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■車重の軽さが演出するダイレクトな挙動はスポーツそのもの
軽オープンカーのホンダS660が生産終了となり、軽自動車のスポーツモデルはダイハツ・コペンを残すのみとなりました。しかし、救世主として2021年9月にスズキ製の660ccターボエンジンを搭載したケータハムSEVEN170Sが、海を渡って日本市場に導入されました。
日本市場導入から1年が経過して、待望のケータハムSEVEN170Sに試乗することができましたので、インプレッションを紹介します。
●SとR、2モデルを用意
2021年9月に導入されたケータハムSEVN170は、車両重量440kgというケータハム史上最軽量の量産車です。
SEVEN170はケータハムモデルレンジのエントリーモデルとなり、車両本体価格577万5000円のロード志向のS、車両本体価格599万5000円のサーキット志向のRと、2種類を用意しています。今回試乗したのはロード志向のSです。
SEVEN170は2014年12月に発売され、大成功したSEVEN160の後継モデルにあたり、日本の軽自動車企画に準拠しているのが特徴です。
ボディサイズは、全長3,100mm×全幅1,470mm×全高1,090mm。車両重量は440kg。最低地上高は100mmと、乗り込むとまさに地を這うような低さです。
試乗したSEVEN170Sに搭載されているエンジンは、スズキ製の660cc直列3気筒ターボエンジン。使用燃料はハイオクガソリンとなっており、最高出力85ps・最大トルク116Nmまで高められています。
出力向上したターボエンジンに組み合わされるトランスミッションは5速MTのみ。440kgという車両重量の効果で、最高速度は168km/h、0-100km/h加速は6.9秒というパフォーマンスを発揮。さらに、パワーウェイトレシオは193ps/t(トン)となっています。
SEVEN170Sに搭載している装備は、ロードサスペンションパックをはじめ、15インチJunoシルバーアロイ&ポリッシュドリップ+Avon ZTタイヤ、フルウインドスクリーン・ソフトトップ&ドア、ブラックレザーシート、Momoステアリングホイールが標準装備となります。
また、SEVEN170Rに標準装備されるLSDやスポーツサスペンションパックは170Sにもオプションで設定されており、よりハードな仕様にすることも可能です。
●幅がスリムな靴か、靴を脱がないと運転できない?
早速SEVEN170Sに乗り込みますが、その前にまずルーティーンを行う必要があります。幅の狭いレーシングシューズを履いていれば必要のない行為ですが、スニーカーを履いている場合は、乗り込む前に靴を脱いで助手席の床に置きます。
なぜ靴を脱ぐのかというと、ブレーキとクラッチペダルのレイアウトが近いため、両方を踏んでしまう恐れがあるのです。以前乗ったバーキンSEVENに比べるとペダル間の距離が若干広くなっていましたが、やはり靴下で操作した方がミスはありません。
ピュアスポーツカーは、運転するドライバーにハードワークを求めてきます。アスリートのような研ぎ澄まされたSEVEN170Sは、運転しているだけで腹筋が振動して体幹が鍛えられるような感覚です。
ステアリングをしっかりと握り、シートバックに体を預けていないせいか、クルマを降りた後、腹筋に痛みがあり、緩んだ体には良い刺激になりました。
大型のトラックなどと一緒に一般道を並走すると、すぐ横にタイヤがまわっていて、SEVEN170Sの車高の低さがよくわかります。こんな感覚は他のクルマでは滅多に味わえないので新鮮です。
最高出力85psまで高められたスズキ製の660ccターボエンジンは、最初にクラッチのミートポイントを掴んでしまえば、それほどクセはありません。
それ以上に、ターボエンジンを搭載した軽自動車では味わえないような鋭い加速性能は圧巻です。クラッチをミートして、アクセルペダルを踏むと、まさに矢のように加速していきます。車両重量+ドライバーの体重で約500kg超ですが、この時は軽さは武器なのだと実感しました。
ロードサスペンションと言っても、路面からの衝撃はダイレクトにドライバーに伝わるため、かなりのスパルタンです。しかし、このスパルタンの刺激がどんどんとクセになり、楽しくなります。まさにこの楽しさは唯一無二と言えるでしょう。
絶版車となった軽オープンカー、ホンダS660やマツダロードスターで刺激を感じなくなった人に、ケータハムSEVEN170Sはオススメです。
SEVEN170Sの無駄なものを一切排除したストイックさに、ドライバーも惹かれて身体を鍛えたくなる。そんな魅力がSEVEN170Sには詰まっています。
(文・写真:萩原 文博)