トヨタ「アクアGRスポーツ」に試乗して時代は変わった!と実感。「名ばかりのGT」よ、さらば

■「こりゃGTです!」

トヨタ アクアGRスポーツ(写真右)、ヤリスクロスGRスポーツ(同左)を試乗した国沢光宏氏の評価は、果たして
トヨタ アクアGRスポーツ(写真右)、ヤリスクロスGRスポーツ(同左)を試乗した国沢光宏氏の評価は!?

ひと昔前まで、多くのトヨタ車に『GT』というグレードが設定されていた。いや、トヨタ車以外でも『RS』や『GTX』など、必ずスポーツグレードはありました。なのに今や絶滅危惧種。売れないから設定しないのか、設定しても売れないのか解らないけれど、クルマ好きとしちゃ寂しい限り。

そんな流れを変えようということなんだろう。トヨタが『GRスポーツ』というスポーツグレードを始めました。 素晴らしいことに上から下まで大幅車種に展開! ハイラックスにまでGRグレードをラインナップしているほど。

●「アクアGRスポーツ」、パワーユニットは標準のまま。だけど…

トヨタ アクア GRスポーツのフロントビュー
トヨタ アクア GRスポーツのフロントビュー

今回試乗したのは、新たに追加されたアクアと、昨2022年に出たヤリスクロスである。まずアクアから。

正式名称は「アクアGRスポーツ」という。内容といえば、GTの文法通りと言って良い。スポーティなフロントグリルや専用シートなどで雰囲気を仕立て、足回りを引き締めています。

トヨタ アクア GRスポーツのエンジンコンパートメント
トヨタ アクア GRスポーツのエンジンコンパートメント

ひと昔前のGTと違うのは、パワーユニットが標準のままだという点。このところ、厳しい燃費や排気ガス規制などあり、合法的なパワーアップは出来ない。電気自動車の世代になるまで、標準で我慢しなければならないと思う。

とはいえ後述の通り、アクアはスポーツモードを選ぶと標準グレードだと意味ないと思えるほど「ホントかね!」みたいなエンジンの使い方をしている。

ということで試乗だ。久しぶりにワインディングロードを良いペースで走ってみた。するとどうよ! こりゃGTです!

トヨタ アクア GRスポーツのホイール
トヨタ アクア GRスポーツのホイール

補強を入れたボディは、205/45R17サイズのBSポテンザRE050が発生するグリップに負けていない。サスペンションもダンパーやバネ、ブッシュを見直し、取り付け部分の剛性まで上げている。このあたりのノウハウは、ひと昔前のGTより奥行き深い。

トヨタ アクア GRスポーツのコクピット
トヨタ アクア GRスポーツのコクピット

そらそうだ。モリゾウさんが社長になって以後、トヨタは様々な技術を蓄積してきた。特にWRCに復帰して以降は、一段と「もっとよいクルマを作ろう」と努力してきた。以前のトヨタは「名ばかりのGT」だったけれど、アクアGRスポーツに乗って「時代は変わりましたね」。ライントレース性が良いため楽しく、ついついペースアップしてしまうほど。

トヨタ アクア GRスポーツの前席
トヨタ アクア GRスポーツの前席

パワーユニットだけれど、スポーツモードを選ぶとハイブリッドということもあり、エンジンの回転数を常に高めにキープしてくれる。ハイブリッドはエンジン回転上げると、発電量が多くなるしレスポンスだって向上します。下り坂ではエンジンブレーキまで機能するのだった。アップダウンの大きい試乗コースながら、存分に楽しめました。なんならリアスポイラーも欲しくなるほど。

●乗り心地の質感を改良出来れば100点!

トヨタ アクアGRスポーツのベースになっているのは、標準モデルの「Z」グレード
アクアGRスポーツのベースになっているのは、標準モデルの「Z」グレード(写真)

価格は『Z』グレードの19万5000円高。一昔前のGTだと考えれば「そんなものでしょう」。ただ、ヘッドライトがLEDじゃなくなったり、ディスプレイオーディオを7インチにダウンサイズしたりするなど、実質はもう少し高いのかもしれない。前向きに考えるとヘッドライトはLEDじゃなければ交換できるし、オーディオも高機能にしちゃう? このあたりはどうでもいいかもしれません(笑)。

当日はトヨタ ヤリスクロス GRスポーツのテスト車も用意されていた
当日はトヨタ ヤリスクロス GRスポーツのテスト車にも試乗できた

むしろ「もう少しですね~」なのが、乗り心地の質感。減衰力を上げているのに乗り心地は悪くなっていないなど頑張ったと思うけれど、良質のダンパー使えばもっと良いクルマになると考えます。日本製のダンパー、減衰力を上げていくと、必ず大きめのギャップや段差を通過すると「ドシン!」という大きめの衝撃が出てしまう。この点さえ改良出来たら100点です!

トヨタ ヤリスクロス GRスポーツのコクピット
トヨタ ヤリスクロス GRスポーツのコクピット

今回は、昨2022年に追加されたヤリスクロスGRスポーツの試乗車も用意されていた。内容はアクアGRスポーツと基本的に同じ。ボディ補強に10mmローダウンしたサスペンション、そして高性能タイヤをセットしている。乗るとイメージはアクアGRスポーツと同じ。走りが引き締まったものになり、標準車だとあまり使う機会の無いパワーユニットのスポーツモードが活きてくる。

今後、GRスポーツの試乗車もディーラーに並ぶようになってくるだろうから、ひと味違うクルマに乗りたいと思っている人はぜひ試すことをすすめておきます。

【スペック】
●トヨタ アクアGRスポーツ
全長×全幅×全高:4095×1695×1485mm
ホイールベース:2600mm
車両重量:1150kg(テスト車:1160kg)
駆動方式:FF
エンジン:直列3気筒+ハイブリッドシステム
総排気量:1490cc
最高出力:67kW(91ps)/5500rpm
最大トルク:120Nm/3800〜4800rpm
サスペンション:前マクファーソンストラット/後トーションビーム
タイヤ:前後205/45R17(ブリヂストン POTENZA RE050A)
車両価格:259万5000円

●トヨタ ヤリスクロスGRスポーツ(ハイブリッド)
全長×全幅×全高:4185×1765×1580mm
ホイールベース:2560mm
車両重量:1180kg(テスト車:1190kg)
駆動方式:FF
エンジン:直列3気筒+ハイブリッドシステム
総排気量:1490cc
最高出力:67kW(91ps)/5500rpm
最大トルク:120Nm/3800〜4800rpm
サスペンション:前マクファーソンストラット/後トーションビーム
タイヤ:前後215/50R18(FALKEN FK510 SUV)
車両価格:275万円

(文:国沢 光宏/写真:小林 和久)