レクサスLXの5.7L V8(377ps/534Nm)には及びませんが、ランドクルーザーの4.6L V8(318ps/460Nm)でも十分に大排気量NAエンジンらしい魅力が味わえます。
6ATにとどまるトランスミッションなど、基本設計の新しい最新モデルと比べると、数字上は見劣りする点もありますが、2.7tに迫る車両重量(ZXグレード)でも低回転域から十分なトルク感が得られます。さらに、そのまま滑らかに回っていくパワーは、まさにギッシリと詰まった感じで、加速フィールも上質そのもの。
高速域の巡航時もスムーズな加速、そして6段ATもとくに大きな不満を抱かせません。一方でカタログ燃費は、重量級とはいえ6.7〜6.9km/L。こうしたパワートレーンの長所と短所が出ていますが、今後のランドクルーザーがダウンサイジングターボ化されるか、プラドのようにクリーンディーゼルを積むのか興味深いところ。
乗り心地で意外に感じたのは、路面状態を問わずややヒョコヒョコとした乗り味で、オフロード系とはいえ洗練度はもう少し。ただし、試乗車が285/50R20というタイヤサイズで、AX系の18インチ、GX系の17インチならもう少し穏やかなものになっているかもしれません。
「ZX」には、5つの走行モードを選べる「ドライブモードセレクト」が標準装備されていますが、こちらはダンパーの減衰力を調整するもので、パワートレーンだけでなく、エアコンなどとも制御されています。
「SPORT S」、「SPORT S+」ではアクセルレスポンスが高まるほか、「S+」では足まわりも引き締まりますが、20インチタイヤということもあり、上屋とシャーシのバランスがもう少しで、長時間使う気にはなりませんでした。
また、4輪アクティブ・ハイト・コントロール・サスペンション、アダプティブ・バリアブル・サスペンション・システムの「4-Wheel AHC&AVS」の効果を試すようなシーンは残念ながらありませんでしたが、本格的なオフロード走行を指向するのでなく、雪道程度なら装備しなくても問題ないはず。
ほかには、ブレーキ制御付のレーダークルーズコントロールの採用も朗報ですが、こちらは完全停止まで作動する全車速域対応ではなく、約50〜100km/hというものでやや物足りなく感じます。
本来の真価を発揮するオフロード性能に盤石の構えをしつつ、オンロードの快適性も追求したランドクルーザー。やや厳しい燃費や、中途半端なレーダークルーズコントロールの件など、細かな突っ込み所もありますが、走りの面では王者の風格は感じさせるものになっています。
(文/塚田勝弘 写真/佐藤靖彦)
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