5月19〜20日に開催されたMEGA WEBフェスタで話題を呼んだのは、このマシン。これはモンスター田嶋こと田嶋伸博選手が今年のパイクスピークの総合優勝を狙って開発した電気自動車「Monster Sport E-RUNNER Pikes Peak Special」です。
とても電気自動車とは思えない外観ですが、カーボンコンポジットのカウリングは風洞実験を通して形作られています。
ベース車を持たないオリジナルEVマシンとなったことでキャビンを大幅に縮小し、まるで飛行機のキャノピーのような形状になりました。これによって前面投影面積は小さくなり、空気抵抗の低減が期待できますね。
コクピットは車体中央に配置されています。これは左右バランスを平均化することが目的で、実はSX4以前のパイクスマシンからすでに採用されているスタイルです。
フロントカウルの先端下部のボードは、奥に見えるラジエーターへの冷却風とモーターへの冷却風を誘導するのではないかと思われます。ラジエーターの目的はインバータ素子の冷却だと考えられますが、バッテリーの冷却なども水冷で行なっているのかもしれませんね。
フロントカウルを上から見ると冷却風のアウトレットの穴がたくさん空いているのがわかります。中央部先端の3つの開口部はおそらくラジエーター冷却風の出口だと思われますが、コクピット寄りのふたつの開口部(写真では左側だけが見えます)は位置から考えるとモーターの冷却風のアウトレットでしょうか?
フェンダー上部に空いているスリットはホイールハウスの空気を排出させてダウンフォースを向上させるたり、ブレーキの冷却を狙っていると考えられます。
フロントフェンダーの後部もえぐり取られていて、ホイールハウス内の空気を引き出すことを狙っているようです。また、フロントタイヤ付近のフロア形状スロープを組み合わせたような立体的とすることで、床下を流れる走行風の速さを変化させ、フロントのダウンフォースを高めていると考えられます。
タイヤサイズは295/40R20でサスペンション形式はダブルウィッシュボーン。
リヤには巨大なウイングが装着され、床下にはディフューザーも装備してリヤのダウンフォース獲得に努めているようです。ダブルウィッシュボーンサスペンションのアームにつながったスタビライザーがかなり太いですね。
ところでE-RUNNERのスペックなのですが、三菱重工製のモーターを2個使用していると言うこと以外のスペックは公表されていません。モンスター田嶋選手によると「パイクスピークが始まったらすべてお見せしますよ」とのことです。
E-RUNNERの目標はパイクスピークで総合優勝することですので、相当なスペックになっていると考えられ、非常に気になるところなのですが。
ちなみに、昨年のパイクスピーク優勝マシンであるモンスタースポーツSX4が搭載している3LV6DOHCツインターボエンジンは最高出力910ps、最大トルク90.5kg・mを発揮。
この910psをkW表記に換算すると約678.6kWになるらしいのですが、これを単純にモーター2個に置き換えると約340kWのモーターが必要になるということになります。新幹線「のぞみ」のモーターが305kWだということを考えると、インバータ装置やバッテリーなどの容量、システム重量はもの凄いことになりそうな気がしてしまいますが、どうやらこれは素人考えのようです。
実はパイクスピークは頂上に近づくほど空気が薄くなって、パワーは600psぐらいまで落ちてしまうらしいのです。その点モーターは標高差による影響はなく、またモーターは起動トルクが強大なので、実際にはそれほど高出力を求めなくても十分なパフォーマンスを得ることはできるという見方もあるそうです。
結論から言えば、このEVモンスターの中身を予測するのは不可能。しかし見れば見るほど凄そうなE-RUNNNER。早くその全貌を知りたいものですね。
(ぬまっち)
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