新マシンの負荷はジェット戦闘機なみ!? ドライビング、トレーニングはどう変わったのか?【F1速報×F1女子~バーレーンGP号~】

■序盤戦で見えた3つのキーポイント

今シーズンのF1も早いもので3戦が終わりました。少しずつ見えてきた新時代のF1の「カタチ」。そこで本誌では気になる3つのキーポイント(メルセデスvsフェラーリ、ドライビング、マクラーレン・ホンダ)を検証しているのですが、中でも興味深かったのがドライビングについてです。

新レギュレーションの導入でマシンのスピードやドライバーの体にかかる負荷も上がり、体力的に厳しくなるのではないかと言われていた今シーズンのマシン。

ダウンフォースが強化された結果、制動距離がさらに短くなり、ドライビングも変ったようです。例えば、昨年まではメルボルンのターン1の130m手前でブレーキングを始め、最大減速Gは4.5G、ブレーキングペダルの踏力は135kgだったのに対し、今年は100m手前か、あるいはもう少し先でブレーキを踏み、減速Gは6.5G、ペダル踏力は160kgまで上がったのだそう。

ピレリF1ディレクター、マリオ・イゾラはドライバーにかかる負荷について説明しています。

「16年型マシンの最大Gは約5Gだった。今年はそれが7Gに近づいたので、負荷は50%近く増えたことになる。ジェット戦闘機のパイロットの体には約9Gがかかると言われているが、彼らには耐Gスーツが与えられていることが多く、むしろF1ドライバーより楽かもしれない。」

3戦が終わったドライバー達は、新しいマシンについてどのように感じているのでしょうか。

「今年のマシンは、僕がF1に来た時期のものに近い。テストで初めてBMWザウバーに乗った時はほんの何周かしただけで、もう完全に疲れ切っていた。『これで全開で走らせるなんて、僕には絶対ムリだ!』と思ったよ。それでもすぐに慣れたけどね。今年の新車はとても気に入っている。限界までハードに攻められるし、簡単には乗りこなせないから、それだけドライビングが楽しいんだ。」(セバスチャン・ベッテル)

「昨年まではブレーキ、タイヤ、バッテリー、燃料とあらゆるものを温存して走る必要があった。あれはもうレースではなく『エコラン』だ。今年はもっと攻めたドライビングができる。」(フェルナンド・アロンソ)

ベテランドライバーの二人は新しいマシンを楽しんでいるようですが、ロマン・グロージャン選手(ハース)は、ワイドになったタイヤがミスが増える原因になっていると言っています。

「マシンが横方向へ流れ始めると、急激にグリップを失う傾向が強い。そうなると、スピン、あるいはクラッシュは避けられない。」

様々な意見がある中、いたって冷静なのがルイス・ハミルトン選手(メルセデス)。

「昨年のマシンも今年のマシンも、ドライビングに関してはそれほど大きな違いがあるとは思えないよ。」

また、体への負荷が増えたため、ドライバー達へは高い体力レベルも要求されていたのだそうです。新マシンに備え、一体どのようなトレーニングをしてきたのでしょうか。

「主に上体と首の強化を目指した。どのドライバーも、ざっと2~3kgは筋肉量が増えていると思う。」(ザウバーのフィジオ、ヨーゼフ・レベラー)

「単純にトレーニングの回数を2倍に増やした。」(マックス・フェルスタッペン選手)

「鉛のウエイトを取りつけたヘルメットを被ってカートに乗った。」(カルロス・サインツJr選手)

「頭にウエイトをつけて首の筋肉を鍛えた。」(ニコ・ヒュルケンベルク選手、ロマン・グロージャン選手)

そして、残念ながら努力が裏目に出てしまったのがフォースインディアのエステバン・オコン選手。

オフシーズンのハードトレーニングをこなし、5kg近く筋肉量を増やして気合十分!だったにもかかわらず、なんとマシンが重量オーバー気味という理由で、開幕前にチームから減量を命じられてしまったのだそうです。可哀そうなオコン選手……。その努力はいつかきっと報われるはず!

普段の私たちの生活からは到底想像できない程の負荷を受けながら、約1時間30分もレースをしているだなんて、ドライビングテクニックはもちろんですが日々のハードトレーニングがあるからこそ、できることですよね。

やっぱりF1ドライバーって凄い! そしてかっこいい!! 改めて尊敬です。

次戦ロシアGPは(4月30日)はソチ冬季オリンピックのメイン会場を利用した、ソチ・オートドロームサーキットで行われます。王者メルセデスは好調フェラーリの勢いをとめることができるのでしょうか。「F1速報ロシアGP号」の表紙を飾るのは一体どのドライバーになるのか、今から楽しみです!!

(yuri)

この記事の著者

yuri 近影

yuri

2006年のF1日本GPを観に行ってから、どっぷりF1&ジェンソン・バトンにはまってしまったF1女子。F1が大好きですが、車の運転は下手(小林編集長お墨付き)、メカニズムも苦手、だけどドライバーの知識と愛だけは自信あり! もっと気軽にF1を楽しんでもらいたい、好きになってもらいたいという気持ちで執筆活動をしています。
趣味はバトンの追っかけと、F1海外観戦。現在は新米ママとして子育てに奮闘しながら、のんびり記事を更新中。あたたかーい目で見守っていただけると嬉しいです。
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