日産の「完成車検査」不備問題、どこに「無資格の検査員」が入ったのか?

日産による「完成車検査工程での法令上の不備」問題が公表され、2週間が経ちました。

国土交通省が指摘したのは「完成車検査」の有資格者が検査を行うべき工程にて、日産側が独自に「補助作業員」と呼ぶ無資格の作業者が混ざっていた点です。

日産側はその事実を認め、西川社長が公式に謝罪、116万台のリコールを申し出ました。さらに顧客への謝罪と、「原因究明と再発防止には検討に一か月必要」との回答をしており、日産の次なる報告を待っている状況です。

法令違反は明らかな日産のミスであり、許される問題ではないことは言うまでもありません。また、お客様の信頼を大きく損なったことで、日産は相当なダメージを受けることになります。新型リーフの販売にも少なからず影を落とすことになります。

連日、新聞やテレビ、ネットニュースなどのあらゆる媒体から、日産の姿勢と責任感の欠如に対して厳しい指摘があり、「日産に対する信頼は失墜した」と報道がされています。しかし、中には、公表されている以上の報道がなされており、首を傾げたくなる報道が散見されます。

そこで今回は、どこに無資格の検査員が入ったのか、見ていきたいと思います。

 

自動車は、おおよそ2~3万点の部品が組み合わさって作られています。それらの部品が、規定通りに取り付けられ、国土交通省に申請・届出した通りに「正しく」機能しているかを確認する必要があります。その確認工程が、『完成車検査』といいます。

法規項目以外に、装備品によりチェック項目が増えることはありますが、一般的な完成車検査の流れは以下です。

1. 組み立てが完了したところでガソリンを少量入れます。
2. 車両内部から、シート、ナビ・オーディオの作動チェック、ステアリングホイールのセンターずれ補正、タイヤトー角のアライメント調整を行います。
3. クルマをローラーの上に乗せ、駆動輪がアクセルの踏む量に応じて回転するか、スピードメーターの精度は許容範囲の内か、ブレーキは効くかを確認します。
4. 最後に、シャワールームを通過して、車室内への水の侵入等を確認します。

日本国内で出す車はすべてこの試験を合格していることになります。さらに、具体的にイメージするために、日本国内の自動車メーカー各社の完成検査の様子がYouTubeにありましたので見ていきましょう。

日産 完成検査の様子

最も走行安全性に寄与が高いのはローラー検査の項目です。このローラー試験を終えた後、コンピュータによる処理判定が行われ、上方のモニターに大きくOKと表示が出ています。これで次工程へ移ることになります。

国土交通省が指摘したのは、「完成車検査」の有資格者が検査を行うべき上記の工程にて、日産側が独自に「補助作業員」と呼ぶ無資格の作業者が混ざっていた点です。

日産側の説明では、「検査自体は適切に行われており、現在国内を走行している車両の性能には影響ない」という報告は、「一連の完成検査は通過している」ということを示しています。

安全について最も寄与が高い検査は3のローラー試験ですが、検査は「申請した数値になっているか」を見るために、センサを使用して計測を行い、定量的に判断をしています。合否はコンピュータが判定します。その際に「想定外のエラーが起きて合否判定に影響が出ていないか」を監視するのが有資格者、ということです。

どこ検査項目で、どの作業を、どれだけの頻度で、何名の無資格者が混ざって作業をしていたのか、その回答は日産側の調査結果を待つ必要があります。

一部のメディアの「無資格者の検査による精度は疑問がある」という報道は、とても残念に思いました。完成車検査を見たことがある方であれば検査手順はご承知でしょうし、測定したデータを元にして、コンピュータがOK-NGを判断することも当然、ご承知のはずです。書き方ひとつで一般ユーザーは受け止め方は大きく変わってきます。昨今は一部メディアの偏向報道が問題視されています。我々もメディアの報道をそのまま受け止めず、事の本質を見抜く必要あるのではないでしょうか。

(吉川 賢一)

この記事の著者

Kenichi.Yoshikawa 近影

Kenichi.Yoshikawa

日産自動車にて11年間、操縦安定性-乗り心地の性能開発を担当。スカイラインやフーガ等のFR高級車の開発に従事。車の「本音と建前」を情報発信し、「自動車業界へ貢献していきたい」と考え、2016年に独立を決意。
現在は、車に関する「面白くて興味深い」記事作成や、「エンジニア視点での本音の車評価」の動画作成もこなしながら、モータージャーナリストへのキャリアを目指している。
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