新世代ホンダ・センシングで何ができる? 新型ステップワゴンで試してみた【新車リアル試乗 9-4 ホンダステップワゴン Honda SENSING実践編】

■ステップワゴンのHonda SENSINGを実践してみた

Honda SENSINGの命、フロントカメラ
Honda SENSINGの命、フロントカメラ

ステップワゴンのHonda SENSING実践編。

10を超えるHonda SENSING機能のうちの一部を試してみました。

●用いられるセンサー類

まずはおさらい。

ステップワゴンのHonda SENSINGに搭載されている機能は次のとおり。

【ステップワゴンのHonda SENSING機能】

ステップワゴンに搭載されるHonda SENSINGの機能
ステップワゴンに搭載されるHonda SENSINGの機能

1.衝突軽減ブレーキ(CMBS)
2.踏み間違い衝突軽減システム
3.歩行者事故低減ステアリング
4.渋滞追従機能付アダプティブクルーズコントロール(ACC)
5.車線維持支援システム(LKAS)
6.トラフィックジャムアシスト(渋滞運転支援機能)
7.路外逸脱抑制機能
8.先行車発進お知らせ機能
9.標識認識機能
10.オートハイビーム
11.パーキングセンサーシステム
12.ブラインドスポットインフォメーション
13.アダプティブドライビングビーム

Honda SENSING稼働に必要なセンサーは3種。

ホンダセンシングに用いられるセンサー類(フロントまわり)
ホンダセンシングに用いられるセンサー類(フロントまわり)
ホンダセンシングに用いられるセンサー類(リヤまわり)
ホンダセンシングに用いられるセンサー類(リヤまわり)

すなわちフロント側はフロントガラス中央上部に据え付けられるカメラ、フロントグリルのホンダマーク裏にあるレーダー、そしてフロントバンパーに4つ仕組まれたエリアセンサーの3種。リヤはバンパーコーナー左右裏に埋め込まれたレーダーがひとつずつと、エリアセンサーがリヤバンパー・・・ではなく、通常ならバンパーに位置するテールゲート下端部に4つ。

この価格の乗用車としてはごく一般的なセンサー構成です。

本来Honda SENSINGのすべてを試すべきところですが、例によってブレーキ関連は公道でとても試すわけにはいかないのと、なにぶんすべてをひとりで行っている都合上、1~3、7と11を除く項目をテストしました。ただしライト関連は次回以降に。

したがって、ここでは実践した次の機能について、数字を振り分けなおして解説していきます。

1.渋滞追従機能付アダプティブクルーズコントロール(ACC)
2.トラフィックジャムアシスト(渋滞運転支援機能)
3.車線維持支援システム(LKAS)
4.先行車発進お知らせ機能
5.標識認識機能
6.ブラインドスポットインフォメーション

●実践・ステップワゴンのHonda SENSING

1.渋滞追従機能付アダプティブクルーズコントロール(ACC)
2.トラフィックジャムアシスト

取扱説明書上、特に作動要件は記載されておらず、

・シフトレバー位置がD、Sのときに使用可能

とされているくらいです。

渋滞追従機能付アダプティブクルーズコントロール操作のためのステアリングスイッチ
渋滞追従機能付アダプティブクルーズコントロール操作のためのステアリングスイッチ

スイッチはハンドル右スポークに設置され、スポーク左上のメーンスイッチを押すとメーター内の同じマークが白色で点灯し、ACCシステム起動&待機状態を示します。

シーソー式の「RES/+」か「SET/-」をチョン押しすると、そのときの車速を上限に定速走行に移り、先行車がある場合は先行車との距離を勘案しながら走行します。メーター表示は、それまで白だったマーク表示が緑に変わるとともに、上限車速を白で表示。

車速はRES/+、SET/ーのチョン押しで1km/h刻みで上下、長押しで10km/h単位で上下。

車間距離設定は「ディスタンススイッチ」で行い、最長、長、中間、短いの4段階からセッティングできます。

先行車が発進するとステアリングスイッチ操作を促すメッセージが表示される。RES/+操作でなく、アクセルペダルチョイ踏みでも再発進する
先行車が発進するとステアリングスイッチ操作を促すメッセージが表示される。RES/+操作でなく、アクセルペダルチョイ踏みでも再発進する
ステップワゴンの場合は自動で停止した後もブレーキ保持してくれる
ステップワゴンの場合は自動で停止した後もブレーキ保持してくれる

渋滞追従機能付きでセットできる車速域は0km/hからでき、先行車が停止するとこちらも自動停止しますが、自動停止が数秒で解除してドライバーにブレーキ操作を促すこともなく、先行車が発進し、ドライバーがRES/+かSET/ーをチョン押しする、またはアクセルペダルをチョイ踏みすると自動発進します。

ACC走行時、先が渋滞の列を作っているとその後端に接近するにおよんで減速~停止。渋滞走行で面倒なのは、止まったとたんににじり出てまた停止、動き始めて流れが出るかと思えばまた停止・・・かなあと思ったらまた動き始めるというプロセスの繰り返しです。高速道路の渋滞時でよく出くわすシーンですが、いっそ止まるなら数分、数十分でも止まりっぱなしのほうがありがたいくらいで、同じ渋滞でもこのような断続渋滞とほんとうの渋滞とでは中身も気の使い方も疲労度もまるで違ってきますが、ステップワゴンのACCは、断続渋滞の流れにもよく追従してくれます。

と、ここまでがACCの渋滞追従機能で、他社の同類機能と何ら変わりはありません。

ここから先はトラフィックジャムアシストの出番。

「ジャム(jam)」とは別にパンに塗るやつではなく、同じ綴りの別の言葉で「交通などの渋滞」「機械などの停止」という意味があります。つまり言葉の根底にあるのは「滞る」の概念。

アメリカのドラマ「ナイトライダー」で、主人公のマイケル・ナイトが相棒のナイト2000に「マイクロジャム(MICRO JAM)を使うんだ!」と指示すると、「お安い御用で」と返答したナイト2000が追跡相手のクルマの動きを止めるというシーンがありました。「マイクロジャム」はなぜか相手のクルマのトランクや建物のドアのロックを施錠or解錠することもできましたが・・・。

それはともかく、Honda SENSINGの「トラフィックジャムアシスト」も同じで、別にステップワゴンがナイト2000のようにしゃべりはしませんが、名のとおり、交通の流れが「滞ったとき」の運転を支援するという意味で名づけられています。

こいつはACCと併せ、渋滞時に自車位置をレーン中央に維持させる機能で、下記条件のときに働きます。

1.LKAS(次項)がONのとき。
2.左右に白線(黄線)が引かれているレーンの中央を走行しているとき。
3.車速が約0~65km/hのとき。
4.直線またはゆるやかなカーブの道路を走行しているとき。
5.ハンドル操作をしているとき。
6.シフト位置がDまたはSのとき。

このようなゆるやかカーブの走行で有効だ
このようなゆるやかカーブの走行で有効だ

トヨタの渋滞時支援「Advanced Drive」は、減速~停止後に先行車が発進すると、自車も「再発進」を自動で行う機能も持っていましたが、トラフィックジャムアシストはそこまでは面倒を見てくれず、あくまでも渋滞時に自車をレーンセンターに収めるにとどまります。

3.車線維持支援システム(LKAS)

機能は次の2つを持ち合わせています。

1.車線維持支援機能
クルマが車線中央を走行するようにし、白線(黄線)に近づくと電動パワーステアリングの操舵力が強くなる。

2.車線逸脱警告機能
自車が白線(黄線)に近づくと車線逸脱の警報をハンドルの振動と音、メーター表示で行う。

LKASの作動条件は、

1.車速が約65~120km/hのとき。
2.左右に白線(黄線)が引かれている車線の中央付近を走っているとき。
3.直線またはゆるやかなカーブの道を走っているとき。
4.ターンシグナルを出していないとき。
5.ブレーキペダルを踏んでいないとき。

システム起動はACCスイッチ右下の、点線ハの字にハンドルが添えられたマークの「LKASスイッチ」で行い、押すと同じマークのLKAS表示灯が白く点灯、クルマがフロントカメラにて白線(黄線)を認識すればメーター内の自車マーク脇に白のラインが表示されます。

ここまでがスタンバイ状態。

クルマがレーンセンター付近を走行するとメーター内のLKASマークと自車脇ラインが緑に変わり、LKASが制御を開始したことを示します。

感心したのは、各社の各車とも、白線(黄線)を認識するまでの時間にまだいくぶんのバラつきが感じられる中、ステップワゴンのHonda SENSINGはライン把握もLKAS開始もがめっぽう早かったことで、システムがほんとうは寝たふりをしているだけで、スイッチを押す前から認識だけはしているのではないかと思うほどです。

意図的にラインに近づくことをしてみると作動はなかなか正確で、左右どちらかに寄ると即座に警報音を発するとともに、メーター内でも異常性を抱かせるカラーリングでわかりやすく表示。ドライバーに反省を促す緑とオレンジというカラーリングになっています。

よくわからないのは、前項トラフィックジャムアシストとこのLKASの差異です。

トラフィックジャムアシストの作動車速域が約0~65km/h であるのに対し、LKASは約65~120km/hであり、しかもトラフィックジャムアシストの作動条件の中には「LKASがON」ともきたもんだ・・・自車を車速センターに収束させるというメイン仕事は同じなのだから、だったらわざわざ名称を分けず、「全車速LKAS」ひとつにしたほうがいいんじゃないの? という思いが、乗っているときもこれを書いているいまも拭えない。資料でも取扱説明書でも違いがわかるような書き方をしていないのも理解を一層妨げています。

加速から定速走行への移行、ブレーキング・・・ACCにしてもLKASにしても、その働きに大きな特徴も感嘆する点もなし・・・良からぬ書き方に見えるでしょうがそうではなく、何というべきか、その所作たるや、自分が助手席に乗っていたら安心できる、ごく普通の、ごく常識的な運転をする、事故歴0のベテランドライバーのような感じでした。

車線や先行車のキャッチが早いのにも感心したというか人間的というか・・・このようなシステムは、存在感を誇示するのが目的ではないし、ハンドルを握る者に対してヘンに神経を逆撫でするような邪魔をしてもいけない。ごくごく「あたり前」の動作を舞台裏でドライバーアシストをする縁の下の力持ちであるべきで、だからこそHonda SENSINGのACC&LKASの作動の仕方は優れていると見るべきです。

4.先行車発進お知らせ機能

毎度いっていますが、筆者がいつもほしいと思っている機能で、先行車が発進してもこちらが停車を続けている場合・・・具体的には、停止状態での先行車との車間距離が約10m以内、かつ自車&先行車がしばらく停止を続けたときに作動し、先行車の発進をクルマが知らせてくれる機能です。

作動条件はシフト位置によってわずかに異なり、

【シフト位置がD、Sのとき】
ブレーキペダルを踏んでいる、または渋滞追従機能付ACCが作動中で停車している。

【シフト位置がNのとき】
ブレーキペダルを踏んでいる、パーキングブレーキが作動している、またはオートマチックブレーキホールドのブレーキ保持機能が作動している。

これらのときに働きます。

試してみたら、先行車が写真のような位置にまで離れたら音とメーター表示でドライバーに報知。

似たシチュエーションで、信号が青になっても気づかないことがありますが、次期ステップワゴンといわず、数年後のマイナーチェンジではぜひとも青信号&青矢印お知らせ機能も採り入れてほしく思います。トヨタやSUBARUなんてもう採り入れているョ。

5.標識認識機能

認識する標識はそれほど多くはなく、次の4つとなっています。

・最高速度
・はみ出し通行禁止
・一時停止
・車両進入禁止

本当は見落として違反をしでかしたらパトカーが張り切って近づいてくるような標識(上の4つもそうですが)もほしい。すなわち「Uターン禁止」「指定方向外進行禁止」。特に「Uターン禁止」は、ずっと前、見落としてえらい目に遭った筆者の希望です。

標識認識機能の作動条件は次のとおりで、標識によって異なります。

最高速度・はみ出し通行禁止:速度に関係なく作動。
一時停止・車両進入禁止:自車速度が約60km/h以下のとき。

試せば認識も早く、表示方法も全面液晶メーターであることを活かした造りになっています。

ACC未使用時は、デジタル速度表示下にキャッチした標識が表示される
ACC未使用時は、デジタル速度表示下にキャッチした標識が表示される
わかるかな? キャッチした制限車速に応じてプロット部に表示される赤いポチマークが(青〇内)
わかるかな? キャッチした制限車速に応じてプロット部に表示される赤いポチマークが(青〇内)

50km/h制限の道なら「50」、60km/h制限の場所なら「60」のメータープロット部に赤いポチマークが表示される。その表示が控えめなので、気づかないひともいるだろうし、気づいたところで何の意味なのかわからないひとも出てくるかもしれませんが、こういった表示は全面液晶メーターでなければできないことです。

道行くクルマ全体が標識速度以上で流れていればその流れに合わせざるを得ないわけですが、だからといって、やむなく(ということにしておこう)標識速度を超えてもそのとたんに小うるさく警告してくることもなく、あくまでも控えめなのがありがたいものでした。

速度計プロッティング部には、現在車速とACC設定車速の間を緑色のラインが表示される(青〇内)
速度計プロッティング部には、現在車速とACC設定車速の間を緑色のラインが表示される(青〇内)

ACCのところで書き忘れましたが、ACCで上限車速をセットすると、メータープロットの現在車速とセット車速の間に緑色のラインを重ねるのもおもしろい手法、メーターが全面液晶であればこその表示です。

6.ブラインドスポットインフォメーション

右斜め後方からの追従車両をキャッチすると、ドアミラー内にランプが点灯する(青〇内)
右斜め後方からの追従車両をキャッチすると、ドアミラー内にランプが点灯する(青〇内)

左右車線の自車後方からの接近車両の存在をドライバー報知するシステム。

作動条件は、自車が約20km/h以上で前進しているときで、リヤバンパー内側に埋め込まれたレーダーセンサーの範囲内に走行車両を検知します。

●学習して増えていくステップワゴンの後方検知範囲

工場出荷時のセンサーキャッチエリアはごく短いが、センサーが走っているうちに学習し、最終的には約25m後方からの車両をキャッチするようになる
工場出荷時のセンサーキャッチエリアはごく短いが、センサーが走っているうちに学習し、最終的には約25m後方からの車両をキャッチするようになる

取扱説明書表記を見てこのシステムがおもしろいと思ったのは、このシステムのリヤ検知範囲は2つに分かれており、「検知範囲1」は車両後端左右から約0.5~3m幅、距離は後端から約3mであり、「検知範囲2」は、幅はそのままに、距離は後方約3~25mなのですが、おもしろいのはここからで、「工場出荷直後の検知範囲は『検知範囲1』で、路側に設置物があり、交通量のある直線道路を一定時間走行することでシステムが調整を行い、検知範囲が広くなる」のだと。

要するにステップワゴンが出来立てホヤホヤのうちは近場しか検知しないが、走りこんでいるうちに学習し、ほどなく検知範囲1と2・・・すなわち最大25mあたりから認識するようになる道理。

目は開いていても視界はまだボケていてピントが合っておらず、日が進むにつれてくっきり見えるようになると同時に、いま見えているものを「もの」として認識するようになる、生まれたばかりの赤ちゃんの目と同じで、このあたりにもHonda SENSINGの人間くささが潜んでいるような気がします。

というわけで、今回はここまで。

次回は異色の「メーター編」です。なかなかおもしろい造りだったので、メーターの話に終始します。

(文:山口尚志(身長176cm) モデル:星沢しおり(身長170cm) 写真:山口尚志/本田技研工業)

【試乗車主要諸元】

■ホンダステップワゴン スパーダ〔5BA-RP6型・2022(令和4)年5月型・FF・CVT(自動無段変速機)・ミッドナイトブルービーム・メタリック〕

●全長×全幅×全高:4830×1750×1840mm ●ホイールベース:2890mm ●トレッド 前/後:1485/1500mm ●最低地上高:145mm ●車両重量:1740kg ●乗車定員:7名 ●最小回転半径:5.4m ●タイヤサイズ:205/60R16 ●エンジン:L15C型(水冷直列4気筒DOHC16バルブ直噴ターボ) ●総排気量:1496cc ●圧縮比:10.3 ●最高出力:150ps/5500rpm ●最大トルク:20.7kgm/1600~5000rpm ●燃料供給装置:電子制御燃料噴射(PGM-FI) ●燃料タンク容量:52L(無鉛レギュラー) ●モーター:- ●最高出力:- ●最大トルク:- ●動力用電池(個数/容量):- ●WLTC燃料消費率(総合/市街地モード/郊外モード/高速道路モード):13.7/10.4/14.3/15.3km/L ●JC08燃料消費率:15.4km/L ●サスペンション 前/後:マクファーソン式/車軸式 ●ブレーキ 前/後:ベンチレーテッドディスク/ディスク ●車両本体価格325万7100円(消費税込み・除くメーカーオプション)