あれっ? ロードスターって本当はドリフト向きだった?【D1GP】

ひょっとして……ドリフト界ではマイナー車だけど戦闘力は高いのでは?

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ドリフト競技はほとんどFR車で行われます。で、日本が誇るFRスポーツカーといえば、ロードスターも挙げられますが、ドリフト界ではあまり人気がありません。

S2000なんかもそうなんですが、まずノンターボだということが理由のひとつ。パワーを上げることが難しいんですね。

まぁ、ほかにも理由はあるかもしれませんが、そんな感じで、これまでもD1GPにはロードスターはいませんでした。

しかし、岩井照宜選手が、地元・広島愛が高じてついにロードスターをD1GPにデビューさせたのです。岩井選手といえば、かつてはKP61スターレットや、ダイハツ・シャルマンでD1に出ていた変わり者です。

ロードスターのエンジンではパワーに限界があるので、2ローターターボに換装されています。ロードスターといえば前後ダブルウィッシュボーンという高性能なサスペンション形式ですが、なんといってもKP61より短いという超ショートホイールベース。

そもそもD1GPマシンでの実績なんてありません。プライベート参戦で、けっして開発力が高いとはいえない岩井選手も手探りでマシン製作をしてきたのでした。

昨年の最終戦でデビューしたときは、まだあぶなっかしい走りで、最下位の得点で予選敗退。

ところが、今季の開幕戦ではあっさりと予選通過を果たします。パワーが要求される第2戦の富士はダメでしたが、筑波サーキットでの第3戦、第4戦は絶好調。なんと第4戦では単走優勝までしてしまったのです。

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さらに8月にエビスサーキットで行われた第5戦、第6戦でも毎回安定した高得点を獲得し、連日追走トーナメントに進出してポイントをゲット。ついにシリーズ8位にまで上がってきてしまいました!

この間、岩井選手の感触はかならずしもいいものではありませんでした。車両の動きはなかなか思い通りにならないそうです。

筑波のときには「浅めの角度でならコントロールできるけど、ある角度を超えると、勝手に角度がついちゃってコントロールがきかなくなる」とのことでした。

ちょうど筑波は、浅めの角度で審査コーナーに飛び込んでくるため、前半はコントロールがきく領域。そしてホイールベースが短く、軽量なこともあって振り返しは得意。最後のヘアピンは、コーナーにカントがついていることもあって、ちょうど“勝手についちゃう角度”のまま回っていくことができたそうです。

そしてエビスのときには「飛び出しをがんばっちゃうとコントロールを失ってどうしようもなくなるので、そこは捨てるしかない」というのが当初のコメント。ところが、それでも簡単に98点台後半という高得点を連発しました。飛び出し直後の最高速は、ほかの上位のクルマとくらべてだいぶ遅いにもかかわらずです。

データを見ると、ロードスターはずんぐりむっくりしているからわかりづらいだけで、けっこうドリフトの角度がついているようなんです。しかも、意外と角度の安定性が高い。そして、角度がついているにもかかわらずコーナリングスピードが高い。

上にも書きましたが、軽量かつショートホイールベースなので、振り出しや振り返しは得意です。結果ロードスターは“見た目にはよくわからないけど、じつは走りのレベルは高い”ということが判明しました。足りないのはパワーくらいのもんです。

「追走では上位に入れないじゃないか」というひともいるかもしれませんが、それはたぶん岩井選手の経験不足です。

だって、これまであまり追走やってきてないから。追走に強いクルマなのかどうかはわかりませんが、ドライバーがスキルアップすれば、もっと上位に入ってくる可能性はじゅうぶんあります。

もちろん、このロードスターはエンジンが載せ換えられているだけでなく、大幅な仕様変更を受けています。だからノーマルのロードスターがドリフトに向いているとは断言できません。

とはいえ、本来FRスポーツカーとして作られたロードスターは、あんがいドリフトでもその能力を発揮するのかもしれません。コンパクトで見た目の派手さがアピールしづらいので、これまで人間の審査でドリフト競技をやっていたときにはマイナー車種に甘んじていましたが、D1GPに機械審査が導入されて、その素性のよさが証明されたという可能性もあります。

競技に使うには大幅な仕様変更が必要ですが、グリップの低いタイヤを履いて練習するには、けっこういい車種だということもありえます。

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ただね、岩井選手のロードスターって、初代のNA6CEなんですよね。さすがに古いでしょ!

いまのロードスターはもう4代目になってますから。まぁ、岩井選手は予算の少ないプライベーターなのでしかたがないのですが、これだけ活躍しているのだから、次は岩井選手が現行ND型を投入できるようにサポートしてくれるスポンサーが現れることを期待したいです。

なお、8月5、6日にエビスサーキットで開催されたD1GP第5戦は齋藤太吾選手が、翌日に行われたD1GP第6戦は村山悌啓選手が優勝しました。第6戦の結果、齋藤選手の2016年シリーズチャンピオン獲得が決まっています。

D1GP第5戦の模様は9月26日発売の『ビデオオプションvol.271』に、第6戦の模様は10月26日発売の『ビデオオプションvol.272』に収録予定。

ビデオオプションの情報はこちらへどうぞ。また、D1グランプリの詳しい情報は、D1公式サイトでどうぞ。

(まめ蔵・写真提供:サンプロス)

この記事の著者

まめ蔵 近影

まめ蔵

東京都下の農村(現在は住宅地に変わった)で生まれ育ったフリーライター。昭和40年代中盤生まれで『機動戦士ガンダム』、『キャプテン翼』ブームのまっただ中にいた世代にあたる。趣味はランニング、水泳、サッカー観戦、バイク。
好きな酒はビール(夏場)、日本酒(秋~春)、ワイン(洋食時)など。苦手な食べ物はほとんどなく、ゲテモノ以外はなんでもいける。所有する乗り物は普通乗用車、大型自動二輪車、原付二種バイク、シティサイクル、一輪車。得意ジャンルは、D1(ドリフト)、チューニングパーツ、極端な機械、サッカー、海外の動画、北多摩の文化など。
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