2016 F1最終戦アブダビGPで、悲願の初ワールドチャンピオンを獲得したニコ・ロズベルグ選手(メルセデス)。その興奮からまだ冷めやらぬ5日後、「今季限りでF1から引退する」という衝撃発表で世界中のF1ファンのみならず関係者、そして他のドライバーまでも驚かせました。
ロズベルグ選手は、1982年のF1ワールドチャンピオン、ケケ・ロズベルグを父に持つ2世ドライバー。2006年ウィリアムズでF1デビューし、2010年メルセデスに移籍しました。
現在の短髪なロズベルグ選手も素敵ですが、デビュー当初はサラサラのブロンドヘアーで「F1界のレオナルド・ディカプリオ」と言われるなど、まるでおとぎの国の王子様そのもの! この甘いフェイスに心を奪われたF1女子はたくさんおり、男性のみならず女性からも人気のあるトップドライバーなんです。
メルセデスでは、ミハエル・シューマッハやルイス・ハミルトン選手といったトップドライバーをチームメイトに持ち、さぞやプレッシャーも大きかったことでしょう。
2014年からメルセデスのマシンは他のチームを圧倒する速さになりましたが、惜しくも2年ともハミルトン選手にかなわず、ワールドチャンピオンまでの道のりは非常に長く困難なものでした。
そんなロズベルグ選手ですが、2016年シーズンは開幕から4連勝と好調な滑り出しを見せ、早くもハミルトン選手との差を43ポイントまで広げました。そしてチャンピオンシップ争いは最終戦アブダビGPまでもつれこみます。
ポールポジションを獲得したハミルトン選手とは12ポイント差で、ハミルトン選手が逆転勝利するには優勝が絶対条件で、なおかつロズベルグ選手が4位以下で終わらないといけないという、ロズベルグ選手が圧倒的に有利な状態でレースはスタートしました。
ハミルトン選手1位、ロズベルグ選手2位のまま進んでいった最終スティント、とんでもない出来事が起こりました。
なんと、ハミルトン選手がわざとペースを落として、ロズベルグ選手を後続とのバトルに巻き込まれるようにしたのです。ハミルトン選手の戦略通り、後続のマシンがどんどんロズベルグ選手に近づいてきます。まさに手に汗握る状態。こんなに長く感じた最終スティントは今まで見たことがないかも!?
しかし、トップから3.5秒の間に4位までのマシンがいるという状況が続くなか、ロズベルグ選手は2位を見事に守りきり、F1参戦から11年、ようやく初のワールドチャンピオンを獲得しました!
チェッカーフラッグ後、ホームストレートでドーナツターンを披露し喜びを爆発させたロズベルグ選手。ポディウムでは涙を浮かべ、チームのガレージに戻るとすぐに奥さんの元へ駆け付けたロズベルグ選手の姿は今でも鮮明に覚えています。
ロズベルグ選手は引退について、
「25年間レースをしてきて、F1世界チャンピオンになることは僕の『一つの』夢だった。ハードワーク、痛み、犠牲を通して、これが僕の目標だった。 そして今、それを達成した。僕は自分自身の山を登ってきて、頂上にいる。この決断は正しいと感じている。」
「今シーズン、僕が言えるのは、本当にタフだったんだ。過去2年間の失望の後、すべての領域で狂ったようにプッシュし、僕はこれまで経験したことがないレベルへ自分のモチベーションを上げていった。もちろん、それは僕が愛する人たちにも影響を与えた。それは家族全体を犠牲にして努力し、僕たちの目標の背後にはすべてを置いてきた。」
「今は、ただ、この瞬間を楽しむだけだ。この数週間はシーズンを振り返りながら、やってくるあらゆる経験を楽しみ、味わう時間だ。その後、僕の人生の次のコーナーへ向かい、僕のために何があるのか見てみたい。」
と発表しています。
今後についての発表はまだしておらず、違うカテゴリーのレースに出るのか、それともレース界からも完全に引退し家族との時間を大切に過ごすのか……来シーズンはワールドチャンピオンとしてどのようなパフォーマンスを見せてくれるのか、そしてハミルトン選手とのチームメイトバトルも楽しみにしていただけに、この突然の発表が残念で仕方ありません。現在31歳。F1ドライバーとしては少し早すぎる引退です。
ロズベルグ選手の引退で、急遽シートに空きが出た2014年から2年連続コンストラクターズチャンピオンを獲得しているメルセデス。一番のライバルになるであろう、ハミルトン選手のチームメイトは一体誰の手に!? こちらも気になるところですね。
(yuri)