自動運転にも欠かせない電動パワーステアリングの進化に取り組むジェイテクト【人とクルマのテクノロジー展 2018】

●Key Person Interview

瀬川 治彦 氏(株式会社ジェイテクト ステアリング事業本部 技術本部 常務執行役員)

Q:バスの自動運転の紹介がありましたが、この技術の今後は?

A:基本的にOEM(自動車メーカー)様のシステムから信号を受けて、その信号に従って正確な操舵を行なうというのが我々の 役目です。ですから、自動運転のシステムを販売するために開発しているわけではありません。ただし、入力される信号を受けて漫然と動かしているという姿勢では、良いものが提供できないと思っています。そういう意味で、車両の位置を正確に検出するためのデファレンシャルGPSから、前方の状況を把握認識するためのカメラユニット、そして自動運転ECU、システム 全体を経験しておく必要があった。それがバスの自動運転技術です。もちろん、これからも技術開発は続きますし、そういう 意味で進歩は目指すところではありますが、我々のコアとなる 技術は、あくまで操舵系のアクチュエーターとなる、EPSのようなステアリングシステムであり、そこに必要とされる技術を磨き続けることが真の目的です。

Q:伊賀に本格的なテストコースがありますが、 この施設ではどのような役目を担うものですか?

A:我々はOEM様から性能要求を受けてから対応しているだけではいけないと考えています。OEM様の要求にいち早く応えるために、我々が提案を行なっていかなければならないと思いますし、また我々がそれだけの経験と能力を持っていないとならない。伊賀テストコースではそのために必要な研究開発を数多く行なっています。そのひとつに、操舵感を定量化するという研究があります。こういう操舵感をOEM様が求めているのではないかというところを、さまざまなベンチマークから見出し、 それを定量データで追ってシステムで再現、部品単位に落とすところまで可能となりました。この活動はかなり我々にとってプラスになっていると思います。ただ、今は時代の転換期です。ステアリングの技術は現在において我々のコア技術ではありますが、未来永劫この延長線上だけでビジネスが続けられるとは思っていません。もっと違う領域にもジェイテクトのコア技術を広げていく必要があるはずです。

バス・トラックなどの大型商用車において、自動運転を含むADAS機能を実現するための電動アクチュエーター付きステアリングシステム。既存の油圧システムと組み合わせ、必要となる操舵トルクを確保。アクチュエーターのコラム同軸配置により寸法増加を最小限としている。

(文:MFi)

この記事の著者

角田伸幸 近影

角田伸幸

1963年、群馬県のプロレタリアートの家庭に生まれる(笑)。富士重工の新米工員だった父親がスバル360の開発に立ち会っためぐり合わせか、その息子も昭和期によくいた「走っている車の名前が全部言える子供」として育つ。
上京して社会人になるも車以上に情熱を注げる対象が見つけられず、自動車メディアを転々。「ベストカー」「XaCAR」で副編集長を務めたのち、ポリフォニー・デジタルにてPlayStation用ソフトウェア「グランツーリスモ」シリーズのテキストライティングに携わる。すでに老境に至るも新しモノ好きで、CASEやパワートレインの行方に興味津々。日本ディープラーニング協会ジェネラリスト検定取得。大好物は豚ホルモン(ガツとカシラ)。
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