クルマの「色」は飾りじゃない! オートカラーアウォードが日本車を変える

1年間に発売された新車のカラーデザインを評価・表彰する「オートカラーアウォード」。今回、マツダ・ロードスターがグランプリを受賞したこの制度の狙いはどこにあるのか? さっそく選考委員に話を聞きました。

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[語る人]
一般社団法人日本流行色協会
カラートレンドストラテジー
クリエイティブディレクター
オートカラーアウォード選考委員
大澤かほる 氏

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── まずこの制度を設けた経緯からお聞きします

「本協会には、もともとメーカーのカラーデザイナーによる自動車色彩研究の分科会がありました。その中で、クルマのデザインはカタチが優先されるけど、ボディカラーも影響が大きい筈だ、もっとカラーデザインのことを知ってもらうべきだ、という声が挙があがったのです」

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── 1998年、いまから19年前ですね

「当時私がこの分科会の担当をしていて、企画を立てました。いまは横浜美術館が会場ですが、初回は平河町の松屋サロンが表彰式会場でしたね。当初は実車ではなく、メーカーから借りた塗板(パネル)で審査をしていたんです」

── 歴代受賞車で印象に残っているクルマは?

「まず、第2回のトヨタ・ヴィッツ。ピンク色の量産車が街中を走ったのはたぶん日本が初で、非常にエポックメイキングでした。しかも、子供っぽくない、大人のピンクがよかった。それから第5回の日産マーチは、オレンジなど当時のトレンドにぶつけてきた。チームが通ったカフェの食器から、野菜や果物のイメージで統一した発想も斬新でした」

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── マーチは同型で3度もグランプリを受賞していますが、日産には特別な運動があったのでしょうか

「はい。ゴーン体制になって新しいクルマが次々に作られる中で、カラーデザイン部も非常に意識が高くなっていたようです。第10回受賞の「サクラ」というピンクは、ヴィッツと違ってより女性を前面に出しだ色でした。そうした時代の変化をしっかり読んでいたと思いますね」

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── 日本と海外とではカラーデザインに違いはあると思いますか?

「日本はまずカタチが先で、色と別々に考えているようなチグハグさを感じます。色や内装は後回しという点で近年の建築の状況とも近いですね。色は本質じゃないという発想は、元をたどれば日本の美術教育に原因があるのかもしれません」

── この賞が日本車に与えた影響はあると感じていますか?

「はい。まず、他社のプレゼンを聞くのは刺激になるし、若手デザイナーの教育にもなっているようです。これほどの舞台で商品説明をする機会は稀少ですから。また、家電など異業種デザイナーとの交流もあるほか、学生が参加することでカラーデザイナー職への入口にもなっています」

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── 今回はマツダ・ロードスターがグランプリでした。いちばんの評価点は?

「カタチと色が一体となっていた。マツダを象徴するロータリーエンジンの断面を思わせる、粒子の細かい鏡のようなグレーはそのままロードスターを表現するカラーたり得ていました。また、こうしたミラー調の金属色は建築も含めてトレンドでもあるんです」

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── イメージカラーを作るなど、最近のマツダのトライをどう思いますか?

「新世代カラーの赤に対し、その対抗を青や黄ではなくマシンのようなグレーにしたのは非常に興味深い。本来、カラーは理屈ではなく「抽象思考」するべきで、より上位概念に置くべきものなんです。それをマツダは実践している。これが本来のカラーデザインのあるべき形ではないかと思いますね」

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── 最後に。今後のカラーデザインに期待するものは?

「売れる売れないではない発想です。単に色数を増やすのではなく、そのクルマだからこその色を探し出してしっかり絞り込む。その他はカスタマイズで対応すると。そういうモノ作りの熱を期待します」

── なるほど。本日はありがとうございました。

(すぎもとたかよし)

この記事の著者

すぎもと たかよし 近影

すぎもと たかよし

東京都下の某大学に勤務する「サラリーマン自動車ライター」。大学では美術科で日本画を専攻、車も最初から興味を持ったのは中身よりもとにかくデザイン。自動車メディアではデザインの記事が少ない、じゃあ自分で書いてしまおうと、いつの間にかライターに。
現役サラリーマンとして、ユーザー目線のニュートラルな視点が身上。「デザインは好き嫌いの前に質の問題がある」がモットー。空いた時間は社会人バンドでドラムを叩き、そして美味しい珈琲を探して旅に。愛車は真っ赤ないすゞFFジェミニ・イルムシャー。
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