■2027年から2028年にかけてBEVで実用化させ、その後の量産化を目指す
車の電動化、とくにバッテリーEV(BEV)化が進む中、駆動用バッテリーの確保とともにバッテリーそのものや材料の進化も不可欠になっています。現在、主流となっているリチウムイオン電池は、レアメタルを含まないリン酸鉄系がコスト面の優位性を含めて脚光を浴びています。
リチウムイオン電池の次として、将来的には全固体電池の時代がやってくると言われて久しい中、出光興産とトヨタ自動車が、量産化に向けて協業すると2023年10月12日に発表しました。
全固体電池は、中国や韓国、ドイツなども研究開発を進めていて、日本勢ではトヨタやパナソニック、出光興産などが多くの特許を取得しています。
両社は、バッテリーEV(BEV)用の有力な次世代電池である全固体電池の量産化に向けて、固体電解質の量産技術開発や生産性向上、サプライチェーン構築に両社で取り組むことを同日、意思決定し、合意したと明らかにしました。
全固体電池の材料開発などで世界をリードする(全固体電池、硫化物固体電解質に関する特許保有件数は、両社が世界でトップクラス)両社が連携することで、2027年~2028年の全固体電池実用化をより確実なものにし、その後の本格量産を目指す構えです。
BEVの進化、とくに航続距離や充電時間の短縮などに貢献する(課題はコストや充電の寿命など)次世代電池では、選択肢の1つである全固体電池の要素技術研究と開発に出光は2001年から、トヨタは2006年から取り組んでいます。
両社による協業は、BEV向けに高容量、高出力を発揮しやすいとされている硫化物系の固体電解質が対象。硫化物固体電解質は、柔らかく、ほかの材料と密着しやすいため、電池の量産がしやすいという利点があります。今回の協業は、主に下記の3つのフェーズに分かれています。
●第1フェーズ「硫化物固体電解質の開発と量産化に向けた量産実証(パイロット)装置の準備」
両社は、双方の技術領域へのフィードバックと開発支援を通じ、品質、コスト、納期の観点で、硫化物固体電解質を作り込み、出光の量産実証(パイロット)装置を用いた量産実証につなげる段階になります。
●第2フェーズ「量産実証装置を用いた量産化」
出光による量産実証(パイロット)装置の製作、着工、立ち上げを通じた硫化物固体電解質の製造と量産化を推進。硫化物固体電解質は、トヨタによる、当該硫化物固体電解質を使った全固体電池と、それが搭載された電動車の開発を推進する構えです。全固体電池搭載車の2027年〜2028年市場導入を、より確実なものにするとしています。
●第3フェーズ 「将来の本格量産の検討」
第2フェーズの実績をもとに、将来の本格量産と事業化に向けた検討が両社で実施されます。
出光はこれまで、石油精製の過程で得られる副産物を活用し、固体電解質の中間材料である硫化リチウムの製造技術を培ってきました。安定供給体制の構築を目指し、量産技術の開発を推進。
小型実証設備の能力増強や、量産実証(パイロット)装置の建設計画を着実に進め、2027年~2028年の全固体電池実用化に貢献していくと表明。両社の材料開発技術、出光の材料製造技術、トヨタが電動車開発で培った電池加工や組立技術を融合させることで、広く普及する固体電解質と全固体電池の量産実現を目指す構えです。
(塚田勝弘)