【実録:ベントレーの車検代はいくらかかる? 第2話】「老婆」たちの言葉と、見つけた自分の答え

○「3ケタ万円は覚悟しておけ」
私はサラリーマン時代から自動車関係の仕事をしていたということもあり、周囲にはクルマに詳しい(と自任している)方が多くいらっしゃいました。そうした方々は、私がベントレーの購入を考えていると聞くと、老婆心とはこういうことを言うのでしょう、「最初に買うクルマではない」「まずはコンパクトスポーツにしておけ」などなど、ほとんどの方が否定的なアドバイスを下さりました。しかし、そうした方々は私がどれほどベントレーに心を奪われているかを知らないので、必然的にそういったアドバイスは耳を流れていきました。ほかの人々がどんなカーライフを送っていたとしても、私にとって生まれて初めて購入するクルマは、ベントレーでなければならなかったのです。

しかし、そうしたアドバイスの中で最も多かったのが「維持費が大変」「すぐ壊れるし、パーツ代が高い」といった金銭面に関係するものでした。駐車場代や保険代、自動車税等は決して安くない、というより、ほぼ確実にどのクルマよりも高額になりますが、おおよその金額は事前に算出することができますから、しっかりと貯金をしておけば大きな問題にはなりません。一方で、故障やメンテンナンスに必要な費用というのは、簡単に想定することはできません。アドバイスをしてくれる方々に聞いても、インターネットで調べても「とにかく高い」「3ケタ万円は覚悟しておいたほうがいい」などといった曖昧な情報ばかりで、しかもほとんどすべてが伝聞によるものでした。

良くも悪くも頑固な性格なものですから、すでに私の心が決まっている以上、誰に何を言われてもベントレーを諦めるという気にはなりません。結局、アドバイスをして頂いた方々も、ベントレーを所有したこともないし、ましてやベントレーの車検に3ケタ万円を支払ったこともないのですから、まさに老婆心のみでアドバイスをしてくださったのです。それはそれでありがたいのですが、意思決定に影響を与えるほどの確かな情報ではありません。私が筆を執ろうと思ったのは、正確な情報をより多くの方にお伝えしたいということにほかなりません。

○ベントレーを扱える場所はどこにある?
車検をするにあたって、まずはじめに決めなければならないのが、どこの店に依頼するかということです。通常であれば、購入をした店に依頼するの無難です。しかも、私が購入したところは国内有数の専門店ですから、断られることもありません。しかし、そこには出さないことに決めました。最大数か月という納期が主な理由です。

そうして、他のところを探すことにしました。都内近郊に、この時代のベントレーを得意にしている店はいくつかありますが、どこも知り合いである一方で、知り合いだからこそ妙な遠慮が生まれることが懸念でした。私も経営者の端くれですから、金銭的なやり取りについてはそれなりにシビアな感覚を持っているつもりです。これはとにかくコストを削減したいということではなく、本当によいものやサービスについては糸目をつけないが、そうでないものについてはビタ一文払いたくないという意味です。「よろしくどうぞ」のあうんの呼吸でお願いするできるのが知り合い同士のよいところであり、それはそれで否定はしませんが、最初の車検だからこそその内容や費用についても納得のゆくまで徹底的に話し合って決めたいと考え、知り合いの店に出すことも選択肢から外しました。

とはいうものの、現実的にベントレー・コンチネンタルRというクルマを扱ってくれるところは多くはありません。私としても、どこでもよいというわけではないので、慎重に選んでいるうちに時間が過ぎていきました。結論から言うと、そんなこんなで私が車検を依頼したのは、代官山にある、誰もが知る自動車用品店最大手の店です。軽自動車やコンパクトカーならいざしらず、コンチネンタルRのようなクルマを預けるのは、エンスージアストからすれば信じられないことかもしれません。しかし、これにはある偶然のできごとがあったのです。

私は新しいもの好きでもあるので、ある和歌山県のベンチャー企業が販売した電動バイクを最近購入しました。その正規販売店が、上述の代官山にある自動車用品店だったのです。購入のために店に立ち寄ると、なんと店舗の前にピーコックブルーのコンチネンタルRが駐められていたのです。一瞬、自分のクルマかと思いましたが、そうでないことはホイールを見れば明らかです。そう言えば、以前一度だけ都内でピーコックブルーのコンチネンタルRを見かけたことがあったので、その個体かもしれません。聞けば、オーナーの方より整備で預かっているとのことでしたので、すかさず「コンチネンタルRも扱えるのですか?」と聞いたところ、2つ返事で問題ないとの返事がありました。担当の方と会話をしているうちに、ベントレーに対する理解も十分にあることもわかり、納期や費用についての説明も非常に明快だったため、コンチネンタルRを預けてみることにしたのです。

(ピーコックブルー・瓜生 洋明)