世界120か国以上で販売され、「2012年において世界で最も売れた乗用車」という称号を手にして本邦に上陸した新型フォード・FOCUS。日本では、ほかの国では上級グレードにあたる「Sport(スポーツ)」のみという1グレード体系になっています。
同一車種でもユーザーの裾野を広げるため、廉価/普及/上級仕様などといったグレード展開により装備を変えて価格差をつけるのが一般的で、日本のフォードでもほかの車種では複数のグレードを用意しています。
しかし、フォルクスワーゲン・ゴルフやボルボV40、メルセデス・ベンツAクラスなどといった強力なライバルがひしめくCセグメントにあって、FOCUSは「Sport」のみを提供することで、商品力、ブランド力を高く保つ戦略を取っているのでしょう。
さらにいえば、1グレード体系ということは、同一モデル内で「ヒエラルキーが存在しない」ことを意味していますから、「お、あれは●●だけど、安いグレードだな!」とクルマ好きならではの視線に晒されることもない!?
好調な販売が続くボルボV40でいえば、V40の中でもエンジンを複数用意し、素のグレードからスポーツバージョンまでグレードを複数展開するだけでなく、派生モデルのV40クロスカントリーも用意することで幅広いユーザーの獲得を狙っています。
新型にスイッチしたフォルクスワーゲン・ゴルフも同様で、複数グレードだけでなく、今後はワゴンのヴァリアントやスポーツ仕様のGTIも導入されるはず。当然ながらグレードによる性能、装備、価格差が存在します。
一方のフォード・FOCUSは、1グレードのみですから装備は最初から充実しています。エクステリアでは、ジェットウォッシュ付HIDヘッドランプ、オートライト&雨滴感知式フロントワイパーなど、インテリア/操作系では、クルーズコントロールやスマートキーレスエントリーシステム、ハーフレザーシートなど、「全部のせ」といえる満載ぶり。
「Euro NCAP」で最高の5つ星を獲得するなど、安全装備も最先端を走っています。フロントウインドウに取り付けられたレーダーセンサーが前方約6mの範囲を監視し、渋滞時や低速走行時に前方車両への衝突を回避するため自動的にブレーキをかける「アクティブ・シティ・ストップ」を搭載。車両間の相対速度差が15km/h未満の場合は、追突を回避し、15~30km/hでは追突時のダメージを軽減する安全装備です。
こうした目に見える分かりやすい装備だけでなく、目に見えにくい部分にも徹底したこだわりが貫かれています。
「アクティブグリルシャッター」はその一例で、フロントグリルを通過してエンジンルームや冷却系に至る気流を開閉式ベントによって制御するシステム。モーター駆動で90°回転するフィンのようなベント構造になっていて、車両ECUによって完全遮断から全開まで16段階の間で自動制御されます。
その効果は、エンジン冷却が必要ならベントを開き、必要でない時はベントを閉じることで空気抵抗を大幅に低減させることができます。さらに、エンジン暖気時間の短縮も可能になり、燃費改善と排ガス低減にも貢献しています。こうした目に見えないこだわりを徹底的に貫いているのもFOCUSの魅力といえるでしょう。
フォード・FOCUSの強みをおさらいすると、キネティック・デザインコンセプトによるダイナミックなスタリング、NA直噴エンジンとツインクラッチ「PowerShift」による自然でスポーティな加速性能。そして、歴代FOCUSが受け継いできたリニアなハンドリングと大きく3つを挙げることができます。いずれも熾烈な競争下にあるCセグメントのなかでも、キラリと光る個性であることは間違いありません。
FOCUSはグローバルモデルでありながら、日本ではモノグレード展開という思い切った戦略で万人受けを狙わず、クルマ好きやステアリングを握ることがなによりも好きな人たちに向けたモデルであることが伝わってきます。
■フォード・ジャパン・リミテッド
■フォード FOCUS特集
https://clicccar.com/ford_focus/
(塚田勝弘)