今話題の「クルマのダウンサイジング」ってなんだ

ここ数年、新車のニュースで「ダウンサイジング」という言葉が登場する機会が増えてきています。
もともとは、車格はそのままに排気量を減らしたエンジンにすることをダウンサイジングと呼んでいました。排気量を下げた分をターボなどの過給器によってカバーするので、ダウンサイジングと過給はセットというのが、とくに欧州でのトレンドで、このところ北米市場でも増えてきています。
そして、もうひとつマーケットのある傾向を「ダウンサイジング」と表すこともあります。こちらは車格そのものをランクダウンするユーザーのマインドを指すもので、そうしたユーザーを「ダウンサイザー」と呼んでいます。
たとえば、前者は1.5リッター級のコンパクトカーから0.8リッター過給エンジンのコンパクトカーに買い換えるときに使う「ダウンサイジング」。後者はコンパクトカーから軽自動車に買い換える「ダウンサイジング」といえましょう。
また、2リッタークラスのセダンから1.2リッター過給エンジンのコンパクトカーに買い換える「ダウンサイジングされたクルマを買うダウンサイザー」など、かなり紛らわしくなっています。
そもそも、数年前からのダウンサイジング過給トレンドのおかげで、なにが2.0リッター級なのかわからなくなっています。車名に排気量を示す数字が入っていても、それが実際のエンジン排気量とはリンクしていないことも多々あるのが現実。2.8リッターの6気筒エンジンかと思いきや、2.0リッターの4気筒ターボが搭載されていた、というケースも出ています。
車名の数字とエンジン排気量がリンクしないという点では、ハイブリッドカーもダウンサイジング的ですが、ハイブリッド・パワートレインはダウンサイジングとはわけて考えることが多いようです。

さて、ホンダの新型軽自動車「N-ONE」は、そうした「ダウンサイジング車を狙うダウンサイザー」を、ターゲットユーザーとした考慮した一台。 自然吸気0.66リッターのエンジンとCVTの統合制御を活かした味付けにより、ハーフスロットル時の加速感は1.3リッター級を実現したということです。

また発表会で、開発責任者の浅木泰明さんは「ターボ車はフィットと同等のパフォーマンスを実現しています」と、軽自動車のターボが、いわゆるダウンサイジング過給トレンドであることをアピールしていました。浅木さんも関わっていたという、ホンダの第二期F1プロジェクトでは1.5リッターターボで、3.0リッターを打ち負かした時期もあります。
つまりターボのような過給システムを上手く使えば、倍の排気量に匹敵するパフォーマンスを狙えます。こうした、ダブルのダウンサイジングであれば、加速感への期待値はそのまま に、コンパクトでコストを抑えたカーライフが送れるというわけです。

なお、ダウンサイジング過給したエンジンは、それだけで燃費改善など環境性能に優れるわけではありません。同じだけのパワーを常に出そうと思えば、ダウンサイジングしていようがいまいが、やはり燃料消費は増えてしまいます。
ダウンサイジング過給の旨みは、フルパワーを必要としていない領域でのフリクションなどの低減、過給によるEGR(排気再循環)の活用といったダウンサイジング過給のメリットを引き出す作りが重要になってくるといえましょう。
単純に、小排気量の過給エンジンであれば大排気量NAエンジンと同じだけのパワーを出しても環境性能に有利と言えない部分もあり、その点で大排気量NAエンジンのほうが環境性能に優位と考えるメーカーもあります。

いずれにしても、一筋縄では理解が難しい「クルマのダウンサイジング」。とはいえ、このトレンドは拡大するでしょうから、今後も無視できないキーワードであることは間違いなさそうです。
(山本晋也)

この記事の著者

山本晋也 近影

山本晋也

日産スカイラインGT-Rやホンダ・ドリームCB750FOURと同じ年に誕生。20世紀に自動車メディア界に飛び込み、2010年代後半からは自動車コラムニストとして活動しています。モビリティの未来に興味津々ですが、昔から「歴史は繰り返す」というように過去と未来をつなぐ視点から自動車業界を俯瞰的に見ることを意識しています。
個人ブログ『クルマのミライ NEWS』でも情報発信中。2019年に大型二輪免許を取得、リターンライダーとして二輪の魅力を再発見している日々です。
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