今となっては、日本がアメリカと戦争をしていたという事実を知らない若者も多いと聞きます。
悲惨な戦争は2度とやってはいけないし、戦争にならない努力をしなければいけないと思います。
そんな戦争を知るきっかけとなるのに戦時中のものを保管して見せるのはとても重要なことと感じます。
それも、動くものを動くカタチで保存できれば、説得力も増すはずです。
今回、零式艦上戦闘機(通称、零戦)五二型が所沢航空記念公園でエンジン始動とタクシング(飛行機が自力で飛ばずに動くこと)が一部報道陣と一般応募で当選した人に披露されました。
機体はスバルの富士重工の前身である中島飛行機製とのこと。エンジンは空冷星型14気筒の「栄」。こちらは設計から中島飛行機製です。零戦は三菱重工で設計されましたが、その2/3くらいは中島飛行機で製造されたようです。
1943年製で、1944年にサイパンで米軍に無傷の状態で捕獲され、1957年にPLANES OF FAME(アメリカの航空博物館)が引き取り、飛行可能な状態で保存されている世界で唯一の零戦だそうです。
マニアック情報としては、エンジン下部の空気取り入れ口に境目があるのが中島製なんだそうです。
ちなみに、栄は星型エンジンですが、自動車では現実的にあり得ない気筒配置。その動きは以下のようになります。
最初の動画で、エンジン始動前に、「ヒューン」という音が聞こえると思います。これはイナーシャの音なんだそうです。
イナーシャはいわゆるはずみ車。運動エネルギーを重さのある円盤を回転させることで貯めておくものです。このエネルギーでプロペラシャフト(クルマと違ってホントにプロペラを回すシャフトですね)を回してエンジンをかけるんです。当時もセルモーターは存在し、試作段階等ではセルの装着も考えられていたそうですが、軽量化等の理由でしょう、手動となったそうです。
この機体では、電動でイナーシャを回すように改造されているんだそうですが、今回はイナーシャ単体をボランティア・スタッフにより回していただきその様子を見ることができました。
マニアなので慣れているはずなのに、息切れするほどの重労働。それを回すモーターやバッテリーを搭載するのがどれほどの重量増になるか想像できます。戦闘機の速さが乗員や国の存亡に関ることを考えていた当時としては当然の選択だったのかも知れません。環境のために思いバッテリーを積んでいる「地球に優しいクルマ」が本当か?と訴えている気もします。
実は、私はこの飛行機が飛んでいる様子を20年くらい前に見ました。
頭の上をプロペラ機が飛んでくるのは、尋常じゃない恐怖を感じました。もし、こんな機械に命を狙われたらひとたまりもないな、と。
前出のボランティアスタッフが「日本の戦争関連の展示は、悲惨さを伝えるため壊れたままのものが多いが、動態でキチンと保管するのも必要だと思います」と仰ってた気持ちがよくわかりました。人が人を殺すための道具を作ることへの抵抗感を、リアルに実感することができるのですから。
零戦の展示は好評に付き2013年8月末日まで延期となったそうです。興味ある方はぜひ、お出掛け下さい。
http://www.parks.or.jp/tokorozawa-kokuu/
(小林和久)