スタッドレスコンパウンドで作った「スリックタイヤ」の性能は?【スタッドレスタイヤのグリップをパート別に分けて理解する・その1】

2017〜2018年は雪が多く降ったこともあり、東京などでもスタッドレスタイヤを装着しているクルマを数多く見かけました。スタッドレスタイヤというのは、スタッドつまりスパイクをレスしたタイヤのことで、スパイクがなくても雪道やアイスバーンを走れるタイヤのことを指します。

スタッドレスタイヤはトレッドに刻まれたサイプと呼ばれる小さな溝が重要とよく言われますが、じつはそれだけではなく、さまざまな性能が絡み合って高い雪道性能や氷雪性能を発揮しています。そのことを確かめるための試みが横浜ゴムが所有する北海道のテストコースTTCHで行われました。

まず知ってもらいたいのが、タイヤのコンパウンド(ゴム)も非常に重要だということです。それを証明するために用意されたのが、なんとスタッドレスタイヤのコンパウンドを使って作られたスリックタイヤです。

スリックタイヤというのは、溝がまったくないタイヤのことで、普通は一部のレーシングカーが乾いた路面で使うものです。このスタッドレスコンパウンドのスリックタイヤがびっくりするくらいによくグリップするのです。もちろん急加速をしたり、急減速をしたり、すれば限界があっという間に訪れますが、それらを上手にコントロールしているうちは、ちゃんと走れます。

比較用としてウインタータイヤコンパウンドで作ったスリックタイヤが容易されていましたが、こちらはさすがに限界が低かったです。定常円を描いて走行しているとスタッドレスコンパウンドは25km/h程度まで速度を上げられますが、ウインタータイヤコンパウンドは20km/hに達することはありませんでした。

じつは溝がないぶん、路面(今回の場合は氷雪面)との接触面積が増え、グリップが稼げているのです。今回の試乗は圧雪路で行いましたのでこうしたグリップが実現できているのですが、これがシャーベット路や水膜が存在するアイスバーンではこうしたグリップを得ることはできません、タイヤと路面(氷雪面)との間に水膜がある場合は、その水膜を除去するためのサイプやグルーブ(溝)が必要なのです。

(文:諸星陽一)

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諸星陽一

1963年東京生まれ。23歳で自動車雑誌の編集部員となるが、その後すぐにフリーランスに転身。29歳より7年間、自費で富士フレッシュマンレース(サバンナRX-7・FC3Sクラス)に参戦。
乗って、感じて、撮って、書くことを基本に自分の意見や理想も大事にするが、読者の立場も十分に考慮した評価を行うことをモットーとする。理想の車生活は、2柱リフトのあるガレージに、ロータス時代のスーパー7かサバンナRX-7(FC3S)とPHV、シティコミューター的EVの3台を持つことだが…。
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