強い心と強いタイヤとちょっとの運(?)で、TEAM TOYOTIRES DRFT藤野選手が2度目のチャンピオン獲得【D1GP TOKYO DRIFT】

■TEAM TOYOTIRES DRFT藤野選手が単走チャンピオンと総合チャンピオンの二冠達成

第10戦のベスト8で実現したTOYO対決。
第10戦のベスト8で実現したTOYO対決

お台場でのシリーズ最後の2連戦を前に、藤野選手はトップと9ポイント差のランキング5位。大混戦のチャンピオン争いの中にいました。

そして第9戦では、ランキング首位の中村選手を倒して優勝し3ポイント差まで詰め寄ると、第10戦では逆転! 単走チャンピオンと総合チャンピオンの二冠を達成しました。

藤野選手は2017年以来、2度めのシリーズチャンピオン獲得です。


●第9戦、決勝で宿敵を倒し、2位浮上!

第9戦、第10戦の舞台は東京・お台場の特設コース。TEAM TOYOTIRES DRIFTは、川畑真人選手、藤野秀之選手ともにGR86で参戦です。

まずは土曜日に第9戦が行われました。単走決勝で、藤野選手は1本目に通過確実と思われる98.71点という高得点を獲得。3位で追走進出を決めます。

1本目に失敗していた川畑選手は、2本目も思い切った走りができませんでした。
第9戦単走。1本目に失敗していた川畑選手は、2本目も思い切った走りができませんでした

一方、川畑選手は振り出しが決まらなかったり、コーナーでの安定性を欠いたりして点が伸びません。95.98点で単走敗退となってしまいました。

追走に勝ち上がった藤野選手は、ベスト16でRX-7の岩井選手を倒すと、ベスト8は目桑選手のマシントラブルで、準決勝も北岡選手のマシントラブルで勝利するという幸運な展開。決勝に進出しました。決勝の対戦相手はランキング首位の中村選手です。

中村選手は藤野選手にとって因縁の相手です。かつてD1GPの下部カテゴリー、D1ストリートリーガルに参戦していたときには5連敗。しかも、2度も決勝で初優勝を阻まれた相手でした。最近ではそれほど分は悪くないのですが、それでも負け越しています。

しかし、藤野選手の心境はいつもとは違ったようです。

「いつもイヤだったんですけど、今回なんかちょっと…なんかいつも負けて気分悪いから、ちょっとやりたいなっていう気分になったんです」と藤野選手はいいます。

決勝。藤野選手が中村選手を相手に接近ドリフトを見せます。
決勝。藤野選手が中村選手を相手に接近ドリフトを見せます

1本目は中村選手が先行。中村選手は最初の指定通過ゾーンを外し、2点減点を受けてしまいます。

それに対し、1コーナーからピッタリ寄せていった藤野選手は、S字区間で少し離されましたが、ヘアピンでまた寄せていきました。藤野選手が11.5のアドバンテージです。

そして2本目、藤野選手も指定通過ゾーンを外しそうになりましたが、絶妙なラインの修正でなんとか通過すると、その先はドリフトをまとめてみせます。中村選手は少しコースからはみ出すなどリズムを崩してきれいな追走ができませんでした。

第9戦、藤野選手はランキング首位の中村選手(右)に勝って優勝しました。
第9戦、藤野選手はランキング首位の中村選手(右)に勝って優勝しました

藤野選手の優勝です。これで藤野選手はランキング2位に浮上。首位の中村選手との差を3ポイントに縮めました。

いつもはあまり勝利に関して貪欲な発言をしない藤野選手ですが、今回は「せっかくなんでチャンピオンを獲りに行きます!」と、強気のコメントで1日目を締めくくってくれました。

●第10戦はベスト16でチャンピオン決定! そしてTOYO対決も!

そして最終戦が開催された日曜日。朝のお台場は雨でした。ウエット路面で開始した単走決勝。第1走者だった川畑選手は、1本目からレベルの高い走りをスパッと決めて追走進出を確実にします。

一方、同じグループに入っていたランキング首位の中村選手が、2本とも点が伸びず敗退となってしまいました。

2本目に走りかたを変えた藤野選手は単走優勝を果たしました。
2本目に走りかたを変えた藤野選手は単走優勝を果たしました

そして、藤野選手は最終グループでした。ウエット路面に合わせたギヤ比にセットしていた藤野選手は、すでに路面の大部分が乾いてきていたため、スピードがのせられず、1本目はボーダーラインを超える点が取れません。

ピンチに追い込まれた藤野選手ですが、思い切ってスピードを求めず、振りと角度を重視した走りに切り替えると、それが功を奏し、そこまでの最高得点をマーク。なんと単走優勝となりました。

また、単走ランキング首位にいた蕎麦切選手が失敗していたこともあり、藤野選手はこれで単走シリーズチャンピオンも決めるかたちとなりました。路面温度が低く、一部に濡れた路面が残る難しいコンディションの中でも対応できたのは、TOYOのドリフト用タイヤR888RDのおかげもあるでしょう。

そして追走トーナメント。藤野選手は1回勝てばシリーズチャンピオン決定!という状況になりました。対戦相手の茂木選手も接近ポイントを取ってきましたが、ベース点で藤野選手が大きく上まわっていたこともあり、藤野選手が勝利。シリーズチャンピオンが決まりました。

第10戦、藤野選手がチャンピオンを決めた次の対戦で、TOYO対決が見られました。
第10戦、藤野選手がチャンピオンを決めた次の対戦で、TOYO対決が見られました

川畑選手もベスト16で勝利。藤野選手と川畑選手のチームメイトがベスト8で対戦しました。ここではお互いにきれいな近いドリフトを見せましたが、わずかに藤野選手が角度や後追いポイントで上まわり勝利しました。

第10戦の決勝。藤野選手よりも松山選手(右)のスピードが上まわっていました。
第10戦の決勝。藤野選手よりも松山選手(右)のスピードが上まわっていました

藤野選手は、準決勝でもTOYO勢の松井選手を倒して2日連続での決勝進出を決めると、決勝でもまたTOYOタイヤを使う松山選手と対戦。

藤野選手も後追い時には後半にかけて寄せていきましたが、全般的なスピードでは松山選手が上まわり、松山選手の優勝となりました。

整理すると、この日の追走は、1位(松山選手)、2位(藤野選手)、3位(松井選手)と、TOYOタイヤの1-2-3フィニッシュ。また藤野選手は第9戦の単走優勝と、単走シリーズチャンピオン、そして総合チャンピオンを獲得してシーズンを終えました。

2023年のシリーズチャンピオンを獲得した藤野選手。2017年以来、二度目のタイトルです。
2023年のシリーズチャンピオンを獲得した藤野選手。2017年以来、二度目のタイトルです

藤野選手は、「シリーズチャンピオンはやっぱり1回だとマグレって言われるかもしれないんで。2回獲ってマグレではなかったことを実証できたんで、それはうれしいです。ちょっと時間かかりましたけど。まあでも時間かかって、この歳になってもまだいけるってのがわかったのはいいかもしれないですね」と満足そうでした。

また、前日は単走敗退となりましたが、最終戦ではいい走りを見せた川畑選手は、「今日も理想の走りはできなかったんですけど、楽しく走れたんでよしとします。今季はちょっと波がありましたね。ちょっと考えすぎなんですよね。やっぱり結果残さないといけないとか、とりあえず1本めは抑えてとか…。次からはあまり考えすぎないようにいきたいと思います」とのことでした。

川畑選手としては、やや好不調の波が激しいシーズンになってしまいました。
川畑選手としては、やや好不調の波が激しいシーズンになってしまいました

このふたりで計3勝を挙げた2023年シーズンも終わりましたが、また来年が楽しみです!

D1GPの情報は公式サイトをご覧ください。

(文:まめ蔵/写真提供:サンプロス、まめ蔵)

この記事の著者

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まめ蔵

東京都下の農村(現在は住宅地に変わった)で生まれ育ったフリーライター。昭和40年代中盤生まれで『機動戦士ガンダム』、『キャプテン翼』ブームのまっただ中にいた世代にあたる。趣味はランニング、水泳、サッカー観戦、バイク。
好きな酒はビール(夏場)、日本酒(秋~春)、ワイン(洋食時)など。苦手な食べ物はほとんどなく、ゲテモノ以外はなんでもいける。所有する乗り物は普通乗用車、大型自動二輪車、原付二種バイク、シティサイクル、一輪車。得意ジャンルは、D1(ドリフト)、チューニングパーツ、極端な機械、サッカー、海外の動画、北多摩の文化など。
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