【スバル・フォレスター公道試乗】今のスバルが全部詰まったグローバルSUV。大人の走りを満喫できる熟成度

スバル車のグローバル販売でもっとも多くの販売台数を誇るのがSUVのフォレスターです。

今やどれだけSUVを売れるか? が自動車メーカーの命運とも言えるのでしょう。なにしろあのフェラーリですらSUVというジャンルに参入するというのですから。

アドバンス

フォレスターは、一足先にフルモデルチェンジしたインプレッサで使われたスバル・グローバル・プラットフォーム(SGP)を用いて開発されたモデルです。SGPの開発時にはもちろんフォレスターでも使うことは前提にしていたでしょうし、今どきのプラットフォームの考え方から言えば当然、さまざまな車種への展開は念頭におかれていてあたり前です。

 

今回のフォレスターの導入にあたって、スバルは6月20日に都内のイベントスペースにて発表会を開催。その後、静岡県の日本サイクルスポーツセンターのコースを使ってクローズドの試乗会を行いました。これはグローバル試乗だったため、世界中からメディアが集まっての試乗会でした。

クローズド試乗から約2ヶ月半の時が過ぎ、やっと公道での試乗となりました。

 

試乗車は2.5リットルの自然吸気4気筒エンジンを積むXブレークと、2リットル4気筒自然吸気+モーター&ジェネレーターのハイブリッド(スバルではこのシステムをeボクサーと呼びます)を搭載したアドバンスです。

Xブレークは17インチのオールシーズンタイヤを履き、撥水ファブリックのシートが装着されるなどしたアウトドア指向のモデルです。エンジンの出力は184馬力/239Nmです。

 

一方のアドバンスは、18インチのサマータイヤを履くモデルで、エンジンのスペックは145馬力/188Nm。組み合わされるモーターは13.6馬力/65Nmとなっています。

 

2.5リットルエンジンは発進から力感あふれる加速を味わえます。走行モードを切り替えることができるSIドライブをスポーティなSにして加速すれば、エンジンのトルクは余すことなく4輪に伝わり、グングン加速していきます。

かつてはターボエンジンを搭載し、スポーツカーのような走りを披露したフォレスターですが、新世代のフォレスターは荒々しい走りを卒業し、ジェントルな世界へと足を踏み入れています。それはまるで、やんちゃだった男の子が年を重ねるに従って落ち着いてくるような感覚です。

落ち着いてはいるものの見せない強さも秘めている……そんな感覚を覚えます。

もう一つのパワーユニットであるeボクサーは2リットルエンジンの非力さをモーターがアシストするものです。このハイブリッドシステムは118.4Vのリチウムイオンバッテリーを用いたシステムです。

モーターの前後にクラッチを備えるので、アシストだけでなくEV走行が可能なのが特徴的です。モーターのアシストによって一般道の走りでは2.5リットルと互角の動力性能を発揮します。

 

どちらのエンジンも指定燃料はレギュラーガソリンです。レギュラーガソリンとプレミアムガソリンは11円の価格差があることが多いので、それだけで燃費が7〜8%アップしたのと同じ効果があると言えます。

スバル車の魅力のひとつはなんと言ってもアイサイトでしょう。今でこそ自動ブレーキがあたり前の装備となっていますが、日本での先がけになったのは間違いなく、アイサイトです。そして、アイサイトを利用したアダプティブ・クルーズ・コントロールは高い性能を誇ります。

現在のものは全車速追従タイプとなっていて、車線のない場所でも先行車を追従して走るので、よりイージーなドライビングが可能です。また、車線のある場所では車線のセンターにクルマを配置するように制御しますが、従来タイプよりもその動きが上手になっていて、左右に振られるような印象がありません。レーンキープはアドバンスよりもXブレークのほうが滑らかです。これはタイヤの違いによるものでしょう。

eボクサーを採用するアドバンスにはecoクルーズコントロールというモードが追加されました。アイサイトのACCは速度が落ちた際に、設定速度に早く戻そうという傾向があり、加速が強くなってしまいがちで、それが原因で燃費が悪くなることが多かったのですが、このecoクルーズコントロールは再加速を穏やかにするなどして、燃費向上が図られています。

アドバンス

乗り心地はかなりよく、ゆったりとした印象です。ロールがよく抑えられていて、コーナリング時の安定感も非常に高いです。高速コーナーでのロール感の抑えられています。サスペション全体、アーム類もダンパーなどもフリクションの少ない印象で、動きが制限されずによく動いてくれます。

試乗は神奈川県の川崎がベースで、横浜周辺へと走らせるものだったのですが、時間があったので東京湾アクアラインを走ることができました。この日のアクアラインは横風が強く、吹き流しが真横(風速10m以上)になる状態でしたが、フォレスターはまったくその影響を受けることなく走ることができました。車高のあるSUVでしっかりした耐横風性能は非常に安心感のあるものです。

Xブレーク

新しいプラットフォーム、熟成されたAWDシステム、レギュラーガソリン対応となったエンジン、バージョン3のアイサイトツーリングアシスト、SIドライブ、ヒルディセントコントロール付きでオフロード走行をアシストするXモード、シンプルながらEV走行も可能にしているハイブリッドシステム、今回は体験する機会はなかったが顔認証によるドライバー認識からのシートポジション、ミラー位置などの自動調整……と今のスバルのすべてを手に入れることができるのが、新型フォレスターだと言えます。

(文・写真/諸星陽一)

この記事の著者

諸星陽一 近影

諸星陽一

1963年東京生まれ。23歳で自動車雑誌の編集部員となるが、その後すぐにフリーランスに転身。29歳より7年間、自費で富士フレッシュマンレース(サバンナRX-7・FC3Sクラス)に参戦。
乗って、感じて、撮って、書くことを基本に自分の意見や理想も大事にするが、読者の立場も十分に考慮した評価を行うことをモットーとする。理想の車生活は、2柱リフトのあるガレージに、ロータス時代のスーパー7かサバンナRX-7(FC3S)とPHV、シティコミューター的EVの3台を持つことだが…。
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