日産・ノートe-POWERの「ワンペダル」ドライブの魅力と秘密とは?

慣れれば「アクセルだけで運転できる」のが「e POWER Drive」のウリで、とくに減速に気をつかって設計されているそう。

アクセルコントロールが得意であれば、アクセルで減速度をコントロールが可能。ただし、急な割り込み車両などでアクセルを離してしまった場合、「減速を時間的に早く」するようにされています。

また、最後に止まる瞬間に「カックン」と急停止するのではなく、自然に止まれるように気をつかって設計したとのこと。具体的には、ドライバーが注意しながら「カックン」ブレーキにならないように停止できたように、ノートe-POWERでもキレイに止まれるように時間を費やしたとのこと。

ただし、平坦路であれば、トルクをゼロにすることで「路面と釣り合って」止まることが可能になりますが、登り坂、下り坂ではそうはいきません。登り勾配の場合、後ろに下がる力が働くため、モータートルクをプラス側に補正して止まるように制御されています。

逆に、下り坂の際は、モータートルクを出すことでマイナス側に補正されています。モータートルクと道路勾配の「力の釣り合い」を取ることで車速がゼロのところまで減速(制御)できるようになっています。

また、モーターと路面の釣り合いで「止まっているだけ」であるため、ユーザーには「しっかりとブレーキを踏んでください」と、注意を呼びかけているとのこと。

平坦路であれば、摩擦力よりも押す力が大きくなければ動きませんが、勾配がつけば動いてしまいます。そこで、モーターインバーターの高速かつ安定した制御性を活用し、逆側にトルクをかけているのがポイントで、これによるちょっとした坂(3〜4%)程度であれば、減速、停止までいけるそうです。

なお、これ以上の勾配でも技術的には可能としながらも、ドライバーの過信やモーターの熱問題なども生じる可能性も懸念されることから採用は回避されています。

もちろん、EBD(電子制御ブレーキシステム)があればすぐにホールドさせることが可能ですが、ノートe-POWERはメカニカルなブレーキ(リヤはドラム)であるため現時点では難しくなっています。

また、モーターだけで減速度を出そうとすると、低ミュー路などで滑りやすくなるという懸念が出てきます。そこで、ノートe-POWERでは、モーターインバーターの制御性を使い、スリップを抑制する制御が入っているそうです。

低ミュー路でスラロームする動画を見ましたが、スリップの制御がないと2本おきでしかスラロームができていませんでした(スリップ制御アリだと1本おき)。こうした制御がないとスリップしてしまい「横に働く力」が出にくくなってしまいます。

私もノートe-POWERで氷上、雪上を走らせる機会がありましたが、FFであっても非常に走らせやすいのが印象的で、減速度を強くするだけでなく、運転のしやすさにも配慮されて設計(制御)されているそうです。

(文/塚田勝弘 写真/小林和久)

この記事の著者

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塚田勝弘

1997年3月 ステーションワゴン誌『アクティブビークル』、ミニバン専門誌『ミニバンFREX』の各編集部で編集に携わる。主にワゴン、ミニバン、SUVなどの新車記事を担当。2003年1月『ゲットナビ』編集部の乗り物記事担当。
車、カー用品、自転車などを担当。2005年4月独立し、フリーライター、エディターとして活動中。一般誌、自動車誌、WEB媒体などでミニバン、SUVの新車記事、ミニバンやSUVを使った「楽しみ方の提案」などの取材、執筆、編集を行っている。
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