上:ラフェスタ・ハイウェイスター 下:プレマシー
日産から6月に発売されるラフェスタ・ハイウェイスターが、すでに日産のオフィシャルサイトで公表されています。このモデルのベースがマツダ・プレマシーであることは既に多くの方がご存じのことだと思います。
「なんだ名前が違うだけか」と思いがちですが、実際に見比べてみるとかなり違うものに見えるので驚きました。ここでは、どのくらい変更してこれを実現したのかを観察してみましょう。
まずフロントですが、ボンネット、バンパー、グリルを変更することで大きく印象を変えています。ヘッドライトは変更されていないようです。
フロントでマツダの最大の特徴となるのは、バンパーから下にある大きなインテークです。グリルを低くすることで、低重心も表現。また、どこがバンパーなのかわからないような造形ですが、これによってマツダらしいフロントの一体感を表現していると思います。
対するラフェスタは、大きなバンパー部を完全に変更しています。ヘッドライトの高さから桟の太いめっきグリルとして、かっちりとした日産のミニバンらしい顔を表現。ただどうしても難しかったのが、フェンダーラインとバンパーのつながりだったようです。プレマシーではマツダ車として象徴的でもある大きなフェンダーラインをフロント部分に回り込んだところでどんと下まで落とす造形ですが、ラフェスタではバンパーラインにつなげたいので、ヘッドライト下あたりで湾曲した造形となっています。いろいろな角度から見て、できるだけ違和感を与えないようにかなり苦労した感じですね。それでも、なかなかの精悍な印象に仕上がっています。
ヘッドライトの下あたりのフェンダーフレア造形は苦労したのではないでしょうか。
もしかしたら気のせいなのですが、ボンネットも専用設計のように見えます。マツダの場合、グリル先端から始まる形として、センター部分からの放射状の流れを大切にしています。それがグリル先端のとがった感じにも表れているのですが、それと同様にボンネットセンターにかすかな折れ線として表現されたりします。プレマシーもそうした表現があるわけですが、ラフェスタの造形では関係のない形です。ちょっと気が付かないほどのラインなのですが、もし本当に変えているとしたらすごい配慮ですね。
上:ラフェスタ・ハイウェイスター 下:プレマシー
また、同様の変更はリアにも見られます。リアコンビランプを流用するなかでフロントイメージに合わせた独自の形を作り上げていますが、やはりリアゲートのセンターにあった折れ線はなくなっているようです。別のパネルを新設しているようです。
そしてすごく気になるのが、ボディサイドですよね。マツダはこのプレマシーでNAGAREコンセプトを具現化し、これまでにない水の波紋のような彫刻的な造形を作り上げました。しかしさすがにこれを日産で使うことはできず、メインのキャラクターだけを生かすことにしています。ただし、リアドアにかかってしまうラインの始点を作り上げ、見事に力感あるリアフェンダーを作ることに貢献させました。
ただ問題は、波紋のあった部分とその周囲の面処理でしょう。波紋はボディカラーによっても見え方が異なり、成型性、補修性なども配慮したうえでどんな色でも違和感のない造形を作っていますが、逆にいえば波紋を前提とした基本面でもあったのです。そこに単に波紋を埋めたシンプルな面を乗せても、バランスが取れるかといえばそうはいかないはずです。特にフロントドアが痩せた感じに見えない配慮が必要だったかもしれません。
こうして仕上がったラフェスタですが、室内ではあまり大きな違いはないようです。ただし、日産のATシフトレバーがロック解除ボタンを持ち直線的操作を基本にしていたのに対して、このラフェスタがボタン操作のないゲート式となっているのは、日産オーナーからはちょっと違う印象となるかもしれません。
上:ラフェスタ・ハイウェイスター 下:プレマシー
上:ラフェスタ・ハイウェイスター 下:プレマシー
きっと開発担当の方にとって、あの個性的なプレマシーを日産らしく仕立てるなんてお題がきたときには、衝撃を受けたに違いありません。それからの苦労は、すごく報われるものになっていると思います。すごく日産らしい1台となったと思いませんか?
(MATSUNAGA, Hironobu)