ブランドの存在感を示す、あの「マスコット」の発案者とは?【意外と知らないクルマメーカーの歴史・ロールス・ロイス編】

クルマに詳しくない方でも知らない方は居ないであろう「ロールス・ロイス」。1906年に創業され、チャールズ・スチュワート・ロールズとフレデリック・ヘンリー・ロイスという2名の創業者にちなんで「ロールス・ロイス」と名付けられた、超が付くほど高級なクルマを手掛けているブランドです。

紀元前447年~438年のペルシア戦争の勝利を祝って建設されたというパルテノン神殿をモチーフとしたグリルをあしらった堂々たるスタイルや、最高級のウッドやレザーを惜しみなく使った豪華絢爛なインテリア、乗員に一切のストレスを与えない乗り心地など、まさにクルマの頂点にふさわしい実力を持っています。もちろん、お値段も桁違い。雲の上のような存在です。

そんな「ロールス・ロイス」でひときわ存在感を放っているのは「スピリット・オブ・エクスタシー」と呼ばれるマスコットです。

翼を大きく広げた天使のマスコットは現在販売されている全てのモデルに装備されており、クルマのキャラクターを見事に表していますが、このマスコットを思いついたのは一人の自動車雑誌の編集部員だったそうです。

当時、彼の愛車だった「40HP」は、7036ccの直6エンジンを搭載して最高速度は105km/hを達成。スコットランドで行なわれた「2000マイル・スコティッシュ・トライアル」にて約3200kmをわずか一回のエンストという故障だけで走破し、信頼性の高さを知らしめました。また、極めて静かなエンジンで忍び寄る様子や、ラジエーターグリルやウインドシールドフレーム、ヘッドライトなどボディを彩る煌びやかなシルバー塗装から「シルバーゴースト」の愛称で親しまれました。

そんな誉れ高い個性をアピールしようと、その編集部員は知人の彫刻家にエンブレムを発注。ギリシア神話に登場する勝利の女神であるニケをモチーフに完成させたのが「スピリット・オブ・エクスタシー」でした。正式に「ロールス・ロイス」に採用されたのは1911年もしくは1912年のこと。

現在では、光り輝いたり純金製だったりと様々なデザインが用意されているほか、触れた瞬間にスッと瞬く間に格納されるといった盗難防止機能が搭載されています。

(今 総一郎)