トヨタの福祉車両である、ウェルキャブがバージョンアップしました。その背景には、今後ますます増えていく高齢者と、その介護に関わる人々との関係が、在宅介護重視の新しいフェーズに入るという流れと関連がありそうです。
日本は平均寿命が伸びたことと少子化によって、いまから10年を経ずしておよそ3人で1人の高齢者を支える時代がやってきます。
その頃、現行の介護保険などをそのまま運用するためには、約2倍の掛け金が必要になってきます。さすがにそれを実現するのは難しく、維持費用のかかる介護施設入所を減らして在宅介護へシフトさせていくのが国の方針となっています。
在宅介護社会へのシフトと自動車メーカーのできること。
そこで、トヨタの福祉車両であるウェルキャブを開発しているCVカンパニー製品企画主査である中川茂さんから、在宅介護が主軸になった時、自動車メーカーができる事なにか……という観点から、お話を伺いました。
2007年より世界で類を見ない、超高齢化社会に突入した日本。2017年現在、総人口の4人に1人が65歳以上の高齢者となっています。高い高齢化率の問題は、支える側の負担が大きくなるというのが深刻です。
そして、2010年から2025年までの間で75歳以上の後期高齢者は55%増加する(約1.5倍に増える)一方で、これを支える側、20〜64歳の人口は少子化の影響で13%減となります。結果、2010年には5.4人で高齢者1人を支えていたものが、2025年には3人で1人を支えることになります。
ざっくりいって、支える側は、さまざまな負担が2倍近くに増える計算になります。しかしそれは現実的ではないため、冒頭にあるように、コストのかかるものを減らしていく過程で、施設への入所が主だった方法だった老人介護を、各家庭に任せる在宅介護にシフトしていこうという流れになっているのです。
しかしコレは、国の負担は減るけれど、個人の負担は大きくなるのが目に見えています。そこで「その負担を少しでも減らすために、自動車ができること」を考えた、その回答のひとつが今回発表された3台となります。
紹介するウェルキャブは、トヨタを代表するノア・ヴォクシー・エスクァイアというミニバン・ベースの3台。
いずれも既存のモデルがあるものを、ブラッシュアップした1台です。それぞれ使い勝手の向上をはかるにあたり、ハッキリとした目標とともに改良されたモデルとなっています。
(古川教夫)