ZFが矢継ぎ早に戦略的パートナーシップを進める背景は? 自動運転の将来は? ZF取締役ピーター・レイク氏へインタビュー

自動運転化への技術は自動車メーカー、サプライヤー共に1社だけでの開発には時間的、リソース的、コスト的には無理だという判断を下す企業が多い。
その中でも、このところ多くの企業との協業を進めているZF社の取締役であるピーター・レイク氏(Peter Lake/ZF フリードリヒスハーフェンAG取締役会メンバー)にお話を伺いました。

−−−このところ積極的な提携を行っていますが、どのような技術を求めての提携なのでしょうか?

ポートフォリオの隙間(ギャップ)を埋めていくイメージです。自動運転の技術はポートフォリをお自分たちだけでやろうとしてません。全部を自分たちでやらずに協業でやることもあり、買っていくこともやります。今までもそうでした。

ただ、(業界の開発や要求の)スピードは速くなっているけれど、それだけが要求されているのではありません。大事なのはポートフォリオであり、スピードだけではないのです。これは、ZFだけでなく、他の同様なサプライヤーもそうやっています。

 

−−−ポートフォリオの隙間(ギャップ)とは?

2025年の実現までには時間軸も、ひとつのギャップとなるかも知れません。自動運転は3つのカテゴリー、見る、考える、動くことから成立します。
見ることは、センサーや360度の視界への技術、物や人を感知するだけでなく、フリースペース(走れる場所)を感知することも必要です。
次に、それら感知した情報を元に、考えることが必要となります。
さらに動くこと。人間でいう筋肉の部分です。ZFではこれまでに(筋肉に当たる)アクチュエーターでは強みを持っています。
今後はセンシングの部分、例えばレーダテクノロジーはイベオ(ibeo)、もう一つの例、レーダーではアスティックス(ASTYX)。それから、考えるプロセスとしてエヌビディア(NVIDIA)と。これらはジグゾーパズルのように、システムとして考える、ニューテクノロジーを提供できることになります。
先日発表したヘラ(HELLA)との協業を足すことで、360度レーダー技術を加え、ポートフォリオは実現に近づきます。

 

−−−自動運転に向けたカー・トゥー・カーの通信に向けての考えは?

ホットな話題ですね。
クルマとインフラストラクチャーをどうするか、まだ分かっていない部分が多く、すでに走っている既存のクルマをどうするかという問題もあります。
近い将来の自動運転レベルが低いものにはカー・トゥー・カーは必要ないかもしれません。では、今後どうなるか。8-10年後まででは、クルマはほとんどがレベル1-3でしょう。
今後さまざまなディスカッションに参加していきます。

 

−−−先日、戦略的パートナーシップを締結した内装などを得意とするフォーレセアとの開発進捗は?

自動運転の技術と共に内装も変わっていくと考えられますが、今後のことはまだ何もわかりません。もしかすると、後ろを向いて会話するかも知れませんし、PCやタブレット操作したり見ているかも知れません。また、内装に関しての自由度が上がれば、内装、座席、ルーフも、エアバッグもシートベルトも変わってくる可能性もあります。このようなことから自動車メーカーと話を進めています。

−−−TRW買収後のシナジー効果は現れていますか?

開発レベルでの実例は開発車両に実現しているものをご覧いただけると思います。また、セールスへの効果も現れています。これまでの強いお客さんにクロスセールスして広げているのが最初の効果とも言えます。

 

−−−他のメガサプライヤー、コンチネンタルやボッシュとの違い、ZFの強みは何でしょうか?

強固な基礎を持っていることが強みです。見る、考える、動くを包括的に開発できるのが他よりも強いと思っています。

 

−−−協業する他社の中には技術や得意分野でオーバーラップする部分があるかと思います。それらの被っている部分はどのように区別して協業していくのでしょうか?

きちんと分析してやっています。どのパートナー企業と、どういう分野で、どういう協業をやっていくのかはきちんと細かく、戦略を作った上でパートナーシップを結んでいます。そして、2015年へのVISIONを実現するための道筋もきちんと細かく戦略的にできているのです。

* * * * * *

100年に一度の変革と言われる現在の自動車業界において、矢継ぎ早のパートナーシップ、提携、買収などを発表するZF。インタビューを終え、ますます変革の早さを実感すると共に、将来が見えていないからこそのVISIONの必要性を感じます。

今後、まだ大きな動きが見えない日本のサプライヤーにも水面下では動き始めているのでしょうか? 「将来像を描く」ことと「綿密な戦略」なしには100年目の変革に付いていけないのでは、と強く感じました。

<Peter Lake経歴>
1978 Lucas–CAV社、Lucas-Girling社、Lucas社にてプロダクトマーケティ ングをプロダクトプランニングディレクター
1996~1998年 ルーカスヴァリティ社にて様々なマネジメントポジションを歴任
1999年 ルーカスヴァリティ(LucasVarity)オートモーティブ社プロダクトプランニング&マーケティング担当VP
2002~2004年 TRWオートモーティブ社セールス&ビジネスデベロップメント担当役員に就任
2015年5月 ZF TRW社セールス&ビジネスデベロップメント担当EVPに就任
2015年10月 ZF フリードリヒスハーフェン AG 取締役に就任 ZF TRW社

(clicccar編集長 小林 和久)

この記事の著者

小林和久 近影

小林和久

子供の頃から自動車に興味を持ち、それを作る側になりたくて工学部に進み、某自動車部品メーカへの就職を決めかけていたのに広い視野で車が見られなくなりそうだと思い辞退。他業界へ就職するも、働き出すと出身学部や理系や文系など関係ないと思い、出版社である三栄書房へ。
その後、硬め柔らかめ色々な自動車雑誌を(たらい回しに?)経たおかげで、広く(浅く?)車の知識が身に付くことに。2010年12月のクリッカー「創刊」より編集長を務めた。大きい、小さい、速い、遅いなど極端な車がホントは好き。
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