも迅速に対応できるのが自慢の一つ。

最新鋭のメカトロニクスによるマシニング機も導入し、金型製造にはかなりの投資をしています。またタイという場所柄、こういった工作機械や技術は日本だけではなく欧州の最先端技術も積極的に取り入れ、精密で高品質な製品製造を実現しています。

また、場内の安全管理にも徹底的に気を配り、服装や通路といったことまで厳しい基準と規定を設け不慮の事故を徹底的に排除している様子がうかがえます。

鋳造アルミの運搬やホイールの熱処理など、危険な作業は徹底的にロボット技術を活用し、人が触る部分を排除して安全性と効率化を高めています。

構内にうず高く積まれたアルミ合金のインゴッドはそれぞれ委託したメーカーごとに選別され原料から製品の梱包に至るまでの工程を徹底管理。

またリサイクルについても徹底されており、掘削工程で出た切子も厳密に管理して再インゴッド化。このときの工程でもYACHIYODA以外から出た切子は絶対に混ぜないということが規定化されているというから驚きです。なお、このしっかりとした工程管理によりリサイクルされたアルミ合金素材は新規2に対してリサイクル1という割合で熔解されホイールの素材となるのです。

それらの安全規定、製造規定で管理された工場は非常に清潔で、通路には一切邪魔なものが無く、それこそチリひとつ落ちていません。

そして随時最新技術を取り入れ、強度強化と生産効率のアップに余念がありません。

YACHIYODAが多くのメーカーに信頼される理由のもうひとつは厳密な検査体制で、事故や接触に対して同じ状態を検査項目に取り入れ破壊検査や非破壊検査などを厳密に行うことにあります。

ホイール単体による耐久検査も時速換算で300km/hに至る高速回転でおこない、その後音波やX線などの検査機で厳密に測定し、ゆがみやひび割れなどもチェック。

万が一検査に合格しないロットがあった場合は、そのロットを全数破棄して原因を究明、場合によっては金型も作り直すところから再設計を行うというのです。

メーカーが許容する技術水準の上を行かないと、ホンダなどの純正ホイールやそれよりも高性能なホンダアクセスなどのメーカー系アフターパーツメーカーの製品を手がけることはできないということなのです。

またオリジナルホイールについては、YACHIYODAの独自性を強調することもさることながら、積極的に新技術を採用し委託生産へのプロモーションもかねているとのこと。この立体的に造形されたスポークの内側のリム部分に着色をするというのも最先端技術の一つ。

全塗装後に着色したい部分だけ塗料を削り、染料の中へアルミを沈めてその染料ごと電気を流し露出したアルミ合金部分のみにあるまいと処理を施すという最新の技術を使った着色方法により、鋳造ワンピースホイールのリムの内側に着色を施しているのです。

こういった最新技術に積極的なサプライヤーがあってこそホンダやホンダアクセスの製品がグローバルに展開できるのです。

タイ製造といって斜に構えいる方もいらっしゃいますが、全ての国際基準であるISOや日本でのホイールの基準であるVIAに準拠、いやそれ以上の品質で製造されているからこそホンダアクセスをはじめ多くのメーカーが生産を委託するのです。

タイという国の奥の深さを知って、ますます自動車という国際商品を面白いと感じる工場見学。これからも機会があれば紹介してみたいと思います。

(写真・文:松永和浩)

 

 

この記事の著者

松永 和浩 近影

松永 和浩

1966年丙午生まれ。東京都出身。大学では教育学部なのに電機関連会社で電気工事の現場監督や電気自動車用充電インフラの開発などを担当する会社員から紆余曲折を経て、自動車メディアでライターやフォトグラファーとして活動することになって現在に至ります。
3年に2台のペースで中古車を買い替える中古車マニア。中古車をいかに安く手に入れ、手間をかけずに長く乗るかということばかり考えています。
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