「自工会・豊田会長、減税はもう十分!?」日本自動車工業会 豊田章男会長の真意とは?

●自動車税減税1300億円は多いのか?少ないのか?

2019年1月7日、日本自動車工業会、日本自動車部品工業会、日本自動車車体工業会、日本自動車機械器具工業会の自動車業界4団体による毎年恒例の新春賀詞交歓会が開催されました。

冒頭、日本自動車工業会の豊田章男会長は、与党の税制改正大綱において自動車税を恒久減税することに対して、昨年末の自工会定例会長記者会見に続き、関係者に謝辞を述べると同時に「自工会、豊田会長、減税はもう十分!?」という見出しが出てきてしまいそう、という掴みで来場者の笑いを誘っていたました。その心とは?

「自動車産業は先人達が国産車を作り、大きな産業に成長し、オートバイを含めて8200万台が乗られています。また、540万人が何らかの形で自動車産業に携わっています。納税の面でも、企業、就業者、ユーザーが納める額を試算しますと、全国で約15兆円に達します。国、地方を合わせた税収全体の15%くらいになると思いますが、企業市民としての義務を果たしていけることは本当に大切なことと思っております。」

「自動車産業は、いま100年に1度の大変革期を迎えています。クルマは街とつながり、社会システムに進化していく、いわばクルマという存在自体がモデルチェンジしていこうというところです。我々は本当に踏ん張りどころにあります。平成は元年に過去最高を記録して以来、ずっと右肩下がり。それ以降、東日本大震災などのさまざまな自然災害に直面するなど、日本のモノ作りを必死に守り抜いてきたのが平成でした。
ただ、必死に守り抜いてきたモノ作りの力こそがクルマそのもののモデルチェンジを進めていく上でも、我々の原動力になり続けていくことは間違いありません。そして、そのモデルチェンジの先にあるのが人々のさらなる笑顔だと信じています。
クルマがもっと社会とつながれば、過疎化や高齢化といった日本が抱えるさまざまな悩みへの力へとなっていくはず信じています。さらに、貧困や医療など地球規模の課題にももっとお役に立てるかもしれません。日本が世界の新たなリード役になれるのであれば、自動車産業はその一翼になるべく力の限りを尽くしたいと思っています。」

「そのためにも、我々紡いできたモノ作りの力をなんとしても守らせて欲しい、我々にはその想いしかありません。もっと多くのお客様にクルマに乗っていただきたい、もちろん我々がもっと魅力的なクルマを競争し、作っていくことなしに、それはなし得ません。まずはその努力を続けます。」

「一方で、世界一高く、携帯電話の倍もある、そして複雑な税制など、クルマに乗りにくい税制は変えていきたいと考えています。今回、1300億円の減税をいただきました。これが、多いのか少ないのか。まだまだ世界一のレベルであることは変わりありません。依然として、アメリカの30倍近いレベルです。販売スタッフが簡単に説明できない複雑さも変わっていないと思います。
ぜひ、こうした改善を実現いただき、もっとクルマにお乗りいただき、自動車産業に従事する我々は、100年に1度の変革をなんとしてもチャンスに変えていく、そうさせていただければと思います。」

「もし我々がモノ作りの力を失ってしまえば、税金を払える産業でなくなってしまう危機感さえございます。一方で我々はもっとお役に立てるチャンスにあります。だからこそその努力を我々にさせて欲しい。これがもっと税金をもっと払い続けたいと申し上げた本当の想いでございます。
今まで減税、減税と言わせておいて急に何を言い出すのかと、思われた方もいらっしゃるかもしれませんが、将来にわたって日本のために、役に立っていこうというのは自動車産業の共通の想いだと思っております。」

自工会の豊田章男会長のスピーチは、日本やモノ作りへの熱い想いを吐露しながらも、他国と比べてもまだ高すぎる税金を改善してもらいたい、と一貫して変わらぬ姿勢で、時折、笑いも誘いながら来場者の耳目を集めていました。

(文/写真 塚田勝弘)

この記事の著者

塚田勝弘 近影

塚田勝弘

1997年3月 ステーションワゴン誌『アクティブビークル』、ミニバン専門誌『ミニバンFREX』の各編集部で編集に携わる。主にワゴン、ミニバン、SUVなどの新車記事を担当。2003年1月『ゲットナビ』編集部の乗り物記事担当。
車、カー用品、自転車などを担当。2005年4月独立し、フリーライター、エディターとして活動中。一般誌、自動車誌、WEB媒体などでミニバン、SUVの新車記事、ミニバンやSUVを使った「楽しみ方の提案」などの取材、執筆、編集を行っている。
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