“市販車のロータス”“チームロータス”“ロータスルノーGP”の関係を極力簡単に解説します

LOTUS 2-ELEVEN

F1にそれほど詳しくない方でも、ロータスという名前はご存知でしょう。市販車ブランドとしても有名なわけで、クルマ好きにもお馴染みの名称なのだが、実は今、F1にロータスが2つ存在するという事態が発生し、なんともややこしいことになっています。チーム・ロータスがケーターハムを買収したようですが、チーム・ロータスや自動車メーカーのロータス、さらにロータス・ルノーGPというのもあって、編集長もよく知らないようなので、なるべく簡単に解説しましょう。

 

 

Team Lotus

 

そもそもロータスとは、様々な技術的アイデアで一世を風靡した総帥コリン・チャップマンが築いたもので、会社登記等の難しい話をさておけば、昔はF1に参戦しているチームロータスと、市販車部門のロータスカーズは一体のものであった。チームロータスは1958年にF1世界選手権参戦を開始し、60〜70年代にはジム・クラークやマリオ・アンドレッティらを擁して栄華を誇る。

しかし82年にチャップマンが急死すると、チームロータスは凋落の道へ。アイルトン・セナを起用したりもしたのだが、チャンピオンに返り咲くことなく、94年限りでF1撤退。通算79勝の名門の歴史が幕を閉じた。

そして昨年(2010年)、マレーシア基盤の新チームが、ロータスレーシングを名乗ってF1参戦を開始した。チャップマン家の理解を得た正統な後継チーム、のはずだった。今年、2011年からは名門の往時の正式名称であるチームロータスを襲名して、ルノーエンジンも獲得し、「成績向上を」と息巻いてもいた。

ところが、2011年シーズンに向けて、今度は“ロータスグループ”が既存のルノーF1チームをサポートすることになり、話が難解になってしまった。

既に、書いている自分も何がなんだかわからなくなりつつあるが、要はチャップマンの生前〜死後、ロータスは複雑怪奇な資本移動、資本分裂を経ており、ロータスグループ(グループロータスとも)というのは、市販車部門のロータスカーズを含むグループであり、近年はマレーシアの自動車メーカー“プロトン”が、このロータスグループを所有してきた。

しかし、歴史的な経緯のなかで、チームロータスの商標はロータスグループの手を離れており、前出のロータスレーシング(2010年新チーム)は、別のラインからチームロータスの商標使用権を得た、という構図なのだ。チャップマン家経由で得たわけではないが、“宗家”は昨シーズン中、新しいロータスレーシングを後継チームとして認知する旨を表明していたはずなのだが……。ロータスグループのルノー支援が決まると、どうもそっちにつきそうな感じになっており、事態はさらに混迷。

ちなみにどっちもマレーシア絡みだが、プロトン〜ロータスグループ〜ロータスカーズが既存のルノーチームの方についており、2010年新チームの方は、まったくの別組織。航空会社エアアジアのトニー・フェルナンデスが興したチームなのだ。で、今回ケーターハムを買ったのは、フェルナンデス率いる現在のチームロータスの方である(思惑は多々ありそうだ)。

どっちがロータスの名称をF1で正式に使えるかは現在係争中で、2011年のF1にはロータスが2つ存在してしまっている。

とはいえ、既存のルノーチームの方は、現段階ではロータスグループがメインスポンサー的な関与となっているので、一般的な呼称は従来どおりの「ルノー」で通っている。そして2010年新チームの方をロータスと呼ぶのが一般的だ。F1のチームは、昔の「マクラーレン・ホンダ」みたいに、「シャシー名・エンジン名」で表現されることが多いが、そうすると2010年新チームの方の今季の体制は「ロータス・ルノー」であり、ロータスグループが支援するルノーの方は、「ルノー・ルノー」なのだ(シャシー名とエンジン名が同じ場合は、フェラーリ同様、単独名で呼ぶのが一般的。だから「ルノー」)。

ただ、スポンサー名を冠したエントリー名で見ると、ルノーは「ロータス・ルノーGP」で、なんだよどっちもロータス・ルノーなの? なんてことになる……。

 

 

Lotus Renault GP

お分かりいただけました? ていうか、経済の不勉強ぶりを晒すようですが、私自身も完全把握が難しいとい巣うのがホンネです。とにかく、まとめると次の2点!

「市販車のロータス(ロータスグループ)が支援しているのはルノーF1チーム」

「それとは別にチームロータスというマレーシア資本の若いF1チームがあり、こっちがケーターハムを買った」

資本主義経済の悪側面ともいうべき混乱です。

え? 速いのはどっちか? 断然ルノーの方です。

(えんとし)