会社とともに時代を駆け抜けてきた「野生馬」【意外と知らないクルマメーカーの歴史・フォード編】

GM、クライスラーと並ぶアメリカの大手自動車メーカーである「フォード」。残念ながら、2016年に日本市場からは撤退してしまいましたが、世界各国ではいまなお存在感のあるブランドであることは疑いようもありません。

過去、2度に渡って自動車会社の起業に失敗したヘンリー・フォードの三度目の正直として、1903年に創業を開始したフォードは、1908年に製造した「モデルT」で部品互換性の向上と流れ作業による製造の効率化に成功。これまでを凌ぐペースでの大量生産を実現。日本はもちろん、自動車産業全体の発展を刺激したという話は有名です。

現在では多彩な車種が開発・製造されていますが、その中でもフォードの象徴たる一台といえば、やはり「マスタング」です。

1964年、「野生馬」を意味するネーミングを始め、猛々しさに満ちたスポーティなスタイルで登場した初代モデルは、標準装備を簡略化することで車両本体価格を下げたことや好景気もあり、第二次世界大戦後に生まれ育った若者から支持を集めたと言います。

ちなみに、「マスタング」は当初「トリノ」という名前での発売が予定されていました。しかし、ヘンリー・フォード2世がイタリア人女性と不倫しており、そのスキャンダルを受けてイタリアの街を想像させる「トリノ」から「マスタング」へ変更を余儀なくされたとか、されなかったとか……

1969年には2代目へとフルモデルチェンジ。長いフロントノーズやボディ後端に向かって緩やかに下降するルーフラインは初代モデルと共通でしたが、ボディサイズと価格は全体的に上昇。また性能面ではレース用ホモロゲーションモデルとして新たにBOSSシリーズを追加するなど、より高性能化が計られましたが、1970年代のオイルショックを受けて販売は低迷。

それを受けて登場した3代目は全体のプロポーションこそ踏襲するもののボディサイズを小型化。低燃費化のため当初はV8の搭載も予定されていなかったと言います。