1989年に登場したロードスターは、絶滅寸前と言われた「ライトウェイトスポーツ」を復活させた。ロードスターの成功を横目に見た他のメーカーから似たコンセプトのモデルも登場したが、長続きせずに消えていった。そう、ロードスターはライトウェイトスポーツの「象徴」であると同時に「孤高の存在」でもあった。ロードスターは「スポーツカー文化の成熟は、継続させることが大事」と、四半世紀に渡り進化・熟成を図ってきた。
そして2015年、4代目NDが登場。ロードスターの「人馬一体」、「ライトウェイトスポーツ」と言うコンセプトの原点に着目し、全てを刷新。物作り革新と言われる「スカイアクティブテクノロジー」をフル活用したNDは、登場以降世界で高い評価を受け、「2015-2016 日本カー・オブ・ザ・イヤー」、「2016ワールド・カー・オブ・ザ・イヤー&ワールド・カー・デザイン・オブ・ザ・イヤー」などはじめとする数々の賞を受賞。
そんな4代目NDは様々なグレードが用意されている。ロードスターのヘリテージを踏襲した「S」、マツダ新世代商品の一員にふさわしい「Sスペシャル」、よりスポーツ性を引き上げた「RS」、そしてサンデーレースまで視野にいれた「NR-A」だ。マツダは「単なる装備違いのグレードではなく『ロードスターファミリー』です。どれがいい/悪いと言った優劣ではなく、各々のロードスターライフに合わせて最適な仕様を選択できるようにしています」と語っている。実際に、自動車雑誌のインプレションを見ると、各ジャーナリストのベストが様々なのは、ロードスターに何を求めるか…の違い。グレードの多さは「多くの人にスポーツカーの楽しさを味わってほしい」と願うマツダの想いでもある。
そんなNDに新たなファミリーが登場した。それがニューヨークショー2016で世界初公開された電動ルーフ仕様の「ロードスターRF」だ。先代(NC)にも電動ルーフ仕様はラインナップされていたが、ロードスターRFは、ソフトトップ仕様とは異なるファストバックスタイルが特徴となっている。ズバリRFの意味は「リトラクタブル・ファストバック」。
チーフデザイナーの中山雅さんは、「NDはボディサイズが小さくなっているので、NCのようにルーフを全て収納させるのはハードルが高い。色々と悩みましたが、主査の山本(修弘)が『我々の目的はルーフを収納することではなく、オープンの気持ち良さのため。だったら、ルーフを全て収納しなくてもいいじゃないか』と。そのしがらみが消えた瞬間、頭の中にパッと浮かんだのがファストバックのデザインでした」と語る。ボディサイズはソフトトップ仕様と比べると全高が5mm高くなったのみ。トランク容量もソフトトップ仕様と同じ130Lを確保されている。
車内のスイッチを押すとファストバック形状のリアルーフが持ち上がり、フロントルーフとミドルルーフが絶妙に二つに折れながら収納される。オープン時はバックウィンドウも開くため、フルオープンに近い解放感も全く損なわれていないそうだ。世界最短レベルの開閉時間や10km/h未満であれば走行中でも開閉操作も可能となっているそうだ。
ちなみに日本仕様のパワートレインは北米向け同様に2L+6MT/6ATの組み合わせとなるもよう。
フットワーク系はロードスターRF独自の仕様で、サスペンションや電動パワステのセットアップはロードスターの本質的な部分はそのままに、快適性や質感をより高めたセットアップになっていると言う。更にルーフの内側には吸音タイプのヘッドライナー、リアホイールハウスに遮音材を追加するなど、静粛性などにもこだわっているそうだ。
ソフトトップ仕様のロードスターとリトラクタブル・ファストバック仕様のロードスターRF。どちらが正統ではなく、「ライトウェイトオープンスポーツの世界の広がりや深みを持たせる」と言う観点から見れば、どちらも正解と言えないだろうか?
(山本シンヤ)