「惑星ソラリス」という旧ソ連のSF映画をご存じですか?
未来都市の風景の表現として、東京の首都高を走るクルマからの映像がそのまま使われている場面があります。首都高って、独特の曲がりくねったレイアウトとか、高架のジャンクションの感じとか、なんかサイバーな感じがして萌えますよね。
ただ、その「惑星ソラリス」も40年以上前に公開された作品。今から10年後には首都高の30%以上(110km)の区間が、経過年数50年を超えるのです。しかも、首都高を通行する車両は、増加しつづけているそうです。
もちろん首都高ではさまざまな点検・補修を行っています。日常点検、定期点検、臨時点検を行って、損傷やその予兆をいちはやく把握するわけなんですが、その技術がなかなかスゴい。もちろん、人による目視はいつの時代も重要ですが、鋼材の内部に進展する亀裂を効率的に発見する超音波探傷装置や、機械足場が設置できない場所でも8mの高さまで「たたき点検」が可能な簡易型高所用打音検査システムなどを駆使して、異状を検知するわけです。そしてそれらの点検結果は損傷状況によってランクづけされ、保全情報管理システム「MEMTIS」に記録され、一元管理されます。それをもとに効率的な点検・補修作業ができるわけです。
それでも老朽化と過酷な使用状況により、損傷の発生や進行は増えるばかりだそうです。海に近いエリアでは重大な損傷も見つかってきています。
そこで、首都高速道路株式会社は、首都高の更新計画を発表しました。重大な損傷がある約8kmの区間は、新たに道路を造り替える「大規模更新」を、また55kmの区間においては構造物全体の大規模な補修を行う「大規模修繕」をする計画です。大規模更新をする区間は、もちろん同じものをまた作るわけではありません。疲労損傷が起こりにくく、維持管理もやりやすい構造に作りかえるのです。それにより更新後の耐用年数は100年を想定しているということなので、なんともロマンがあるではありませんか!
とはいえ、大規模更新、大規模修繕には財源が必要です。首都高をはじめとした高速道路は「道路整備特別措置法」のもと、料金収入で建設した際の借金を2050年までに完済し無料化することになっています。また料金収入は日常的な維持管理の費用と借金返済にあてることなっているため、それを更新の費用には充てられないんです。
そこで、現在の計画では有料期間を最大で15年延長(2065年まで)して、それを財源として充てようということになっています。当面料金の値上げなどは行わずに済みそうです。
われわれドライバーは、渋滞緩和や利便性向上のために新しい路線の伸長にばかり関心がいきがちですが、維持管理も非常に重要な課題なんですね。
■首都高速道路の更新計画
http://www.shutoko.co.jp/company/enterprise/road/plan/
(まめ蔵)