米国IIHS(道路安全保険協会)が12月20日、新評価「スモール・オーバーラップ衝突」試験の結果を公開。各自動車メーカーに大きな衝撃を与えています。
IIHSはオフセット前面衝突テストに従来より厳しい「微小ラップ衝突」形態を導入。これは相手車両や立木、電柱といった障害物と衝突した際の事故状況を再現して、時速40マイル(64km/h)でフロント部分の運転席側1/4(25%)をバリア(頑丈な壁)に衝突させるもの。
前面衝突による死亡事故のうち、「微小ラップ衝突」に起因するものついては従来の衝突試験だけではカバーできず、搭乗者の死亡事故撲滅に繋がっていない点に着目。実際の事故形態に沿って新たに試験項目を追加したという経緯のようです。
この「微小ラップ衝突」テストが厳しいのは、強大な衝突エネルギーを受け止める役割を持つ車両の左右フロントサイドメンバよりも外側に入力が入るため、Aピラー下部で入力を受け止める形となってキャビンの変形量が増大するからです。
判り易く言えば従来の衝突試験形態に対応したボディ構造の「スキ」を突いた意地悪テスト。ダミーが受けた傷害レベルに応じてGOOD(優)、ACCEPTABLE(良)、MARGINAL(可)、POOR(不可)の4段階で評価。 評価結果は以下となります。
G:Volvo S60、Acura TL、アコード2013(4ドア)、スズキ キザシ
A:VW パサート、Infiniti G、アコード2013(2ドア)、日産アルティマ、スバルレガシィ、起亜オプティマ
M:Acura TSX、VW CC、VW JETTA、BMW3、リンカーン MKZ、ヒュンダイ ソナタ
P:メルセデス Cクラス、Audi A4、レクサス ES・IS、カムリ、プリウスv
▽G評価の衝突映像
・Acura TL
・スズキ キザシ
動画をよく見ると、損傷が少なく評価が高い車両は衝突後にバリアから遠ざかって行く様子が確認できます。つまり衝突エネルギーをAピラー下部で丸ごと受けるのでは無く、上手く「かわして」いるように見えます。
但しホンダ アコードについては衝突時にAピラー根元にバリアが食い込んでいるにも拘わらず好成績。そのワケはAcura TLで採用されたと言うホットプレス材が奏功している可能性も。
・ホンダ アコード2013(4ドア)
ホットプレス材は鋼板を加熱、水冷された金型で成形しながら焼き入れすることで強度を高めた鋼板で、加熱した材料を成形する為、形状の自由度が高く、また焼き入れによって強度が1500MPa以上になり、通常の高張力鋼板に比べて大幅に強度が高いのが特徴。
一方、ホンダやスズキが高評価なのに比べてメルセデス、アウディやトヨタ車の低評価が目立ちます。
▽P評価の衝突映像
・メルセデス・ベンツ Cクラス
・トヨタカムリ
・トヨタ Prius v(α)
これらのクルマはやはり衝突時にバリアがピラー下部に当たって引っ掛かり、かわせない為に車両が回転、キャビンの変形が増大している様子が見てとれます。
対策としてはアコードのようにピラー下部の強度を上げるか、もしくはバリアにピラー下部が引っ掛からないようにするかの何れかでしょう。
今回のテスト結果公開で恐らく各自動車メーカーはかなりショックを受けたに違い有りません。
長年積み重ねて来た定評を損なわない為にも早急な対応が求められそうです。
■IIHS公式HP
http://www.iihs.org/default.aspx
■各車のIIHS衝突テスト結果検索
http://www.iihs.org/ratings/default.aspx
■IIHS スモール・オーバーラップ評価解説
http://www.iihs.org/ratings/frontal_test_info.html
■IIHS Status Report
http://www.iihs.org/externaldata/srdata/docs/sr4706.pdf
【写真ギャラリーをご覧になりたい方はこちら】https://clicccar.com/?p=208698