カンボジアに初の自動車メーカーが誕生か!?

カンボジアに自動車メーカーが出来るという衝撃的なニュースが入りました。

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 カンボジアは現在のところ、自動車製造としての自動車産業は全く無い状態で自動車需要のほとんどを輸入に頼っています。内訳は日本車80%、韓国車15%、イギリス車2%という状況で圧倒的に日本車のシェアが高いようです。

そんな中、今年の1月8日にカンボジアの首都、プノンペンで発表されたこのクルマ、Heng Development Company(以下HD社)アンコールカーはカンボジアで初めて量産を目指して作られたコンセプトカー。

HD社はホテルやレストラン、不動産事業を行うカンボジアでも有数の大企業グループ。自動車やトラクターのディーラー及び修理工場などの部門も有しています。

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そのHD社の首脳陣が日本に来日しているとのことで、早速お話を伺うべくタイトな訪日スケジュールのの貴重なお時間をいただいてインタビューをさせていただきました。

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まずお話を伺ったのはHD社の社長、Oknha SEANG CHANHENGさん。

-今回の訪日の目的を教えて下さい。

「わたし達の作り出すアンコールカーは1月8日の発表で、カンボジア国内だけで実に30万件の問い合わせを受けました。その他ヨーロッパやアジア諸国からも多くの問い合わせをいただき、その関心の高さに、私たち自身も驚いています。そして、このアンコールカーを量産するにあたり、日本の皆様に力を貸していただけないものかと考えて訪日いたしました」

-カンボジア周辺には自動車技術を持った国、タイやマレーシアなどがありますし、韓国でも自動車製造は盛んに行われていますが、その中からなぜ日本に注目なさったのですか?

「カンボジアの自動車シェアは日本車が圧倒的多数を占めています。その他の日本製品もカンボジアでは非常に高く信頼されており、その日本との間で技術協力を交わすことにより、素晴らしい自動車が作り上げられるものと信じております」

-今まで自動車製造に関してどういった歩みを行っていたのでしょうか。

「今回のアンコールカーは4作目となります。これまでに出した3台のコンセプトカーは全てエンジン車でしたがこのアンコールカーは電気自動車のとなります。詳しくは技術者のNhean Phaloekから説明があります」

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こちらがアンコールカーを設計しほとんど手作りでまとめ上げた技術者のNhean Phaloekさん。自動車修理部門の責任者で、修理などからノウハウを蓄積しコンセプトカーを作り上げてしまったという猛者。

-アンコールカーの特徴を教えて下さい。

「アンコールカーは電気自動車です。各家庭に送電される200V電源(カンボジアは家庭用商用電力が単相200V)で充電し、最高速度60km/hと航続距離300kmという性能です。キーは無く、ドアの開閉とシステムの起動は全て指紋認証で行います」

-とんでもなく高性能なハイテク電気自動車ですが、おいくらで販売する予定なのでしょうか。

「米ドルで5000ドル程度でカンボジア国内販売をしたいと考えております。ただし、その予算に見合ったバッテリーやモーターなどを製造するためのノウハウがカンボジア国内にはありません。そこで日本の技術をカンボジアに提供していただきたいと考えています」

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-コンセプトカーに使われている技術はどちらのものなのでしょうか。

「ボディーワークはカンボジアで行いました。今回のアンコールカーはファイバー樹脂製で、デザインはわたしが行いました。指紋認証の装置は香港から取り寄せましたが、プログラムや最適化はすべてカンボジアで行っています。その他のモーターやバッテリーも香港から調達していますが、やはり日本のものが優れていると感じています」

-このアンコールカーの量産が実現した場合、輸出は考えているのでしょうか。

「カンボジアでは自動車の需要に対して供給が見合っていませんし、輸入車はカンボジア国内では非常に高額なものとなります。誇り高いカンボジア国民がカンボジア国産車に非常に高い関心を示していることは、アンコールカーの発表の際に肌で感じていますので、当面は国内販売のみで考えています」

お話を伺って感じるのは、日本の技術がカンボジアでは非常に高く評価されている点。彼らが必要としている技術はバッテリーやモーター以外にも急速充電設備や安全装備など非常に多岐に渡るのですが、それらの全てを持っていて価格性能比に優れている国は日本だけだ、とNhean Phaloekさんが語っていたのが印象的でした。

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Nhean Phaloekさんのカンボジア国産車を実現させたいという心意気は本物ですし、HD社もその取り組みに社運をかけているからこその訪日ということです。

新しいビジネスチャンスを得る絶好の機会に、我こそはと思う企業の参画を期待します。

 

(文・人物写真:北森涼介 車両写真提供:Heng Development Company)

 

 

この記事の著者

松永 和浩 近影

松永 和浩

1966年丙午生まれ。東京都出身。大学では教育学部なのに電機関連会社で電気工事の現場監督や電気自動車用充電インフラの開発などを担当する会社員から紆余曲折を経て、自動車メディアでライターやフォトグラファーとして活動することになって現在に至ります。
3年に2台のペースで中古車を買い替える中古車マニア。中古車をいかに安く手に入れ、手間をかけずに長く乗るかということばかり考えています。
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