【タイヤ試乗 ヨコハマADVAN dB V552】クルマを選ばず静かに乗れる、その頂点を目指した(前編)

「かつてないほどに静かな車内空間を体験してください」。これは高性能プレミアムカーのために生まれたADVAN dBの新製品v552のカタログに書かれたコピーである。2017年に創業100周年を迎えた横浜ゴムが、同社史上最高の静粛性を持ったタイヤを登場させた。茨城県にある横浜ゴムのタイヤテストコース「D-PARC(ダイゴ・プルービング・アンド・リサーチ・センター)」で開催されたプレス試乗会からレポートする。

近年ハイブリッド車(HV)、プラグインハイブリッド車(PHEV)、電気自動車(EV)だけでなく、ガソリンエンジン車、ディーゼルエンジン車も含めて、走行中の動力源からの騒音は極端に静かになって来ている。そうすると車内で聞こえてくる目立つ音はタイヤノイズになる。それを静かにしようというのがADVAN dB v552なのだ。

タイヤノイズはゴォーという耳障りな低周波のロードノイズ、シャーという高周波のパターンノイズ、その中間の打音やそこから派生したトーンと響くようなキャビティノイズなど多岐に渡る。車種によりそれらの音が目立つクルマとそうでないものがあるため、そのチューニングは難しい。

ADVAN dB v552はトレッドパターンを一新してパターンノイズとブロックの打音を減らし、2階建てになっているトレッドゴムのベースゴムは低燃費だけでなくロードノイズや打音も減らす新しいコンパウンドを採用するなど、タイヤの性能を決める要素のすべてを見直して新設計した。徹底的にタイヤノイズを減らすことができれば、クルマを選ばず静かに乗れることができるから、ADVAN dB v552はその頂点を目指したようだ。

試乗はウェット路面のスキッドパッドから始まった。まずはADVAN dB v552を履いたクラウンで走った。半径30mのところに引かれたラインの外側を走りながら、徐々にスピードを上げていった。クルマは安定性を保ちながらもアンダーステアが出て少しずつ外側に膨らんでくる。しかしハンドルを切り足していくとその分はちゃんと追従してくるので30mのラインから離れずに走れる。もっとスピードを上げていくと当然ハンドルの効きにも限界がくるが、ハンドル角が大きくなって限界を超えたときにも急にグリップが低下することがないので安心だった。滑り出しても粘っているからそこから回復させるのも楽にできて安全性も高い。

同じ半径30mのラインを一定スピードで走りながら急にアクセルペダルを深く踏み込んでみると後輪駆動なのでリヤが滑り始めるが、スピンモードには入りにくくアクセルペダルを戻すとすぐにグリップを回復する。とはいってもグリップ限界は高いからそう簡単にはアクセルでリヤを滑らそうと思ってもなかなか滑り出さない。

ヨコハマタイヤのテストではウェット路面での制動距離は6%短くなり、ウェット円旋回のスピードが1%アップ、ウェットのハンドリングコースのタイムは8%向上、ハイドロプレーンが起こるスピードは3%アップするなど、低騒音と低燃費が売りのタイヤなのにウェットグリップ全般にアップさせている。

ウェット路面でグリップ限界まで試したところでわかったことは、グリップが粘り強く、限界が高く、滑り出してもまだ粘り強さが残っているということ。これなら雨の日の走行も安心してできそうだ。

ウェットグリップをアップすると二律背反の転がり抵抗は悪くなるのが通例であるが、ADVAN dB v552は転がり抵抗も5%向上しているというからすごい。新しいトレッドコンパウンドはより細かいシリカを均一に分散してウェットを向上して、前述のようにウェットグリップは強いから安心して良さそうだ。ちなみにタイヤラベリングでは、転がり抵抗は全サイズがランクA、ウェットグリップは14インチと15インチでランクBが混ざるが16インチ以上はすべてランクAを獲得している。つまり転がり抵抗とウェットグリップを両立したタイヤということがラベリングでも証明している。

次はDPARCご自慢の騒音・乗り心地の試験路を同乗走行で試してみた。ここもクラウンだったが、新旧で乗り比べるとタイヤノイズの中間の周波数(200〜350Hz)のレベルが明らかに低下していることが確認できた。もっと低い周波数(100〜200Hz)のロードノイズも確実に小さくなっていて、後席の居住性はかなり向上した。ハーシュネスと言われる段差でのポンと響くような音と振動も小さくなっていた。ADVAN dB v552はトレッドパターンを新設計しているが、ブロックサイズをより小さくして、特にイン側のブロックを小さくして路面を叩く音を発生源で小さくしている効果だろう。またセンターはストレートリブを採用し、アウト側のブロックは非貫通サイプを左右から配置することでブロック剛性をチューニングし、操縦安定性を高めながらも静粛性の向上にも効果を発揮している。

(菰田 潔)

【関連記事】

【タイヤ試乗 ヨコハマADVAN dB V552】静粛性はトップランク! 乗り心地まろやかでダンピングも良く、低騒音タイヤとは思えない強いグリップを持っている(後編)
https://clicccar.com/2017/10/25/523553/