前6輪がステアするお年寄りや子供が出かけたくなる8輪バス【オートモーティブワールド2012】

第3回EV・HEV駆動システム技術展で、とても楽しげなバスを見つけたのでリポートします。

この展示会は、“オートモーティブワールド2012”という大きな展示会の一部で、他にはこのショーの元になった第4回国際カーエレクトロニクス技術展(通称:カーエレJAPAN)、第2回クルマの軽量化技術展があります。元々は一つの展示会だったのですが、カーエレJAPANから毎年スピンオフさせているため、開催回数が異なります。

さてこのバスです。車体中央にまとめられた小さい車輪のため、見た目は4軸ボギーの路面電車といった感じ(4軸ボギーなんてないですけど)です。黄色ボディの角が丸められているため、とてもかわいらしくて親しみを感じるデザインになっています。車名はMAYU。名前もかわいい。

このバスを製作したのは、群馬県に本拠がある(株)シンクトゥギャザーという会社で、代表は元スバルの車体設計エンジニアだった宗村さんという方。そのためか、ワンオフのプロトタイプとは思えない完成度で、細部もちゃんと作り込まれています。

科学技術振興機構社会技術研究開発センター研究プログラム、「地域に根ざした脱温暖化・環境共生社会」研究開発領域における蓄電方地域交通タスクフォースにおいて基本設計を行ったそうです。これからナンバーを取得して公道を走らせたいとのこと。灯火類なども保安基準に適合するよう初めから備わっているので、いつでもナンバーが取れそうな感じです。

宗村さんは、群馬大学内の次世代EV研究会の中にある3つの分科会の内の1つ、“車両を考える会”の会長もなさっています。

運転台に座る宗村さん。実用化される日を楽しみにしています。

機構面はどうなっているのでしょう。

エジソンパワー製リチウムポリマー電池(セルは韓国KOKAM社製)と屋根に装着した、井川遥のCMでおなじみのソーラーフロンティア製太陽電池パネル(発電容量140Whパネル×4枚)がエネルギー源。太陽電池からのパワーは、走行時にはバッテリーの補助に、停車時にはバッテリーへの充電に使われます。でもさすがにソーラーだけでは満充電にならないので、通常充電は100VACで行います。100%放電状態から満充電までの所要時間は8時間。満充電での走行距離は、最高速度である19km/hで走行した場合約40kmだそうです。

屋根にはソーラーパネルが備わる。

100V充電コネクタはリアのステップに備わる。左に4つ並んでいるのは、各軸のブレーカー。

電動機は、三相交流同期モーターが全輪に組み込まれています。車輪部分は、先にあったTT1という原動機付き4輪自転車トラックのものをベースに、モーターの出力特性を変えたり、ダブルスプリングにしたりとモディファイしています。

こちらが元になったTT1の車輪。

この8輪は最後軸だけが固定で、前3軸がステアするのですが、それぞれの切れ角が異なります。ステア時は、4軸から垂直に線を延ばした先が一点に収束するような切れ角になります。

この角度から見ると軸ごとに異なる切れ角が見えるます。

乗ってみると更に楽しげ。

普通の大人が楽々立って歩けるほど高い天井と大きな窓で開放感がたっぷり。木製のベンチが公園の日向ぼっこ感覚だし、それが対面している(いわゆるロングシート)ので会話もはずみそう。宗村さん曰く、対面した時の膝間隔にこだわったんだそうです。ちょうど良い距離感が得られるために。また、木製のためおしりが滑りやすいので、誰かが乗ってきた時や降りた時に、すっと詰めることができます。モケット素材や、最近の電車で増え始めている一人分ずつ凹んでいるシートだとこうはいきません。

こんな感じのいい距離感で楽しく会話も弾む。

サスペンションが柔らかいため、乗り込もうとして足をかけると、車体がぐいと傾くので、何となくニーリング(ノンステップバスのドア開時に車体が左に傾く機構のこと)感覚があり、このため人に優しい乗り物の雰囲気を出しています。

とにかく、ボディデザインといい、車内の雰囲気といい、実に欲しい乗り物です。特に地方でこれが走るととてもいいと思います。

出かけるのがおっくうなお年寄りも、これを見ればなんだか乗りたくなるでしょう。

一日に数本しかバスがこないなんていう場所でこれを数多く走らせたら、出かける回数が増えて活性化するかもしれません。

一緒に見ていた人が、「移動販売車にもいいのでは?」と言っていましたが、それもいい。

実用化されれば、きっとお年寄りもその孫世代も楽しめる乗り物になるでしょう。

おじいちゃんも孫と一緒にお出かけトゥギャザーしようゼ!と。

種別: バス
車名: MAYU
車両全長: 4,400mm
車両全幅: 1,850mm
車両全高: 2,425mm
車両全量: 1,050kg
乗車定員: 10人
最高速度: 30km
一充電走行距離: 約40km ※19km / hで走行の場合
電動機種類: 三相交流同期モーター
電池種類: リチウムポリマー電池
一般充電 / 電圧(h / v): 8h / AC100V
急速充電 / 電圧(分): –
車両本体価格(円) ※税抜き価格: –
補助金上限額(円): –

(Autanacar)