金を集めるデンソーのバイオ燃料の搾りかす【CEATEC JAPAN 2013】

名前の通り、電装パーツを中心に大手サプライヤーとして知られるデンソーは、2013年初めてCEATEC JAPAN(2013年10月1日~5日・幕張メッセ)に出展しました。

IT・エレクトロニクスショーらしく、EVなどの電動車両と家をつなげたエネルギーマネジメントシステム、スマートフォン用ワイヤレスチャージャー、車載用のプラズマクラスターイオン発生器、スマートフォンとカーナビゲーションをつなげるアプリ「NaviCon」に、スマートフォン用の対応アプリをクルマの中でも安全に使えるサービス「ARPEGGiO」などを展示しています。

その展示の中で異彩を放っていたのが、「バイオ燃料を利用した貴金属のリサイクル」です。

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二酸化炭素排出量の削減と再生可能エネルギーの実現という2つの大きなテーマを持つバイオ燃料について、デンソーでは微細藻の「シュードコリシスチス」を人工池で増殖させ、光合成によって体内に溜め込まれたオイルを搾り取ることでバイオ燃料を生み出すことに成功しています。

このバイオ燃料、オイルを蓄積するのには、ストレスを与えることがきっかけになるといいます。少々かわいそうになりますが、ストレス=養分を与えない、ということなのだそう。

ちなみに、現状では「シュードコリシスチス」により産み出されるバイオ燃料のコストは化石燃料の10倍以上になるといいます。ただし、藻の改良、培養スケールの拡大などコストダウンへ向けた研究も進めているということです。

ところで、オイルを溜め込んだ「シュードコリシスチス」からオイルを搾り取るのですが、当然ながら搾りかすが発生します。

従来は、搾りかすを肥料や複合建材などに利用していたそうですが、さらなる利用の可能性が出てきたということが、今回のアピールポイントです。

なんと、搾りかすの処理を施すことで、金の吸着剤に変身するというのです。

携帯電話の基板などからレアメタルを回収するというリサイクルは広く知られているところですが、この搾りかすを使った吸着剤を使うと、金(きん)を集めやすくなるというのです。

あとは、金を吸着した元・搾りかすを 燃焼させれば、金だけを回収できるというわけ。しかも、この吸着剤はもともと植物ですから燃やしたとしてもカーボンニュートラルなので二酸化炭素の排出量を気にすることはないというのもメリットといいます。

太陽光による光合成という再生可能エネルギーによって生まれるバイオ燃料、その搾りかすを活用してレアメタルの回収コストを下げるという、まさに一粒で二度おいしいといえるプロジェクト。その実用化に期待です。

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(山本晋也)

この記事の著者

山本晋也 近影

山本晋也

日産スカイラインGT-Rやホンダ・ドリームCB750FOURと同じ年に誕生。20世紀に自動車メディア界に飛び込み、2010年代後半からは自動車コラムニストとして活動しています。モビリティの未来に興味津々ですが、昔から「歴史は繰り返す」というように過去と未来をつなぐ視点から自動車業界を俯瞰的に見ることを意識しています。
個人ブログ『クルマのミライ NEWS』でも情報発信中。2019年に大型二輪免許を取得、リターンライダーとして二輪の魅力を再発見している日々です。
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