そんな状況で登場したステップワゴンHVですが、そのシステムはかなり独特です。
ホンダは現在、ハイブリッドシステム用に3種類のユニットを持っていますが、このモデルに採用したのは2モーターとエンジンを組み合わせるスポーツi-MMDと呼ばれるもの。
通常走行はモーターが担当してエンジンは発電に徹します。ただし、ここ一番の加速をするときにはバッテリー&エンジンからの電源供給で(モーターが)タイヤを回すというシステム。エンジン単体で直結してタイヤ駆動するのは高速道路巡航時などの一定条件下のみに限られるというものです。
高速道路などを使わない条件下ではほとんどすべてのシーンをモーター駆動でまかなうことになりますので、感覚的には発電用エンジン付きEV(正確にはシリーズハイブリッド)と言ってしまっていいと思います。
Sクラスミニバンのフリードに採用した1モーターのハイブリッド機構とはまったく別の、かなり凝った&コストも高いシステムです。同様のユニットはアコードやオデッセイにも搭載されていますね。
実際に乗ってみると、言い方は変ですが「事前に予想していたよりもEV的」でした。モーターで走っているのかエンジン走っているのかが見えるパワー遷移モニターを見ていると、通常走行時もエンジンはかなりの頻度で稼働しています。が、その回転数は(音から判断するに)低く抑えられているため、車内は静かです。この状態ではエンジンはパッテリーへの充電に徹している様子です。
気合を入れて大きくアクセルを踏み込むとエンジンがうなりをあげて、高回転に移ります。このときエンジンの出力は発電用モーターを通して走行用モーターの駆動力へと追加されます。同時にバッテリーに蓄電された電力も走行用モーターへと向かい、総力戦となります。
一方で、速度が一定でエンジンに駆動を担当させたほうが効率がいいと判断するとモーター出力がカットされます。このときパワー遷移メーター上にはエンジンとタイヤが直結されたことを示す歯車のマークが登場します。
一般道ではこの歯車がなかなか現れずレアキャラ扱いでしたが、高速道路に入ると頻繁に表示されるようになりました。ハイウェイを使ったロングランで燃費に効果を発揮する志向なのでしょう。
このエンジン直結駆動時にはモーターがトランスミッションとして作動するため、I-MMDにはフリード系のようなDCTは存在しません。
……と、文字で説明するととんでもなく複雑なステップワゴンHVですが、実際に乗っているとその制御はとても自然で切替時のトルク変動もなく(少なくとも記者には体感できませんでした)「今、モーター駆動なのかエンジン駆動なのか」は体感できません。とても自然にドライビングできることが印象的でした。
またステップワゴンの魅力はハンドリングにもあります。本来低床設計で開発されているため、もともとコーナーは比較的得意としてきたのですが、HV仕様ではさらに進化しています。
というのも、重量物であるHVシステム用のバッテリーを前席下にマウントしたのと同時に、バッテリー部分付近を中心に補強を行ったことで、搭載部分の剛性確保と同時にボディの強靭性も高まっているためです。
そして最上級グレードのG EXホンダセンシングにはボディ制振ダンパーも追加(これはヤマハがパテントを持つ、まさにボディ振動を収めるダンパーで、超極低速から効果を発揮するもの。具体的には乗り味がしっとりして車格があがったようなフィールを味わえます)するなど本気で操安性を高めようとしていることが伺えます。