夜間の衝突事故撲滅に威力を発揮する「眩しくないハイビーム」テクノロジーとは?

日没が早まるこの時期、歩行者や2輪車の存在をうっかり見落とす可能性があることから、秋の全国交通安全運動の重点項目としてハイビームの使用が推奨される傾向にあります。

夜間に道路横断中の死亡事故が全国で年間600件規模で発生しており、うち約96%が「ロービーム」で走行。「ハイビーム」にしていれば事前に発見出来た可能性があるからです。

しかし、現実的には安全上や商品性の観点から、輝度・照度が大幅に高められたHIDやLED式ヘッドランプの普及により、対向車や前走車、歩行者がいる場合に「ハイビーム」を使用すると、従来のハロゲンランプにも増して周囲に幻惑を与えるため、実際に使用できるシーンは、大幅に限られてしまいます。

また「ロービーム」についても、前方40mまで照射可能(ハイビームは100m)ですが、時速60km/hで走行している場合、停止距離が約40mのため、歩行者を発見した段階での衝突回避は非常に困難な状況。

現状では、こうしたジレンマを抱えたままでの「ハイビーム走行」推奨であるため、なかなか浸透しない状況となっています。また、行政が「夕方になったら早めにヘッドライトの点灯を」と言い続けていますが、残念ながらドライバーの関心度は今尚低い状況とか。

自動的にヘッドランプが点灯する「オートライト」機能の装備が2020年以降の新車から義務付けられましたが、ハイ/ロービームの選択はドライバーの意思に委ねられている点ではこれまでどおりです。

この記事の著者

Avanti Yasunori 近影

Avanti Yasunori

大手自動車会社で人生長きに渡って自動車開発に携わった後、2011年5月から「clicccar」で新車に関する話題や速報を中心に執筆をスタート、現在に至る。幼少の頃から根っからの車好きで、免許取得後10台以上の車を乗り継ぐが、中でもソレックスキャブ搭載のヤマハ製2T‐Gエンジンを積むTA22型「セリカ 1600GTV」は、色々と手を入れていたこともあり、思い出深い一台となっている。
趣味は楽器演奏で、エレキギターやアンプ、エフェクター等の収集癖を持つ。
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