F1女子に聞いた。日本GP鈴鹿サーキットの「のぼり持ち去り問題」、日本だけ? 海外GPでは? 解決策は?

■F1日本GPで発生した「のぼり持ち去り問題」とは

レース終了後、ほとんどの「のぼり」が持ち去られる。(画像提供:F1小僧)
レース終了後、ほとんどの「のぼり」が持ち去られる。(画像提供:F1小僧)

2023年9月22日〜24日にかけて鈴鹿サーキットで行われたF1日本GPでは、3日間で22万2000人が来場するなど多くのファンで賑わいました。

これは2009年以来の水準であり、コロナ禍で控えていたモータースポーツ観戦も、やっと復活するとともに、その反動か人気の高まりを感じさせる結果となりました。

ただ、そんな今年のF1日本GPの最終日に、会場に設置されていたのぼりを無断で持ち去る人が続出するという、非常に残念な事件が起こってしまいました。

のぼりにはF1ドライバーの顔がプリントされており、会場となる鈴鹿サーキット全体に数百本設置されていました。そのほとんどすべてが、レース終了後には持ち去られてしまったといいます。

●備品盗難は海外のサーキットでも問題に

実は、ここ数年は多くのサーキットで問題になっていた。(画像提供:F1小僧)
実は、ここ数年は多くのサーキットで問題になっていた。(画像提供:F1小僧)

実は、こうした備品の盗難自体はF1日本GPに限った話ではなく、特にここ数年は多くのサーキットで問題になっていたといいます。

海外サーキットでの観戦経験も豊富なクリッカーライターでF1女子のyuriさんによると、今回の件について次のように話します。

「(備品の盗難は)ここ数年問題になっていましたが、今回のF1日本GPは特にひどかったように思います。

今年は海外からの来場者が増えたことで、『持って帰ってはダメ』という感覚のない一部の国の人々が、のぼりを堂々と持ち帰っていたようです。SNSでそうした投稿を見て、文化の違いを感じました。

ちなみに、海外のサーキットでは手の届くような場所にのぼりなどが設置されていることはあまりなく、そもそも持ち帰られないような対策がなされています」。

●海外からの来場者に向けてアナウンスが不足していた?

さらに、今回の件からF1日本GP自体の持つ課題について指摘しています。

「F1は国際戦ですが、正直なところ、日本GPに関しては日本のファン向けという印象が強いように感じます。

たとえば、案内板などの英語表記が海外のサーキットに比べて明らかに少ないことが挙げられます。(英語圏ではない)モナコやアブダビのサーキットでも、母国語よりも英語表記のほうが多く、そのおかげで私も安心して観戦することができました。

そういう意味では、のぼりなどが持ち帰り禁止であることを書いた英語の看板を設置するなどの工夫が必要と感じます。

のぼりがなくなってしまったことは残念ですが、これを機に、海外からの来場者向けのガイドラインを主催者には徹底してもらいたいと思います。日本だけではなく、世界から愛される日本GPになって欲しいですね」。

●鈴鹿サーキットは「容認しない」との声明

熱狂的なファンが多いのは喜ばしい一方…
熱狂的なファンが多いのは喜ばしい一方…

こののぼりが、2023年のF1日本GPだけの「限定品」であることを考えると、熱狂的なファンなら欲しくなる気持ちはわからなくもありません。

ただ、鈴鹿サーキットは2023年9月26日にX(旧Twitter)を更新し、「F1日本グランプリ会場内に設置したのぼりの持ち去りについて、鈴鹿サーキットとして容認しているものではなく、非常に残念に思っております」との声明を出しています。

鈴鹿サーキットがのぼりの持ち去りを容認していない以上、今後窃盗の疑いによる警察の捜査が開始される可能性もあります。

また、窃盗行為を「文化の違い」で済ませていけないことは言うまでもありません。

一方、様々な国から多くの人が訪れる大規模イベントでは、今後もこうした事例が発生することが予想されます。

今週末には、2輪レースの最高峰であるMotoGP 日本GPがモビリティリゾートもてぎで開催されますが、会場でどのような対策がとられるのかにも注目が集まっています。

(文:鈴木 僚太[ピーコックブルー]/画像:F1小僧)