5月9日に1ドル100円を突破、5月17日には一時103円まで下落するなど、現在も円安が進行し続けています。
円安が自動業界にもたらすメリットは日本から輸出した自動車を海外の顧客が円高の時よりも安く買えることになり、結果的に販売台数が伸びる点。
メイドインジャパンの代表格である「日本車」は品質の高さで定評が有るので、同クラスの現地競合車よりも安くなれば海外で競争力が増します。
では実際のところ、自動車各社の輸出は増えているのでしょうか?
ホンダや日産は海外生産比率が75~76%台と非常に高い為、ここでは国内生産比率が高い3社(トヨタ:40%、マツダ:71%、スバル:75%)に焦点を絞って輸出状況を見てみましょう。
日本自動車工業会が公開しているデータを元に2008年1月~2013年3月までの乗用車 輸出実績を「見える化」してみました。
円安が加速し始めたグラフ右端の2013年1-3月の所を見ると、確かに国内生産のうち輸出分が約80%を占めるマツダが伸びている事が判ります。
とは言え、輸出ボリュームが国内生産の50~60%台のトヨタやスバルの場合は特に顕著に伸びているようには見受けられません。
ちなみにトヨタの2013年1-3月の米国販売は約53万台(前年同期比+8,7%)、スバルは約9.2万台(同+14.8%)と好調に推移中。
米国やASEAN諸国などの旺盛な新車需要に応える為、トヨタは先日、2015年夏に北米向けの「レクサスES350」の生産を日本から米国へ移すと発表。
スバルも販売が好調な米国の新車供給力増強の為、2016年度を目処に年間生産能力を約40%増の約37万台に引き上げる模様。
マツダは2013年度中に稼動予定のメキシコ新工場の年間生産能力をトヨタからの小型車委託生産も踏まえて当初の14万台から20万台以上に引き上げる予定と言います。
これは円安が加速する中、収益上有利な日本からの輸出量を維持しつつも、将来の為替変動リスクを減らす為に現地生産体制の拡充を急いでいる為と思われます。
つまり、自動車各社は円安化が進んだからといって、海外へ移した生産拠点を再び日本に戻すなどといった対応をとるのでは無くむしろその逆で、販売が好調なこの時期に海外生産体制を増強することで「為替に左右されない企業体質強化」を目指しているのです。
従って、これまでの円高対応で現地生産化を進めて来た自動車産業では円安時の輸出の伸び代にさほど大きな変化が現れないという訳です。
以上のように今後も為替変動に備えて、ニーズが有る場所で生産を行なう「地産地消」が進んで行くものと思われます。
■日本自動車工業会 Webサイト
http://www.jama.or.jp/
〔関連記事〕
・円安なのに日本の自動車大手が米国で現地生産を増強する訳とは?
https://clicccar.com/2013/05/23/220602/
・トヨタがTPPや為替変動への対応でレクサス生産を北米へ !
https://clicccar.com/2013/04/21/218265/
・「円安」が日本の自動車業界に与える影響はこんなに大きい !
https://clicccar.com/2013/04/15/217831/
【画像ギャラリーをご覧になりたい方はこちら】 https://clicccar.com/?p=221752