3月22日に東京新宿で開催された東日本エリアの「第6回 NEXCO東日本新メニューコンテスト」で見事にグランプリを獲得したのは、東北自動車道の長者原SA(上り)「六魂彩-みやぎの詩-」(1500円)でした。
料理は、東北の食材を使って5品を作り、最後に作り手の思いをプラス。合計6つの魂としたという料理です。
料理の5品は、「仙台黒毛和牛のサラダ仕立て」「東北厳選前菜5種」「彩り寿司 ジュレと共に」「宮城県亘理町ホッキ貝スープ」「宮城県大崎町クレームアンジェ」。
もちろんどれも素晴らしいのですが、メインの「仙台黒毛和牛のサラダ仕立て」は、お肉のコクとサラダの多彩な食感がまざりあって、おいしいだけでなくちょっと不思議な楽しさも味わえてしまいます。これは絶品ですね。
そんな料理を生み出したのは(株)グリーングリーンの五十嵐博文料理長。
なんと、このコンテストには5年連続の決勝進出。しかも過去にグランプリの経験もある凄腕。ところがグランプリの発表では、意外にも涙まじりの受賞となったのです。
過去にグランプリの経験もあるのに、不思議? と思って、さっそくお話しをお伺いしました。
まずは、「5回連続出場ですから、好結果を求められるプレッシャーがあったのでは?」とたずねてみれば、やはり意外にも「今まで一番プレッシャーがなかったんです」とのお答え。
「うちのサービスエリアは、料理場から空が見えるほど壊れるほど被害があったんですよ。そして後片付けなどをしてて、身体に菌が入ってしまって、4月の18日に倒れてしまったんです」とのこと。
なんと、ストレスからなのでしょうか、常在菌が身体の中で悪さをして、脊髄が溶けるほどの重体に陥ってしまったというのです。当然のように、五十嵐料理長さんは入院。退院して職場復帰できたのは10月。つまり半年間も闘病生活を送ることになってしまったのです。
「いつもはメニューのことだけで頭がいっぱいになるんですけれど、今回は、僕の知りあいも30人くらい亡くなっているので…。やっぱり入院していて、何もできない自分がものすごくはがゆくて。ちょっと頭がパニックになりそうだったんですよ。病院で起きることもできない。じゃあ僕は何をしたらいいんだ? と考えてて。そして自分にできることとは料理のことしか考えられなかった。それで、なんとか立てるようになったら、料理を作って、みんなに元気を与えることしか僕にはできないんだな! と、いうことを自覚させられたときだった。だから料理に対するプレッシャーというよりも、みんなになんとか力になってあげたい。人の力になりたい。そういう思いの方が強かったから」と五十嵐さん。
そのために、過去の実績からのプレッシャーはまったく感じなかったというのです。
そんな料理長の強い思いが伝わったのか、「料理の味は勿論のこと、長者原SAの料理人だけでなく、ホールスタッフの力と料理の力の一体感を感じた」と審査委員の陳氏が評するほどでした。
グランプリ獲得の裏には、そんな熱い思いがあったというわけなんですね。
(鈴木ケンイチ)