開発担当エンジニアが自ら語るプリウスαの「売り」とは?

5月13日の発売以降、受注状況が好調に推移している プリウス α ですが、4月末時点で2万5000台の予約受注が有り、その後 1万4000台増えて 22日時点で 3万9000台に達したそうです。 月間販売目標台数 3000台の13倍に当たると言いますからかなりの人気と言って間違いないでしょう。

さて、そんな人気の プリウス α ですが、このクルマを開発したエンジニアはどんな人で、どんな目標を持って開発に取り組んだのか気になりますよね。

 

http://www.youtube.com/watch?v=gKL-TCzQfnw

今回 プリウスαの車両開発を纏めたのは若手精鋭の粥川主査。

愛知県出身で 1984年にトヨタ自動車に入社。 大学では機械工学を専攻。 クルマが大好きだったのと、トヨタから大学へ採用活動に来た先輩から 「トヨタの技術部に入れば世界中のクルマが乗り放題だぞ!」 と誘われたのが入社のきっかけだったと言います。(笑)

初代 Lexus や スープラなど、様々なクルマのボディ設計を担当。 粥川氏曰く、クルマを開発する上で一番大切なことはやはり 「クルマが好きだ」ということ。 開発途上で発生する様々な課題を克服できたのは 「自分が欲しいクルマを自分の手で作りたいという気持ちが強かったから」 とのこと。

                                       

開発主査になる前はボディ設計一筋で、その間に経験した小型軽量車 ES3(イーエスキュービック)や  i-unit の開発経験なども プリウス α の開発時に大いに役立ったそうです。しかも今回採用した プラットフォームもボディ設計時代に自身が担当したもので勝手知ったる何とやら。

プリウス α  は ミニバンやステーションワゴンなどの居住性や使い勝手はそのままに、低燃費でしかも手の届く価格という実用性の高い環境車を目指して開発をしてきたそうですが、ここで氏が言う 「実用的」 というのは単に実用性だけが優れていればよいという意味では無く、 「実用性のために、格好良さを犠牲にしてはいけない」というのが念頭に有ったようです。

粥川氏は若かりし頃に、当時のデザイン部長から 「理に適っているものは美しい」 という事を叩き込まれたそうです。 「変にこねくり回して作ったデザインというのは最初は美しく見えてもすぐに飽きてしまう」 という意味なのですが、 プリウス α の美しい トライアングルシルエットはそうした事に留意した結果でき上がったものとか。

なるほど・・ 確かにワゴン臭さを殆ど感じさせない所などはその表れなのでしょう。

大人がきちんと乗れ、必要十分なスペースを持ちながら、空気抵抗や走行抵抗が小さい車を作ろうとした時、“その大きさはどういったものがベストなのか?”を探るのが開発のポイントとなったそうで、その結果、CD値は0.29を実現。

                                       

ミニバンではスペースは大きいほどよいというニーズがある中、ミニバンとして必要十分なパッケージングを持たせつつ、“燃費”というキーワードで形を絞り込んでいったのが プリウス α なのだと言います。勿論、グローバル展開車種なので海外のユーザーも意識しているそうです。

特に重視したのが乗り心地と静寂性。振動を抑える高剛性ボディに吸音材、制振材、遮音材を最適配置。 更にばね上制振制御により路面からのピッチ挙動を低減。風切り音が少なく、社内の評価部署からも 「風切り音は高級車並みだね」と言われたそうで、ロングドライブを快適に大人数で楽しめるようになっているそうな。

因みに プリウス α  のエクステリア・デザインは評論家などから誉め殺しに合うくらい「カッコいい」と評価されているそうですよ。

いかがですか? プリウス α はこんな トヨタマンがまとめ上げた理想の 「次世代 ミニバン」というわけです。

(Avanti Yasunori )

この記事の著者

Avanti Yasunori 近影

Avanti Yasunori

大手自動車会社で人生長きに渡って自動車開発に携わった後、2011年5月から「clicccar」で新車に関する話題や速報を中心に執筆をスタート、現在に至る。幼少の頃から根っからの車好きで、免許取得後10台以上の車を乗り継ぐが、中でもソレックスキャブ搭載のヤマハ製2T‐Gエンジンを積むTA22型「セリカ 1600GTV」は、色々と手を入れていたこともあり、思い出深い一台となっている。
趣味は楽器演奏で、エレキギターやアンプ、エフェクター等の収集癖を持つ。
続きを見る
閉じる