オランダの歴史ある企業が生んだカーエレクトロニクスの未来につながる新素材

創業は1902年、もともとはオランダで国営として生まれた化学系企業がDSM。2017年6月には、日本法人を一本化したDSMジャパンを設立するなど、日本市場への注力をしています。そのDSMが「カーエレ(カーエレクトロニクス)の起爆剤」として生み出した新素材の発表会をオランダ大使館にて開催しました。

今回発表された新素材は『ForTii Ace JTX8(フォーティーエース ジェイティーエックスエイト)』です。

食品から工業製品まで幅広いジャンルをカバーする化学企業である同社が得意としている結晶性高機能プラスチックの新製品となっています。具体的には耐熱性、剛性が高いレベルになっていて、さらに絶縁性も強く、薬品による劣化にも強いという高機能プラスチック素材。自動車用としてはコネクターに使うことが想定されています。

先日、開催された東京モーターショーでも各社で大きなテーマとなっていたのは『電動化』、『自動運転』、『コネクティビティ』。いずれも電気回路が増えること間違いなしのトレンドであり、コントロールユニットが増えるということは、コネクターも多く使われるようになるわけです。

ひとつひとつは重さが気にならないように思えるコネクターでも数が増えれば重量増が気になってきます。高機能を求めながら、環境性能を考えると軽量化も無視できない現代の自動車においては、小さなコネクターであっても軽く作りたいはずです。

そうしたニーズに応えるべく、DSMが開発したのが『ForTii Ace JTX8』なのです。熱や薬品といった影響に対する強さを持つ素材をコネクターに使えば、従来よりも薄肉化・小型化が可能になります。また、薄肉化しても十分な絶縁性を保つことができ、高い信頼性を維持できるというのも、この新製品のセールスポイントです。

とはいえ、DSMの製品はあくまでもペレット状で納品されるプラスチック素材であり、コネクター形状にするのは部品メーカー(サプライヤー)の役割。『ForTii Ace JTX8』の特性を、どのように活かすかはサプライヤーやメーカーといった使い手次第ともいえるのです。

ちなみに、DSMの生み出してきた製品(素材)は、自動車産業においても多くの実績があり、全世界を走る自動車の87%に使われているといいます。また、日本企業ではトヨタと縁が深く、トヨタのモータースポーツ部門としてWECを走らせているTMGとプラスチック素材などに関するパートナーシップを結んだばかりというから、覚えておきたい名前です。

(山本晋也)

この記事の著者

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山本晋也

日産スカイラインGT-Rやホンダ・ドリームCB750FOURと同じ年に誕生。20世紀に自動車メディア界に飛び込み、2010年代後半からは自動車コラムニストとして活動しています。モビリティの未来に興味津々ですが、昔から「歴史は繰り返す」というように過去と未来をつなぐ視点から自動車業界を俯瞰的に見ることを意識しています。
個人ブログ『クルマのミライ NEWS』でも情報発信中。2019年に大型二輪免許を取得、リターンライダーとして二輪の魅力を再発見している日々です。
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