■内燃機関仕様からの重量増を1人分に抑え、0-60mph(0-約96.6km/h)のタイムは約4.0秒
2023年5月24日、英国のケータハムは、バッテリーEV(BEV)の技術開発コンセプトである「EV セブン」を発表しました。
ライトウェイトスポーツであるケータハム・セブンも、電動化の流れには逆らえないようです。
同コンセプトは、軽量なBEVの実現可能性を検証するために開発され、ケータハムは、ガソリン車と同様にドライバーに焦点を当てたBEVを市場に投入することに一歩近づけるとしています。
「EV セブン」は、パワートレイン開発を手がけるスウィンドン・パワートレイン社と共同で開発。大型の「セブンシャシー」をベースに、スウィンドン・パワートレイン社による専用EAxleが搭載され、液浸冷却式バッテリーパックが組み合わされています。
バッテリー液浸冷却は、ケータハムの長年の技術パートナーであるMOTULが供給する誘電性流体を採用。バッテリーセルに直接接触させることで、最適な熱管理により充電速度の向上をはじめ、バッテリー寿命の延長を実現するとしています。
冷却システムはBEVへの応用でも最先端技術で、膨大な熱量を発生するスーパーコンピューターなどの冷却に使われることが一般的だそう。
ケータハムのボブ・レイシュリーCEOは、「将来生産するBEVは、ケータハムのDNAである軽量、ファン・トゥ・ドライブな走りに焦点を当てたものでなければなりません。このプロジェクトの主な目的は、従来のセブンに比べて1人分の重量差(70kg弱)しかない車両を開発することです。1tのセブンをリリースすることは決してありませんし、むしろやりたくありません」とコメントしています。
EV セブンは、公道でもサーキットでも使えることを目指し、20分間サーキットを走行し、15分間で十分なエネルギーを充電。さらに、20分間走行できる能力を目標としているそう。
セブンといえば、軽さこそ武器の典型例ですが、EV セブンは、ベースとなる市販車のセブン(Seven 485/480。欧州・日本市場のみで販売されている現行生産モデル)からわずか70kgの重量増(総重量700kg弱)となっています。
51kWhの液浸冷却式バッテリーは、エンジンルームとトランスミッショントンネルに収納され、最大152kWのDC急速充電に対応。約40kWhによりサーキットでの過酷な使用や急速充電にも劣化することなく、安全に使用することができるそう。
スウィンドン・パワートレイン社のE Axle専用バージョンは、240bhp/9000rpm、瞬間最大トルク250Nmを発揮。0-60mph(0-約96.6km/h)のタイムは、約4.0秒を目標としていて、内燃機関モデルと同様のドライバビリティを掲げています。
また、装備では、リミテッド・スリップ・デファレンシャル、「セブン 420 カップ」のビルシュタイン製アジャスタブルダンパー、回生ブレーキ、4ピストンブレーキキャリパーなどが用意されます。
気になるのは、いつ頃発売されるのかという点でしょう。ボブ・レイシュリーCEOは「現段階では、EVセブンをこのままの形で生産する計画はありません。このプロジェクトは、EVパワートレインが各ユーザーの使用に対してどの程度有効なのかを確認するためのテストベッド。軽量でシンプル、そしてファン・トゥ・ドライブという、セブンに必要なケータハム車特有の車両特性を実現する方法を学ぶために、このプロジェクトを進めています。私たちは、次世代バッテリー技術が可能になる将来の適切なタイミングで、BEVを市場に投入するつもりです」と説明しています。
E Axleなどのパートナーである、スウィンドン・パワートレイン社のマネージング・ディレクターであるラファエル・カイレは、「1990年代初期に JPE(ジョナサン・パーマー・エボリューション)エディションのセブンに搭載されたボクスホール製エンジンを開発して以来、ケータハムとのパートナーシップは30年以上続いています。
今回のエキサイティングなプロジェクトを通じて、これからもパートナーシップを継続できることにワクワクしています。車体の軽量化や充電速度の目標は、間違いなく野心的なものでした。しかし、最先端の液浸冷却式バッテリー技術と独自のパワートレイン部品を使用することで、独自のコアバリューを維持したBEVセブンを開発することができました」とコメントしています。
なお、「EV セブン コンセプト」は、2023年7月に英国で開催される予定の「グッドウッド・フェスティバル・オブ・スピード」で一般公開されます。
ケータハムは、EV セブンとは別にBEVのスポーツカー・コンセプトも開発していて、こちらは、今後数ヵ月内にさらなる詳細を公表する予定としています。
(塚田 勝弘)