目的は「もっといいクルマづくり」!? トヨタはどうして従業員による5大陸走破プロジェクトを行うのか【PR】

トヨタは、従業員自らハンドルを握って自社のクルマで世界5大陸を走破するプロジェクト「TOYOTA 5大陸走破」を進めています。2014年は72日間をかけて41名のトヨタ社員がのべ13台のトヨタ車で約20000キロを走ってオーストラリア大陸を走破。続く2015年は計109日間をかけてのべ140名のスタッフがあわせて23車種で冬のアラスカを含む北米大陸を約28000キロ走った。すべて同社の従業員によるチーム編成で、参加者は技術系、事務系問わず部署もバラバラなのだという。

20160311TGR_008

果たしていま、トヨタが従業員のチームで異国の地を走る理由は一体どこにあるのか? プロジェクトに深くかかわっている同社実験企画統括室主査の杉田憲彦氏とモータースポーツマーケティング部TGR企画室の柳澤俊介氏の言葉をヒントに、その目的を探ってみよう。

5大陸ロゴ

このプロジェクトの興味深いところは、特に課題が与えられているわけではないこと。終了後にレポート提出が求められる程度。そのかわりに、「頭を空っぽにしてドライブに集中できる環境」が与えられているというわけだ。

「アウトプット(成果や反映)は何があるのか?」
プランニングや運営上の責任者としてプロジェクトをまとめる杉田氏は、最初にプロジェクトの概要を聞いたときに抱いた印象をそう教えてくれた。

当たり前のことだが、輸出する車種はその開発段階において主な仕向け地で長距離を走る現地テスト走行をおこなう。だから実験担当のスタッフとしては、「すでにその専門スタッフが走っているので、いまさら市販車で走ったところで新しい発見はないだろう」と考えたのは当然のことである。

_DS_1215_fin

「自動車会社の社員であってもクルマがあまり好きではない人や自分がクルマを好きだというピュアな気持ちを忘れてしまいがちな人もいる。何もかも忘れてクルマで走ることによってクルマを好きになろう。もう一回クルマが好きだということ思い出してほしい。」いっぽうで、企画立案側に立つ柳澤氏はその狙いをこう考えていたとか。

「モータースポーツだって当初の目的は道を知りクルマを鍛えるためにあった。自分自身でハンドルを握りで日本とは違う環境の道を走ることで(豊田章男社長が提唱する)『いいクルマ作り』のヒントを見つけることができるのではないか?」と。

P1050426

たとえばオーストラリアを走った車両は、ランドクルーザー70、ランドクルーザー200、ランドクルーザープラド、ハイラックス、86、カムリ、カローラ、そしてプリウスなど。すべての車種が連なって同じコースを辿るのではなく、道路環境が整った地域ではセダンやスポーツカー、荒野ではランクル系を中心に走行した。

「実は、苦労したのは道の選定なのです。オーストラリアでも普通に走ってしまえば高速道路みたいな場所だけで面白くない。どこを走ればオーストラリアらしさを味わえるか? いかにオーストラリアならではの走行環境を実現できるか工夫しました。凄いデンジャラスな場所だと安全上の話もあるし。安全と兆戦の上手いバランスでコースを設定しました。」と杉田氏は言う。

20160311TGR_052

オーストラリアでランクルが多かったのには理由がある。それはアウトバックと呼ばれる自然が険しい地域にいくとラフロードばかりで乗用車系では厳しいこと。そしてオーストラリアではランクルの人気が高いことである。現地のクルマ環境により近づき、現地の人の気持ちを探るには、現地で人気の高い車種を選ぶのが近道というわけだ。

この記事の著者

工藤貴宏 近影

工藤貴宏

1976年長野県生まれ。自動車雑誌編集部や編集プロダクションを経てフリーの自動車ライターとして独立。新車紹介、使い勝手やバイヤーズガイドを中心に雑誌やWEBに執筆している。現在の愛車はルノー・ルーテシアR.S.トロフィーとディーゼルエンジンのマツダCX-5。
AJAJ(日本自動車ジャーナリスト協会)会員。
続きを見る
閉じる